建設・住宅不動産・設備工事業界

【不動産業界向け】コロナを乗り切るために不動産業界が取るべきM&A戦略とは? 

コロナによる不動産価格の下落

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、不動産業界も先行きを見通しづらい状況にあります。 

 

2020年4月末現在、不動産価格にまだ大きく下がっていないものの、2-3か月後に都内の不動産価格は平均で2-3割落ちるのではないかと言われています。コロナショック前の2月頭から現在4月末にかけて、上場企業の平均株価が約20%下がっていることを考えると、不動産価格も同程度落ちてもおかしくはないでしょう。東証REIT指数は日経平均よりも大きく下落しており、不動産価格の急落が起きるのも時間の問題というのが大方の予想かと思います。 

 

ただでさえ、国内人口減少の中で、マーケットとして縮小傾向にあった不動産業界ですが、コロナの影響により、リーマンショック並みに冷え込むのではないかと考えられます。 

 

不動産業界の現在の動き

このように他業界同様にコロナショックの影響を受けるであろう、不動産業界ですが、中でも、デベロッパーや売買・仲介などのフロービジネスは、不況だと顕著に売上が落ちます。 

 

三井不動産は5月12日に予定していた東京・大手町の大規模複合ビル「Otemachi One」の開業を延期しました。三菱地所は「丸ビル」や「新丸ビル」内の店舗に対して、森ビルは「六本木ヒルズ」内の店舗への賃料減免などの措置について個別に協議すると発表しています。 (日本経済新聞2020年4月15日) 

 

不動産売買の分野において、中古買取再販業の大手の中には、今年の3~4月にかけての物件の仕入れを完全にストップしている企業もあります。これは、物件の回転期間を考えると、今から6か月先の売上が立たないことを意味し、ダイレクトに打撃を受けていると言えるでしょう。 

 

一方、不動産管理会社は、コロナの状況下でも、入居者・テナントからの家賃交渉などはあるとはいえ、まとまった管理物件からのストック収入があります。先行きが分からない状況の中で、安定した収益を確保している点においては、デベロッパーや売買・仲介業に比べると、業態としては強いと言えるでしょう。 

 

不動産会社は各業態でコロナを生き延びるための戦略を模索する中、改めて注目されているのが経営戦略としてのM&Aです。 

 

そこで今回は、今年4月に、それぞれ戦略の異なるM&Aを行った大手の2社をご紹介します。 

 

売買仲介業をグループ化するケイアイスターは、仕入れ・販売力を強化

関東を中心に不動産販売を行うケイアイスター不動産は、販売力・営業力強化を目的として、全国エリアで、売買・仲介業の会社を積極的にM&Aをすることで、グループの拡大に努めています。 

 

2020年4月1日にケイアイスター不動産は、東京ビッグハウス(東京都新宿区)の株式を50%取得し、連結子会社化しました。東京ビッグハウスは、戸建住宅の分譲およびリノベーションマンション販売事業を中心に事業展開しており、両社のシナジーとして、戸建分譲事業の拡充・コストダウンが見込まれます。 

 

昨年2019年8月には、不動産の売買・仲介、リフォーム事業などを手がけるハウスライン(埼玉県朝霞市)の株式80%を取得し子会社化しました。埼玉朝霞市エリアでの仕入力・販売力を強化し、リフォーム事業の拡充と、グループ全体の更なる事業拡大を企図しています。 

 

ケイアイスター不動産は、過去、資本参加を含めると公表されているだけでも10件以上も資本提携を行っており、不動産業界の中でも、近年最も多くのM&Aを行っている会社です。 

 

人口・世帯減少の時代に突入し、大きく影響を受ける分野において、自助努力だけではなく、M&Aを活用して毎期増収増益を実現しています。ケイアイスターはM&Aだけでなく、同時に既存ビジネスにIT技術活用による生産性の向上も経営方針として打ち出しており、IoT住宅や自動追客システムの開発といった切り口で、ITへの投資も進んでいくかもしれません 

 

”管理戸数拡大型M&A”を活用するAPAMANは全国でシェアを拡大

安定したストック収入を誇る賃貸管理会社はより一層のシェアの拡大のために、M&Aを積極的に活用しています。いわゆる「管理戸数拡大型M&A」です。賃貸管理会社で積極的なM&A戦略を取っている代表格が賃貸管理大手のAPAMANです。 

 

APAMANは2020年4月24日に不動産仲介・賃貸管理のマイハウス(茨城県)を子会社化しました。マイハウスは1993年設立で、2013年に賃貸情報物件「アパマンショップ」にFC(フランチャイズ)加盟しており、賃貸仲介店舗を3店舗、約2600戸の賃貸管理を手がけています。 

 

昨年2019年9月には、APAMANは賃貸管理・サブリースのレンタルハウス(和歌山市、売上高約6.7億円)の全株式を取得しました。レンタルハウスは和歌山県を地盤とし、管理戸数4143戸、駐車場台数 1252台を管理していました(2019年8月末当時)。APAMANは約103万戸の管理戸数の更なる増加と、全国エリアでのシェアの拡大のため、M&Aを積極的に活用しており、今後も引き続きM&Aを進めていくことが予想されます。 

 

賃貸管理業界の市場規模に関して、日本全体の管理戸数に目を向けると、1996年度に約1,770万戸から2018年の約1,850万戸と、20年間であまり変化していない一方で、賃貸管理戸数ランキング上位10社のシェアは、2%から22%と約20%の伸びを見せています。 

 

自社のみでの管理戸数の拡大が難しい近年においては、既存の管理物件を他社からM&Aで獲得することで、シェアを高めていくことは近年においては、合理的な戦略と言えるでしょう。  

 

(参照:賃貸管理新聞を参考に日本M&Aセンター作成)  

 

コロナ危機下では、M&Aが有効な選択肢の一つ

新型コロナによって、厳しい状況に直面する不動産会社も多いかと思います。その上で、経営基盤の強化のために、ケイアイスター不動産やAPAMANのようにM&Aを活用するのも、一つの選択肢として考えられるのではないでしょうか。 

 

業界再編部 住宅・不動産業界支援室

石本 翔

東京大学教育学部卒業。大学時代は体育会アメリカンフットボール部に所属し、新卒で日本M&Aセンターに入社。現在は、住宅・不動産業界チームに所属し、同業界に係る数多くのM&Aに取り組む。

東京大学教育学部卒業。大学時代は体育会アメリカンフットボール部に所属し、新卒で日本M&Aセンターに入社。現在は、住宅・不動産業界チームに所属し、同業界に係る数多くのM&Aに取り組む。