調剤薬局

【調剤薬局業界M&A事例】経営状況が良いタイミングだったからこそ実現したM&A

【譲渡企業様】

企業名

A社

業種

調剤薬局

売上(M&A当時)

2億円

オーナー様のご年齢

40代

 

【譲受企業様】

企業名

Z社

業種

調剤薬局

売上(M&A当時)

非公開

オーナー様のご年齢

 

 

譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由

クリニック門前型の薬局1店舗を運営

40代H社長は、九州出身で大学を卒業後、地元のチェーン薬局にて薬剤師として勤務した後、フランチャイズ契約での薬局運営を経て、3年前にその薬局の営業権を買い取る形で独立。フランチャイズ時代から含めると10年以上に渡り、夫婦二人三脚で薬局経営を行ってきました。

 

自分自身が従業員として働きたいと思える薬局を目指したという薬局は、従業員同士の仲が良くお互いが助け合あう精神で、長く働きやすい環境が整っていました。

 

決して大きな店舗ではありませんでしたが、処方箋は1日あたり80枚程度、年間売上は2億円という優良薬局で、地元患者さまからも親しまれています。

採用難や将来への不安

 

会社には、金融機関からの借入もなく、毎期利益をしっかり出ており、キャッシュも潤沢、財務面では全く不安がないという状況でした。

 

しかしながら、ご夫婦には2つの悩みがありました。

 

1つは採用に対する不安です。実は医療事務職の採用に困っていました。

 

常勤で働ける方を長年募集していましたが、希望条件に適合する方は1人も出てきていませんでした。時短勤務の方などでなんとか繋いできましたが、このまま続けていけるのかという不安を抱えられていました。

 

そして、もう1つは今後の業界の未来に対する不安です。

 

2年に1回の報酬改定に加えて、2019年には消費増税や薬価改定など、薬局経営に大きく影響を及ぼすイベントが控えている将来に対して、漠然とした不安を抱かれていました。

 

そのような中、当社のセミナーに参加。実際に譲渡されたオーナーの体験談を聞き、M&Aによって課題解決するということを意識されるようになりました。

10年先を見据えた経営判断

 

H社長はまだ40代で、これから先も長く働ける年齢であり、経営者としては比較的まだ若い方です。

 

しかしH社長は、自分の年齢を基準に考えるのではなく、薬局の現状と将来を冷静に見つめ直した結果、10年先も存続し患者さまから選ばれ続けていく薬局になるために、M&Aによって大きなグループの仲間入りを目指すという経営戦略を決断されました。

 

H社長がM&Aで求めた条件は、

① 従業員の雇用を維持すること
② 他店舗との連携が取れるようになること
③ 引継ぎ後は、(余計な口出しをしないように)自分と奥様は退任すること

この3点でした。

 

譲受企業様の概要とM&Aの検討理由

西日本で多店舗展開、県内にも複数店舗を出店

 

Z社は、西日本で多店舗展開している中堅薬局です。創業以来、全て新規出店によって、規模を拡大。薬剤師からの評判も高く、口コミなどによる入社希望者も多い優良企業として地元では有名な薬局チェーンです。

 

創業者であるG社長の、「地元にもっと貢献していきたい」という強い想いから、特定のエリアに特化したドミナント展開によりこれまで順調に拡大路線を進んできました。

この薬局をエリアの新たな拠点に

 

今後の新規出店計画も複数進んでおり、計画はすべて順調でしたが、新規出店だけに偏る拡大戦略に対するリスクも感じていました。

 

また、Z社には、本案件のエリアを今後攻めていきたいという計画があり、それにあたって基盤となる拠点が欲しいと考えていました。子会社を創り、そこに役員を置き、意思決定の権限移譲をさせることで、よりスピード感を持って拡大していく構想を描かれていたのです。

 

このようなタイミングで、本案件の話が入り、株式譲渡によりこの会社を譲り受けることによって、A社を基盤にしていく成長戦略が一気に具体化することになりました。

本件M&Aで重要となったポイント

ドクターの反対

 

実は本件、Z社の前に、他の大手薬局チェーンとも交渉をしていました。

 

しかし、門前のドクターに説明に行ったところ、M&Aを実行することに対して、どうにもご理解いただけませんでした。結果として、最終契約直前にM&Aのお話は破談となってしまったのです。

 

クリニック門前型の薬局の場合、基本的には門前ドクターの同意がクロージング条件となり、この同意が得られない状態ではM&Aが不成立となってしまいます。

経営状況が良いタイミングだったからこそ実現したM&A

 

H社長の想いとしては、薬局と従業員を守るためにはM&Aしかないという考えであり、一度ドクターに断られている手前、「ドクターからの同意を得ることは難しい」という前提付きで、再度マッチングを行うことになりました。

 

そして、今回のお相手となったZ社が手を挙げ、無事に成約に至りました。

 

では、なぜZ社はドクターの同意が得られない状態にも関わらず、手を挙げられたのでしょうか。院内処方化や他薬局誘致などの実現性が低かったというポイントもありましたが、それ以上に大きなポイントとして、A社の状態が良好だったことです。

 

A社は、冒頭でも先述した通り、財務内容としては全く問題がなく、収益も伸びている非常に良い状態でした。
一番大きなポイントだったと考えられます。

譲渡オーナー譲受オーナー双方が歩み寄る姿勢

 

トップ面談の際に、売主側の緊張を解すように買主側が配慮したり、買収監査の際に、買主側の確認事項に対し売主側ができる限り細かく情報提供したりと、双方の誠意ある行動や言動が、本件成約に繋がったと言えます。

 

また、成約後には様々な引継ぎが発生しますが、成約後すぐにZ社から管理薬剤師や事務長を送り込み、現場レベルの細かい引継ぎをH社長や従業員から受けられました。スムーズな引継ぎによって従業員や取引先の混乱軽減にも繋がります。

 

まさにこれぞ友好的M&Aと言えるのではないでしょうか。

 

M&Aと聞くと、どうしても身構えて“交渉”と思われてしまう方も多いです。

 

しかし、薬局の存続のため、そして地域医療への更なる貢献のためにも、売主と買主が協力し合い、同じ志に向けてお互いに歩み寄っていく姿勢が、M&Aを成功に導く一番の近道と言えるでしょう。

業界再編部 調剤薬局業界支援室

田島 聡士

明治大学理工学部卒業後、広告会社にて展示会の企画・立案を経て、日本M&Aセンターに入社。調剤薬局業界の再編にかかるM&Aを専門とし、東海地方および近畿地方の調剤薬局を担当している。

明治大学理工学部卒業後、広告会社にて展示会の企画・立案を経て、日本M&Aセンターに入社。調剤薬局業界の再編にかかるM&Aを専門とし、東海地方および近畿地方の調剤薬局を担当している。