M&A全般

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』M&Aコンサルタントが経営者に推薦する1冊

M&Aを進めるにあたって、重要なことは多々ありますが、根本的には「どの相手と組むのか」が最も重要です。

 

「自社に合う」会社と商談を進めることができれば、様々な論点や困難も乗り越えて成約に至ることが多いです。一方、「自社に合わない」会社と商談を進めてしまうと、小さな事象が大きな問題として取り上げられてしまい、商談が難航してしまう事態に陥ってしまいます。

 

自社に合う・合わないというのは具体的にはどういうことでしょうか。

 

・社風や社内の制度が近い
・類似するミッション・ビジョンを持つ
・ビジネスモデルやサービスの質・価格帯が近い

 

など、があげられるかと思います。

 

反対に、お互いの持っていないものを持っているから「自社に合う」という側面も考えられます。自社に持っていないものを持っているからこそ高く評価するというものです。

 

・技術の補完
・地域の補完
・バリューチェーンの補完

 

などがM&Aのプロセスの中で議論となりますが、「経営のタイプ」も重要です。

 

それを考える参考書として、山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』をお勧めしたいと思います。

 

同書では、経営には「アート型」「サイエンス型」「クラフト型」があるとしています。

 

「アート」は、組織の創造性を後押しし、社会の展望を直観し、ステークホルダーをワクワクさせるようなビジョンを生み出すもの

 

「サイエンス」は、体系的な分析や評価を通じて、「アート」が生み出した予想やビジョンに、現実的な裏付けを与えるもの

 

「クラフト」は、地に足のついた経験や知識を元に、「アート」が生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出すものと記されています。

 

 

M&Aの場面においては、特に譲受け企業となる大手・中堅企業が「サイエンス型」に偏ってきている傾向にあり、

 

・組織が大きくなる過程や、世代交代が進む中で失ってきた「アート」の部分をM&Aやベンチャー企業への投資で強化したい

 

・固定費削減のための外注化を進めた結果失ってしまった専門技術や経験値など「クラフト」の部分をM&Aで取り戻したい という狙いのM&Aが多く成約しています。

 

一方、譲渡企業にとっても自社はどの部分が強く、今後の成長のためにどの部分を相手先に保管をしてもらいたいのかをイメージしておくことが重要といえます。

 

例えば、新しい発想力があり次から次に新サービス・新企画を生み出すことに秀でた会社は、同じような企画力に優れた会社と組むこともよいですが、その新しいものをしっかりと収益の上がる事業にしていくには「クラフト」に強い会社と組むことが大きな効果をもたらす可能性が高いです。

 

 

また、事業化したものをスケールさせていくには「サイエンス」に強い会社と組むことが有効な選択肢となるでしょう。

 

また、中小企業には長年の業歴から「クラフト」に強い会社が多いですが、会社を成長させるために、

 

・「アート型」の会社と組むことで、付加価値の高い新しいサービスを作り上げていく

・「サイエンス型」の企業と組むことで、社長や特定のキーマンの経験則に頼ることなく、マネジメント経営に変革させていく

 

ことなどが考えられます。

 

特に譲渡を考えられている経営者の方は相手先を選定するにあたり、会社の規模や格式、業種や地域などを基準に選ぶことが多いですが、自分の会社の型を見つめなおし、それを補完させる型の会社と協議をしていくというのも重要なことと思います。

業界再編部 副部長 建設・住宅・不動産業界支援室 室長

西田 賢史

一橋大学経済学部卒業。
2008年日本M&Aセンター入社以降、中堅・中小企業のM&A仲介に従事。上場企業専門の部署にて、買収から子会社の売却まで幅広い資本政策を支援した後、現在は業界特化型の業界再編部にて、建設・住宅・不動産業界の責任者として多くのM&A成約に取り組む。

一橋大学経済学部卒業。
2008年日本M&Aセンター入社以降、中堅・中小企業のM&A仲介に従事。上場企業専門の部署にて、買収から子会社の売却まで幅広い資本政策を支援した後、現在は業界特化型の業界再編部にて、建設・住宅・不動産業界の責任者として多くのM&A成約に取り組む。