業界再編

百貨店業界再編M&Aの歴史

百貨店業界について

縮小していく市場規模

日本で最も古い総合小売業とも呼ばれている百貨店ですが、市場規模はここ数年長期的に縮小傾向となっています。1990年代初頭には10兆円に迫る勢いでしたが、2018年には6兆円を割り込んでいます。

 

主な原因はEC事業の台頭や消費者ニーズの分散といったものが考えられます。

 

バブル崩壊以降の日本経済の落ち込みの影響を受け、それ以降販売額の減少については歯止めがかかっていないのが現状です。

地域ごとに見ると、人口減少が著しい地方の郊外型百貨店は閉鎖や縮小を迫られています。地方の中堅百貨店等は生き残りをかけ、大手企業グループの傘下に入るなどM&Aを活用しています。

 

その結果、市場規模が減少している一方で、大手企業のシェアは拡大傾向にあり業界は成熟期を迎えています。

 

 

ECや小売総合グループなどの台頭

百貨店業界の売上が減少していく要因の一つに、上記でも上げましたがEC市場の拡大やコンビニや量販店等のその他の小売業者の台頭があげられます。

特にインターネットやスマートフォンの普及に伴い、Amazonや楽天といったEC市場の拡大は百貨店業界にとって大きな脅威となっています。

 

また、現在小売業界ではセブンアンドアイHDやイオングループのように、店舗形態を多角化して顧客との接点を多く持つ企業が成功しています。

その成功の理由には、顧客の要望にすぐに応じる機動性や、地域密着を日本全国で展開できるほどの豊富な資金力・人材があげられます。

 

このような環境下において、百貨店は小売業界の中で苦戦を強いられているのです。

 

増加していく訪日観光客

厳しい環境の百貨店業界ですが、近年急速に増加している訪日外国人業界の増加は百貨店にとって追い風となっています。

 

免税品の売上が1割を占める店舗が出てくるなど、大きな影響が出始めています。

中国人の爆買いなどで有名な銀座などでは、多くの観光客が有名ブランドの紙袋をたくさん抱えている映像がメディアでもよく取り上げられています。

 

しかし、このインバウンド需要については、一過性のものと考えている経営者が多いのが現状です。

 

百貨店事業についてはビジネスモデルを革新していかなくてはと考えており、上場各社のIR資料の成長戦略についてはビジネスモデルの革新について書かれている企業がほとんどです。

 

百貨店業界の統合の歴史

強い影響力を持っていた老舗企業

国内初の百貨店として1904年に三越呉服店が「デパートメントストア宣言」を行い、その後老舗の呉服系百貨店が相次いでオープンしました。

その後は、鉄道会社各社による百貨店出店が相次ぎ、百貨店業界は流行の発信地として小売業界を席捲しました。

 

小売業界でも圧倒的な地位を築いていた百貨店は、メーカー各社から消化仕入という独特の仕入形態をとっています。

この仕入形態により在庫リスクを百貨店側ではなく、メーカー側が負担するという構造になっており小売・流通業界では強い立場を築いていました。

 

明確化していくブランド間格差

当時地方にも百貨店は存在し、圧倒的な知名度を武器に地方経済に君臨していました。

しかし、バブル経済の崩壊や人口減少といった外部環境の変化により、次第に百貨店経営は厳しくなっていきました。特に地方独自に展開していた中堅百貨店は時代の波に逆らえず、縮小・閉鎖の連鎖が起きました。

 

そのような流れの中、強いブランド力を持つ企業同士が手を組み、業界内では激しいブランド間格差が生まれてきました。特に2007年の鉄道系の阪神と阪急の統合や、2008年の呉服系百貨店である三越と伊勢丹の統合など世間を驚かせるようなM&Aも飛び出しました。

 

4大グループへの再編

ブランド力の向上や企業規模の拡大を目的とした統合は、先述した大規模な統合を皮切りに日本全国で多発していくこととなりました。仕入のスケールメリットやエリア戦略の相性などにより百貨店業界の再編は加速していきます。

 

そして、最終的には老舗の呉服系同士や電鉄系同士で統合を繰り返し、百貨店業界は大きく4つのグループへと再編されてきました。

呉服系では三越伊勢丹HD、Jフロントリテイリング、電鉄系では阪神・阪急系のH2Oリテイリングが台頭し、一時は高島屋と資本提携する予定もありました。(2008年に資本業務提携の検討が開始されたが、2010年に業務提携にとどまることを発表)

 

上記の4グループで市場全体の約60%を占めており、今後もそのトレンドは継続していくものと考えられています。また独立路線をとっている中堅企業がどこのグループと手を組むかが今後のこの業界のキーポイントとなります。

 

新たなビジネスモデルへ向けて

成熟期の百貨店

人口減少と一極集中により国内市場は一段と厳しくなっていく一方で、業界プレーヤーは集約化されてきています。業界として成熟期を迎えている百貨店業界ですが、今後は生き残りをかけて各社がどのような戦略を打ち出していくかが注目されています。

 

日本の百貨店を海外に

業界再編のピークを過ぎ成熟期を迎えた業界では、各社が手を組み新たな戦略を取っていくことは珍しくありません。特に百貨店業界では国内の市場だけでは厳しいため、国外に日本の百貨店を出店し海外展開していくケースが最近になって増えています。

 

三越伊勢丹ホールディングスでは三越と伊勢丹のそれぞれが持つブランドとノウハウを巧みに利用し中国や台湾、東南アジアといった新興国エリアに出店を加速しています。現在売上そのものの自体は大きくはないため、現地の小売業を買収するなど、国外の企業とのM&Aも戦略の一つとして考えられます。

 

プラットフォーマーとしての百貨店

海外戦略と共に大きな成長戦略の柱として期待されているのがICTの活用です。

スマートフォンなどのアプリの活用やデジタルマーケティングの活用によって新しい顧客戦略を打ち出しています。

 

また、若者世代のコト消費に対応するべく、SNSとの連動なども積極的に行っており、今後消費を行う場所の提供だけでなく、小売業のプラットフォーマーとしての飛躍を目指しています。

 

今後は百貨店同士の本業の企業提携だけでなく、ICTを活用するためにIT企業やベンチャー企業と手を組んで行くことなども考えらえます。

 

Jフロントリテイリングの銀座SIXで使用されているアプリケーション(同社HPより)

 

業界再編部 調剤薬局業界支援室/物流業界支援室

河田 航佑

埼玉県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本M&Aセンターに入社。調剤薬局業界と物流業界専門チームにて業界の再編に取り組む。外資系企業とのクロスボーダー案件や東北地方地域No1企業の成約実績がある。2019年度新人賞を受賞。主に東日本の企業を担当している。

埼玉県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本M&Aセンターに入社。調剤薬局業界と物流業界専門チームにて業界の再編に取り組む。外資系企業とのクロスボーダー案件や東北地方地域No1企業の成約実績がある。2019年度新人賞を受賞。主に東日本の企業を担当している。