M&A全般

『M&Aを成功に導くPMI』M&Aコンサルタントが経営者に推薦する1冊

『M&Aを成功に導くPMI』の要約・あらすじ・特徴

M&Aは、日本においても活用する企業が増えて活発になってきています。買い手企業にとって、国内の人口減少や競争の激化や業界再編の中で経営体質の強化や、規模の経済など少ない時間とリスクで必要な経営資源を手に入れる手段となりえるからです。
しかし、M&Aで企業を譲り受けたはいいが、その後経営統合がうまくいっていないという話も多く聞くようになってきました。

 

本書はこうした環境の中で、M&Aを成功させるためには何が必要なのか、さらには成功している会社はどのようなM&Aを実行しているのかを事例をもとに書かれている書です。

今現在M&Aを実行中の企業はもちろんのこと、今後M&Aを検討する企業にとっても必見の内容になっています。

 

PMIがM&Aの成否を決める

PMI(Post Merger Integration)はポストM&Aと呼ばれ、M&A後の相乗効果を生み出すまでの手順のことです。

M&Aを実施したのはいいものの、具体的な戦略がなかったり、M&Aをすることが目的になっている企業もあります。
また、譲受企業と譲渡企業の規模の差が大きければ、社内の文化や慣習、教育も大きな差があることも多くあります。

 

それだけでなく、業種の違い、地域の違い、国の違いなど、統合していく上での障壁は多くあります。これらをどのように統合し、相乗効果に変えていくかということがM&Aの成功のカギであり、M&Aの神髄ともいえるでしょう。

さらに、PMIがうまくいき成果を出すことができれば、金融機関やM&Aブティック等からの情報提供も多くなり、次のM&Aへもつながります。

 

PMIの重要な3要素

世界有数のPEファンドであり、M&Aの業界専門誌である「M&Aジャーナル」が選定する「年間最優秀プライベート・エクイティ・ファーム」を複数回受賞し、その他各国の受賞歴を持っているリバーサイドというPEファンドがあります。
このPEファンドはリストラをせずに企業価値を上げるという特徴があり、買収後のPMIにおいての成功率もとても高いです。
その関連会社のリバーサイドパートナーズの責任者がPMIの重要なポイントとして3点あげています。

 

 

    ①M&A実行前の段階で、お互いの相性が合うことを確認する。
    ②現場の意識改革を実行する。
    ③営業の質などの違いがあることを前提に、有効なシナジーを模索する。

 

 

このポイントの一つ目に挙げられている「①M&A実行前の段階で、お互いの相性が合うことを確認する。」という点は、M&Aの進めていく中で、譲受企業と譲渡企業のトップが最初に面談をする「トップ面談」が当てはまります(本書ではファーストビジット、と表記されています)。

それまでは金融機関やM&Aブティック等から提供されていた調査資料でのみ見ていた相手のことを、直接会って経営者自身の人間性や経営に対する考え方を話し合う機会であり、とても重要なタイミングです。本書でも、「ファーストビジットがすべてを決定する」との記載があります。

その為にも、トップ面談前には相手のことを事前に詳しく調べておくことも重要です。出身から家族構成、役員構成や趣味まで知っておく必要があるでしょう。そのうえで譲渡オーナーと目標、経営に対する考えを共有していくことが重要です。譲渡オーナーが退任せずに残るケースでは、尚更でしょう。

 

二番目のポイント「②現場の意識改革を実行する。」は、リバーサイドが株式会社新総企というコイン式の駐車場の運営を営む新潟の企業を買収した際に事例が紹介されています。

この会社は新潟県内で最大の駐車場管理会社でしたが、創業者の先見性とカリスマ性で成長してきた会社であり、社内では社長の一言ですべてが決まっていました。
従業員も当時先進的だったコインパーキングという事業を広め、新潟県内最大手に成長させた創業者社長に対して忠誠心も厚かったのですが、その分、自主性が失われており、必要な会議すらしていない状況でした。

 

その状況から、営業部、技術部、総務部などのトップを集めてチームで課題を解決するようにしていきました。創業社長は一歩下がってもらい、各部門のトップに一つ一つステップを踏みつつ、自主性を重んじて課題について意見交換してもらいました。
さらに、これを何か月も継続していき習慣化させていくことにより、新しいアイデアも出るようになり、そこから自社のビジョンの策定までできるようになりました。

 

 

三番目のポイント「③営業の質などの違いがあることを前提に、有効なシナジーを模索する。」では本書の調剤薬局同士のM&Aとして紹介されているメディカルシステムネットワークとトータルメディカル事例から紹介します。

調剤薬局業界は医療費の抑制や薬剤師不足に加え、個人経営の薬局数が多く大手10社のシェアは20%以下という業界環境でもあり、最もM&Aが活発な業界の一つです。

 

譲受企業のメディカルシステムネットワークは北海道で創業され、現在東証一部上場企業である。トータルメディカルは九州北部で同じく調剤薬局を経営しているジャスダック上場企業です。

この統合は、トータルメディカル側からすれば、メディカルシステムネットワークが先進的に進めていた在宅医療のノウハウや、従業員への研修制度の拡充、さらには全国に店舗があるため、従業員のキャリアアップするポストが多くあるというメリットがありました。
一方、メディカルシステムネットワークはそれまで九州の店舗は5店舗のみであり、統合することにより、一気に35店舗となることで薬剤師の採用などが有利になることができました。

 

メディカルシステムネットワークでは、全国の店舗を地域ごとにグループ会社に分けており、その各社がM&Aを実施するという体制をとっています。これは、各地域によって物価や地価、人件費、勤務体系など、地域の特徴に合わせられるようにする為です。
さらに、同社ではM&Aで譲り受ける薬局の規模や収益率などの違いを前提としながら、急な変化をつけることなく、緩やかな統合を追求しています。

PMIの実例により、その必要性を体感できる

このように、事例に基づいてPMIの必要性を体感できる1冊となっています。最初にPMIを知るには、最適の入門書となっています。

業界再編部 調剤薬局業界支援室

沖田 大紀

青山学院大学経済学部卒業後、大和証券株式会社を経て、日本M&Aセンターに入社。入社以来、栃木県・埼玉県・大阪府・兵庫県・岡山県・広島県・香川県・徳島県・愛媛県・高知県の調剤薬局担当として、M&A支援に取り組んでいる。

青山学院大学経済学部卒業後、大和証券株式会社を経て、日本M&Aセンターに入社。入社以来、栃木県・埼玉県・大阪府・兵庫県・岡山県・広島県・香川県・徳島県・愛媛県・高知県の調剤薬局担当として、M&A支援に取り組んでいる。