食品・外食

2020年食品業界M&Aの総括と2021年の展望

こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室 室長の江藤です。
当コラムは日本М&Aセンターの外食・食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆します。

初回となる今回は、江藤が「2020年食品業界M&A動向の振返りと2021年の展望」についてお伝えします。

 

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1. 2020年食品業界M&Aの総括と2021年の展望
2. 主な食品製造業のM&A事例紹介
3. 主な飲食業のM&A事例紹介
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1. 2020年食品業界M&Aの総括と2021年の展望

2020年に実施された食品業界M&Aの件数は、公表ベースで133件となり、コロナウイルスの影響で経済活動が長期間停滞していた事実を鑑みると、実質的には増加傾向にあると言える(過年度:2018年144件、2019年135件)。業態別の件数については以下の通りとなる。

 

■食品・外食関連業界M&A件数

出典:レコフM&Aデータベースより、当社作成

※各業態別の数字は、譲渡側をベースに集計

 

 

2020年は、特に外食業界において、コロナ禍により緊急事態宣言が発令され、飲食店の時短営業やソーシャルディスタンスの確保による座席数の減少により、非常に厳しい経営環境が続き、その結果、M&A市場における企業価値の下落や、大手外食企業の買収意欲の減退などにより、近年では最低の水準となった。
一方で、外食の機会が減り、中食の割合が大きく増加した中で、巣籠り需要のプチ贅沢品やEC販売により外出の機会を減らせるようなサービスを展開している事業者では、当然売上が大きく増加し、そのような企業をターゲットとしたM&Aが増え、結果的に製造部門では、ここ3年で過去最高の水準となった。
小売り業態については、2020年はどの企業も過去最高の売上水準をマークする会社が殆どであったことから、本業が多忙過ぎて、一旦M&Aの動きが鈍化したと考えられる。

 

2021年については、1月早々から2度目の緊急事態宣言が発令され、再度外食業界を中心に、大きく経済活動が停滞している。この流れは、ワクチンが国民全員に行き渡る2021年中旬ごろまで続くことが予想される。そのため、食品製造業においては、引き続きM&Aが活発に実施されることが考えられる。一方、昨年減少に転じた外食業界においても、4月以降、政府系金融機関から調達されたコロナ融資の返済がスタートする企業が多く出てくるため、このままキャッシュフローがジリ貧になるのを待つ前に、譲渡を決断する企業が増えてくると考えられる。

また、大手企業側においても、一旦買収意欲が低減していた状況の中から、アフターコロナを見据えた次の投資を、本来の収益力を鑑みると割安で取得できる現状で、次の事業の柱を育てるべく、買収を決断する企業が増えて来るだろう。

 

さらに、最近の動向として、全く外食とは関係ないIT企業や製造業など、異業種から外食企業を買収したいといったニーズや問い合わせも増えており、それらの企業による外食企業へのアプローチも、過年度から比べて大きく増えて行く事が予想される。そのため、上述の大手企業によるM&Aの再開と相まって、今年度外食は、非常に注目の業界と言える。

2.主な食品製造業のM&A事例紹介

① 3月【売】ポテトかいつか×【買】カルビー

② 3月【売】鎌倉ニュージャーマン×【買】モロゾフ

③ 3月【売】香り芽本舗×【買】ヨシムラ・フード・HD

④ 5月【売】コスミックダイニング×【買】アークランドサービスホールディングス

⑤ 6月【売】浅野屋×【買】日本みらいキャピタル

⑥ 7月【売】豚まんの店幸崎×【買】クリエイツ

⑦ 9月【売】松山製菓×【買】西原商会

⑧ 10月【売】トリアノン洋菓子店×【買】21LADY

⑨ 12月【売】スカイフーズ×【買】竹下製菓

⑩ 12月【売】ファミール製菓×【買】鈴木栄光堂

 

2020年に実施された食品製造業における主な成約事例は上記の通りである。

これらの事例からも分かる通り、かまくらカスターなどを主要商品とする鎌倉ニュージャーマン、ひじきふりかけの香り芽本舗、軽井沢で展開する老舗ベーカリー浅野屋、別府のソウルフードとして長く愛されてきた豚まんの店幸崎、粉末ジュースやスナック菓子を得意とする松山製菓、テレビチャンピオンなどでも優勝経験のある都内老舗洋菓子店、トリアノン洋菓子店、一口サイズの小粒なアイスを得意とするスカイフーズなど、直接消費者の口に届けられる製品を作っており、巣籠り需要のプチ贅沢品を取り扱う企業をM&Aによりグループ化する事例が非常に目立った年だったと言える。

 

3.主な飲食業のM&A事例紹介

① 2月【売】竹若×【買】あさくま 

② 3月【売】ミールワークス×【買】アークランドサービスHD

③ 4月【売】雪村×【買】グルメ杵屋

④ 6月【売】SASAYA×【買】雄渾キャピタル・パートナーズ

⑤ 7月【売】ペッパーフードサービス×【買】J・STAR

⑥ 7月【売】大戸屋HD×【買】コロワイド

⑦ 8月【売】FTGカンパニー×【買】Limグループ

⑧ 10月【売】時計台観光×【買】鴨田誓一氏 ⑨ 11月【売】大将軍×【買】木曽路

⑨ 11月【売】大将軍×【買】木曽路

⑩ 12月【売】一品香×【買】イートアンドホールディングス

 

外食業界については、2020年はコロナ禍による大幅な需要減少に伴い、M&Aにおいても、多くの案件が成約に至らなかった。日本M&Aセンターにおいても、ディールがスタートしたものの、譲渡企業の急激な業績悪化や買い手である大手外食企業の買収意向の減退により、多くのM&A案件がブレイクした。

また、成約したディールのサイズ感についても、規模の大きなM&Aは大戸屋HDやペッパーフードサービスの2件を除き、数十億規模の案件は殆ど見られなかった。

 

一方で、年度後半の10月~12月にかけては、上述の通り次の事業の柱を獲得すべく、大手企業のM&Aに対する意欲が一定の回復を見せ、上場企業による買収が増加傾向に転じた。また、人工知能を活用したマーケティング開発事業を軸にグローバル展開するLimグループが、オーナーズビーフを日本で初めて採用した焼肉店「YAKINIKU FUTAGO 17th St.」を展開するFTGカンパニーを買収するなど、これまでの外食企業ではノウハウを持たない、新しいマーケティング・集客のノウハウを融合させ業績の向上を実現できるIT企業などの買収が、今後の動向を示唆する特徴的な案件であったと言える。

 

いかがでしたでしょうか?

今後も隔週で食品業界支援室より、最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

次回のコラムは食品業界支援室 渡邉より昨年当社で仲介をさせて頂きました、 「株式会社トリアノン洋菓子店 」様のМ&Aの事例を具体的な背景、М&A成立までのストーリーをお伝えさせて頂きます。

 

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業界再編部 食品業界支援室 室長

江藤 恭輔

青山学院大学法学部卒。大手金融機関で約10年間、法人営業に従事した後、2015年日本M&Aセンターに入社。2016年に食品業界専門チームを立ち上げ、丸亀製麺を全国で展開するトリドールHDとアクティブソース(立ち飲み居酒屋 晩杯屋)や、同じくトリドールHDとZUND(豚骨ラーメンずんどう屋)の資本提携、大阪の老舗餃子店「大阪王」を展開するハンエイとサッポロライオンの資本提携などを実現させる。

青山学院大学法学部卒。大手金融機関で約10年間、法人営業に従事した後、2015年日本M&Aセンターに入社。2016年に食品業界専門チームを立ち上げ、丸亀製麺を全国で展開するトリドールHDとアクティブソース(立ち飲み居酒屋 晩杯屋)や、同じくトリドールHDとZUND(豚骨ラーメンずんどう屋)の資本提携、大阪の老舗餃子店「大阪王」を展開するハンエイとサッポロライオンの資本提携などを実現させる。