調剤薬局

【調剤薬局業界M&A事例】1店舗、37歳のオーナー社長、なぜM&Aという選択をしたのか?

 

37歳のオーナー社長はなぜM&Aという選択をしたのか?

夫婦二人三脚で大分県に出店

今回ご紹介するのは、2018年11月に37歳の若さで大手調剤薬局企業と手を組むことを決断した中嶋ファーマシーの成功事例です。

中嶋ファーマシーは大分県の調剤薬局(1店舗、売上約1億)であり、オーナーの中嶋一雄氏が31歳の時に知人の紹介を機に開局した薬局でした。中嶋一雄氏は熊本県の薬剤師一家の長男として生まれました。ご家族の影響もあり、薬剤師の道に進むことをかねてから決めており、2004年に国家資格取得し病院薬剤師を経験し、調剤薬局で薬剤師としても勤務をしていました。

勤務をしているうちに、「自分の思う薬局を自分の力で作り上げてみたい」という気持ちが芽生えており、知人からの紹介を一世一代のチャンスと考え、土地勘もない大分県で薬剤師である奥様と二人で地域に根差す薬局を開局しました。

 

家族との時間

開局以降薬局は順調に処方箋枚数が伸びており、経営も順調でした。処方元も非常に地域のために尽くす病院であったため、積極的に患者を受け入れていました。その後数年たっても両社は順調で患者も増え、中嶋社長夫妻も日に日に多くなる患者様への対応に忙殺される日々が続きました。

大分県は薬剤師が少なく、簡単に採用ができる地域ではありません。そのため、患者様の増加はすべて中嶋社長夫婦への負担となり、さらに追い打ちをかけるように、病院から規模を拡大したい旨の申し出があり、二人は限界を感じ始めました。

何かを変えなければならない。自分の思い描いた理想の薬局を完成させるためには、このままではいけない。そんな風に頭では悩んではいるものの、日々の業務に忙殺され、気が付けば月日がたっているという状況が続きました。

当時はお子様も生まれたばかりで、家族思いな中嶋社長は地域に貢献したいという“経営者としての自分”とご家族を大切にしたい“一家の大黒柱としての自分”の葛藤が生まれていきました。

決断の時

2018年の年明けにたまたま機会があって占いをした中嶋社長でしたが、その結果が“今年は大きな決断をすべき年”だったそうです。それまで占いなどはあまり信じない性格の中嶋社長が、漠然と今年は何かの節目になる年ではないか、と意識された瞬間でした。

そんな折に日本M&Aセンターのコンサルタントからの連絡があり、何かの縁だと思い話を聞いてみたのが始まりです。コンサルタントは熱心に中嶋社長の話を聞き、社長にとって、従業員にとって、患者様にとって、処方元にとって、なによりご家族のために、大手と組んで経営をしていく選択肢を提案しました。

社長自身は納得感のあるストーリーでしたが、一緒に連れ添ってきた奥様がどのように考えるのか、それだけが気がかりでした。

意を決して奥様に相談すると、奥様から「何を悩んでいるの?今年は一大決心すべき年なんでしょ?それがこの決断に間違いないわ」とおっしゃったそうです。いよいよ、中嶋社長夫妻のM&Aによる事業承継の検討がスタートしたのです。

中嶋社長が今回の件で重要視したのは2つです。

 

・ご家族との時間を作ること

・薬局経営を続けること

 

中嶋社長自身、非常に都合のよい要望をだしていることは理解しているものの、やはり経営者としての自分と、家族を大切にしたい自分を両方大切にしたい、この気持ちは変えることができなかったそうです。

進めるうちに、はじめは数十社あった候補先が、一つ、また一つと希望に沿える企業は減っていき、正直諦めかけた時期もあったそうです。しかし、あきらめず候補先を模索した結果、全国でグループ全体で約300店舗を展開するE-BONDホールディングスが名乗りをあげました。

中嶋ファーマシーという法人は残したまま、社長を継続しても問題なし、さらには人員をすぐに補充するので時間的な余裕もできる、まさに理想としていた働き方ができる相手でした。社長の希望をすべて満たせる企業がついに出てきたのです。

中嶋社長夫妻は、E-BONDホールディングスとともに歩む決断をしました。緊張するトップ面談、細かい質問が飛び交う買収監査、と続きましたが、非常にクリーンな経営をされてこられた中嶋ファーマシーはこれらのステップを特段の問題もなくクリア。スムーズに最終契約にいたりました。

 

本件M&Aで重要となったポイント

買い手からみたメリット

全国規模の企業でしたが、大分県では店舗を持っていませんでした。いつかは大分県にも店舗を構えたいと思っていた時に、南天堂薬局と出会うことができました。さらに地の利もない地域のため、中嶋社長が引き続き社長として継続してくださることは買い手にとっても非常にメリットがあり、ゆくゆくは九州北部のエリアをまとめて経営してほしいという期待を中嶋社長にかけています。

中嶋社長の若い力で今後積極的に在宅やさらなる地域貢献のアイデアを出してもらい、自身は黒子に徹することで拡大をバックアップしたい。それが今回の譲り受けを決断したE-BONDホールディングスの想いです。

 

守るべきものをすべて守れる

中嶋氏はまだ37歳という若さであり、いろいろとやりたいことがたくさんある方です。ワークライフバランスをとることができる相手であり、薬局にかかわるすべての人がハッピーになれる選択肢であったと感じました。

 

最後に

中嶋社長は譲渡後1年たった今も、社長として経営を続けております。譲渡前にあった精神的な負担からは解放され、今では積極的に地域に根差した薬局を作り上げるために時間を費やせているそうです。またご家族との時間もしっかり作ることができており、まさに1年前に理想と考えていた生活を送っています。

“M&A”と聞くと 身売りや乗っ取り、という印象が浮かぶ方も多いと思います。自身が築き上げてきたものが無くなってしまうと感じる方もいるかもしれません。しかし、今回の中嶋社長の事例を振り返ると、今後の調剤薬局業界のM&Aの在り方を示しているのではないかと感じます。

自分一人の力ではかなえられないことを、他社と手を組んで、集まることでそれをかなえていく、これがM&Aです。誰しも自身の理想とする会社像、人生像があります。その理想に早く近づけるには一体どの方法が得策なのかを考えなければなりません。自助努力での成長、M&Aを利用しての成長、どちらが正解かはもちろんわかりませんが、大切なことは“すべての選択肢を洗い出す”ことです。すべての選択肢を検討せずして自助努力をすることを否定してもいけませんし、M&Aを否定してもいけません。しっかりと情報を集めたうえで比較検討することが大切です。

そのような判断基準となる情報をお届けできるよう、調剤薬局業界の発展に寄与できるよう、今後も尽力していきたいと思います。

業界再編部 調剤薬局業界支援室

横倉 有紀

1993年生まれ、東京都出身。大学卒業後証券会社にて営業職に従事。名古屋、東京での営業活動を経て、日本M&Aセンターに入社。業界再編部初の女性営業職として現在は全国の調剤薬局のM&Aを担当している。

1993年生まれ、東京都出身。大学卒業後証券会社にて営業職に従事。名古屋、東京での営業活動を経て、日本M&Aセンターに入社。業界再編部初の女性営業職として現在は全国の調剤薬局のM&Aを担当している。