建設・住宅不動産・設備工事業界

【不動産業界向け】不動産業界におけるIT化とは?

日本の不動産のIT化は遅れている

日本の不動産業界のIT化は他の業界に比べて、非常に遅れています。

 

厚労省が「平成27年版 労働経済の分析」で発表しているように、日本の不動産業界のIT資本投下はアメリカの約1割、労働生産性も約4割となっており、不動産テック先進国アメリカに大きな後れを取っています。アメリカではGAFAならぬZORC(Zillow、Opendoor、Redfin、Compass)と呼ばれる時価総額3,000億円以上の巨大不動産テック企業4社をはじめとした企業が次々と台頭してきています。

 

とはいえ、日本国内でも、課題となっている生産性を向上させるため、不動産業界のIT化が少しずつではありますが、顕在化しつつあります。

 

2017年10月からはIT重説の社会実験がスタートしました。この社会実験は、賃貸借契約などの際、宅地建物取引士が対面で説明をしなければいけなかったものを、テレビ会議などオンラインで済むようにするための試みです。

それ以外にも、例えばVR・AR技術を活用した“VR内覧”、不動産や空きスペースをシェアする“スペースシェアリング”、複数投資者からWEBで資金を集め不動産へ投融資をする“クラウドファンディング”、またIoTを使った管理サービスなど、一消費者としても目にすることが多くなったのではないでしょうか。

 

M&AによるIT化

 

人口減少に伴うマーケットの縮小により、今後厳しい局面が予測される中、大手不動産関連各社はM&Aで局面の打開を図ってきました。IT技術を自社開発するだけではなく、必要に応じて技術のある会社に出資・資本提携をすることで、技術の内製化を進めています。

 

管理戸数30,000戸を有するシノケン・グループはチェーントープをM&Aして、自社の管理する30,000戸以上の物件に対して、オーナーの了解のもと、ブロックチェーンの技術を活用した、民泊の利用者と物件をダイレクトにつなぐサービスを開始しました。

 

このブロックチェーン技術を民泊分野に活用することで、従来のAirbnbなどの民泊プラットフォームを使用したような民泊利用者と物件のマッチングが不要となり、加えて、スマートキーなどを連動させることで、物件検索、申込、滞在、終了まで一連の流れを自動化して、スムーズに民泊利用ができるようにしました

 

アンビションは2016年にリーウェイズをM&Aして、販売投資不動産を人口知能により、分析・数値化して不動産価値を算出し、投資希望の顧客に対して最適な物件の提案・販売を行えるようにしました。三菱地所はナーブというVR技術に2017,2019年と立て続けに出資しています。

(日本M&Aセンター作成)

 

「GA technologies×イタンジ」~不動産×ITの代表的なM&A事例~

 

不動産×ITの代表的なM&AがGA technologies×イタンジの事例です。

 

譲受企業のGA technologies は2013年に設立して、2018年に上場、現在時価総額300億円の都心の中古ワンルームマンションの販売を行う、急成長企業です。それに対して譲渡企業のイタンジは仲介会社や管理会社向けに顧客管理や営業支援サービスを提供する急成長の不動産テックベンチャーです。

 

2018年に株式交換というスキームでM&Aが成立し、その取引額の大きさからも、不動産業界を震撼させました。

 

エンジニア会社のイタンジは、不動産販売の営業会社であるGA technologiesとは企業文化も全く異なっていましたが、「不動産業界にとらわれずに、テクノロジーで不動産業界から世界を変える、Amazonになる」というビジョンを掲げた樋口社長に共感して、グループ入りを決めました。

 

M&A後にGA technologiesはエンジニアを大量に採用し、AIを活用した、物件情報や顧客管理とデータ解析によって、効率的な不動産投資を可能にしたシステムの運用や更なるプラットフォームの開発を進めています。近年行われた不動産テックのM&A事例の中で最も成功している事例と言えるでしょう。

 

IT化を推進している不動産会社の企業価値

イタンジの他にもM&AによるIT投資を積極的に進めているGA technologiesは、2020年5月末現在、PER倍率はなんと約75倍になっています。その他、IT×不動産という切り口でビジネスを展開している企業の株価は高くなる傾向にあります。

 

2019年12月に東証マザーズに上場し、個人間で不動産売買が可能なプラットフォームを運営し、AI技術を活用しているソニーグループのSREホールディングスの、PER倍率が約67倍。東証一部上場で、コインパーキングとその上部の空中店舗の開発・運営を行うテクノロジーを組み合わせ、独自のビジネスを展開するフィル・カンパニーは約41倍になります。上場している不動産会社の平均PER倍率が約8倍であることを考えると、ITに積極投資している企業は将来性を期待され、高い株価が付く傾向にあると言えるかもしれません。

 

旧態依然の不動産業界のIT化を推し進めるためにも、今後、「不動産×IT型M&A」の数が増えていくことは間違いないでしょう。M&Aを活用することで、自社のIT化を進めるのも一つの戦略かもしれません。

業界再編部 住宅・不動産業界支援室

石本 翔

東京大学教育学部卒業。大学時代は体育会アメリカンフットボール部に所属し、新卒で日本M&Aセンターに入社。現在は、住宅・不動産業界チームに所属し、同業界に係る数多くのM&Aに取り組む。

東京大学教育学部卒業。大学時代は体育会アメリカンフットボール部に所属し、新卒で日本M&Aセンターに入社。現在は、住宅・不動産業界チームに所属し、同業界に係る数多くのM&Aに取り組む。