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M&Aレポート

譲渡オーナーとの語らい Vol.1
株式会社スタイルズ様(東京都・IT企業)

2021.3.16

  • IT

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東京神田、靖国通り沿いに本社を構えるIT企業スタイルズ社。
売上約17億円、社員数120名の同社は社長の梶原氏が慶応義塾大学時代に役者業に没頭し、
エンジニアのアルバイトで生活費を稼いでいたことが、起業のきっかけとなっている。
2020年4月1日に、半導体商社の菱洋エレクトロ社とM&Aを実施した。

最初は、急に思い立って。

(竹葉)  梶原さん、ご無沙汰しております。直接お会いするのは2020年の4月1日の株式の調印式以来ですよね?

(梶原氏) そうですね、あの時は緊急事態宣言の直前に、契約が完了して。本当タイミング的には良かったなあ、といま振り返ると思います。

(竹葉)  そうですよね、あの頃はいつ宣言が出るか、びくびくしながらディールを進めていたのを思い出します。やはり最終局面では直接コミュニケーションとれないといろいろつらい部分はあるので・・・。もともとM&Aセンターとの接点は、セミナーからでしたよね?

(梶原氏) そうですね。セミナーに参加したときは、聞いてみようと思っただけで、その後進めるということとか、細かいところまで考えていたわけじゃないんです。まあ、急に思い立って、とりあえず考えるんだったら一番大手のところに相談してみよう、と思って申し込みました。

(竹葉)  ちょうど2年前ですよね。最初は、「企業を買いたい」と。

(梶原氏) そうですね、当時ニアショアの拠点として地方のIT企業を買いたくて、今となっては破談になってよかったかな、と。重荷になってしまっていた気がします。

(竹葉)  当時58歳くらいでしたっけ?そこから買いたいから、売りたいに転じたのが60歳のとき、もともと考えられてたんですか?

(梶原氏) セミナーに参加した時よりも前から、僕自身に何かあるとまずいなと、例えば交通事故で死んじゃうと家族にずいぶん迷惑がかかるなという風に思ってました。換金性のない株式をそのまま残しちゃうと、高額な相続税を家族に負担させることになるので、それはまずいなと思って、なるべく早く株式の部分は解決したいなと。

ポーランドからの絵葉書のお礼とともに (M&Aのきっかけ)

(竹葉)  最初、譲渡のお話しがあったのが、僕がポーランドの旅行中に送った絵葉書のお礼に梶原さんから「素敵な絵葉書ありがとうございます、少し相談したいことが」と連絡を頂いて、それが2019年のお正月でした。何か心境の変化があったのですか?

(梶原氏) 心境の変化みたいなもの、というか僕自身の理由は、もしもの時に家族に迷惑をかけたくないというのがあってはっきりしていたので、あとは”いつ?”という話で。一緒に経営をしていた山本ともちょこちょこ話をしていて、山本の気持ちも乗ってきたので、じゃあ進めてみようか、と。
彼も2020年~22年くらいに次の事業にもチャレンジしたいと言っていたので、山本が持っている株式もどうするのかっていう問題もあって。といっても後任の役員が市場価格で買えるのというと難しいので、このタイミングで一気に100%のM&Aに進めた方が良いなと、2人で話して決めた感じですね。

一番の大手でと思いつつも、他の選択肢もあるかもしれないといくつかの仲介業者と比較検討していたという。そのなかで最も重視したのは譲渡候補先として挙がってきた会社の本気度、スタイルズ自身がどれだけ貢献していける先か、だったという。

一番未知数で、面白くなりそうな相手を選んだ

(竹葉)  M&Aセンター以外にも他の仲介会社さんは検討されたんですか?

(梶原氏) そうですね。何社か仲介会社の話を聞いたり、一応していました。僕自身は一番の大手で良いと思っていたのですが、山本が他も一応見てみたいとなったので。

(竹葉)  その中で当社に決めてくださった理由は何でしょうか?

(梶原氏) もう2社くらい、候補先のリストを出していただいたんですけど、会社の本気度みたいなものが見えない感じのリストだったので、ちょっと話を進めにくいかな、と思って。その点は、竹葉さんが詳しく説明いただいたので。

(竹葉)  契約させて頂いて、実際に探し始めたのはM&Aが実行される5か月くらい前でしたね。

(梶原氏) 僕の意向は割とはっきりしいて、全く同じようなITの会社は対象外にしてということで、センターさんもちょっと戸惑われたかなと思ってました(笑)
結構大変だったでしょう?

(竹葉)  はい、なかなか無いオーダーだったので(笑)。
でも、探し始めたら関心持つ先が意外に出てきたなという感じでした。その中で菱洋エレクトロさんと進めてみようと思ったのはどういったところだったのですか?

(梶原氏) 複数社候補先が出てきて、不動産と、コマースと半導体・・・と、IT企業がIT企業を買収するのはまあ単純に量的な拡大を目指すわけで、僕としては量的な拡大によって今までとあまり変わらないのは面白くないなところもあって。
大きな目的は会社としての在り方みたいなところがあって、会社としてしっかり社会に貢献していきたいと思っていたので、菱洋さんとなら、菱洋さんがこの先取り組む事業やそれを通じての社会への貢献ができるかなと思いました。
未知数な部分が多くて面白そう、というのが決め手になりました。

(竹葉)  同業だとなんだか負けた感を感じてしまうとか心情的にはあるものなのですか?

(梶原氏) 負けた感よりも、変化が大きそうな相手が良かったんです。

2020年4月1日の株式譲渡の契約式のあと、梶原氏、山本氏と。

緊急事態宣言6日前、従業員へのM&A開示

(竹葉)  昨年の4月1日、緊急事態宣言の直前くらいのタイミングだったかと思いますが、社内に開示した時の様子や、そこからの約1年、どのような感じでしたか?

(梶原氏) あの日は、夜かな?みんな集めて話したんです。みんな、「はぁ・・。」って感じで、ピンと来てない感じでしたね。

(竹葉)  他の役員の方々は如何でした?

(梶原氏) 他の役員も、なんか「ふーん」とか「あ、そうなの」って感じで。

(竹葉)  なにか、混乱とかありました?

(梶原氏) 混乱はないですね。
菱洋さんから来た取締役の方がすごく穏やかで優しい方で、うちの従業員ものんびりした人が多いから、良かったというか。
もう少し厳しくいってもらっても良いかなという気はしますけど(笑)

(竹葉)  菱洋さんから、何かプレッシャーみたいなものはないのですか?

(梶原氏) それはないですね。最低限これだけは数字出してくれといわれている数字も、うちの通常運行の数字か少し低いかくらいですし。むしろ「もっと攻めましょうよ!」という話をしているのですが、まあ少しずつ進んでいるという感じですかね。

(竹葉)  大きく変えるならやはりM&Aですか?

(梶原氏) そうですね。順調な中堅のIT企業が大きく変わりたいならM&A以外の手段はないんじゃないんですかね?
順調だからこそ、新しいことにトライするために会社をステップアップさせる、且つ自分もステップアップするという意味では、良い手段だと思いますね。
親会社の新規事業をITで作っていくということは、若い社長さんなんかはどんどんチャレンジしていったらいいと思います。

頭を使い続けたい (M&A後)

「頭を使ってないと死んじゃうから頭を使うことを数年間か確保しようと思って、」と、
挑戦し続ける梶原氏。現在は従来通り代表として会社に残ってるが、数年後の完全引退も視野に入っているという。


(竹葉)  そういえばM&A後は、大学に行くとおっしゃってましたよね?

(梶原氏) 頭を使うことは続けたいので、会社を引退したら大学か大学院に行きたいです。

(竹葉)  今後はどのようなイメージですか?65歳で完全引退とかお考えだったかと思うのですが。

(梶原氏) 僕がこの後5-10年で完全引退するとするじゃないですか。まあいつかはしますよ。
67,8から70くらいかなと思っていますけど、その引退後の状況が、菱洋さんも含めてちゃんとした感じになっていないといけないなと考えてます。

(竹葉)  よく、M&Aをしたいけどしたくない、っていうオーナーさんいらっしゃるのですが、やはりそういったM&A後の喪失感みたいなものが大きいんですかね?

(梶原氏) したいけどしたくないっていう人はそういう喪失感って相当あるんじゃないですかね。
だからこそ「しっかり自分の力を使って、共同事業として大きくしていきましょう」で、さっきの話じゃないですけど、自分の会社のソフトウェアを作る力自体をステップアップさせて成長させていきましょうとするのが一番いいことだと思います。40代50代くらいの社長さんにとっては、新たなチャレンジのステージになると思いますけどね。

(竹葉)  結構、代表として残る限りは、株は渡したくないという方もいらっしゃいます。M&Aに対してネガティブなイメージがまだあるのでしょうか? 

(梶原氏) いわゆる乗っ取りにあったとかね。数は少ないと思うんだけど噂ベースで聞くと警戒はしますよね。
まあ、あとはあんまり良い経営者じゃないという前提で話をすると、経費使いたい放題ですし、たぶんそういう公私混同をしていますよね。普通に考えてそういった公私混同している部分の会社の経費をそのままにしたい、というオーナーもいるんじゃないですかね?

(竹葉)  よく、会社のオーナーの性格が決算書にでるって言いますけど、スタイルズさんはすごく綺麗な決算書でしたよね。

(梶原氏) そうですかね?笑
竹葉さんはすごく業界のことを勉強してますよね。IT業界のことが分からないM&A担当では、そのソフトウェアが本当に素晴らしいものなのか、とかなかなか分かりにくいと思いますね。
M&Aを進めるにあたって最低限の共通言語が通じないと厳しいと思います。

(竹葉)  ありがとうございます。
最後に、これからM&Aを考えられている経営者の方に一言お願いします。

(梶原氏) う~ん、そうですね。
「10年後に買ってくれる会社があるか、は分かりませんし、何より従業員にとって面白く、魅力的な企業でないとエンジニアも転職しちゃいますよ。」って言いたいですね。
そういう意味で、企業を大きく変化させる経営オプションとしてM&Aは一つの手段になると思います。

株式会社スタイルズ代表取締役社長 梶原稔尚氏と、日本M&Aセンター調印ルームにて 

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公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツを経て、2016年に日本M&Aセンターに入社。IT業界専門のM&Aチームの立上げメンバーとして7年間で1000社以上のIT企業の経営者と接触し、IT業界のM&A業務に注力している。18年には京セラコミュニケーションシステム(株)とAIベンチャーの(株)RistのM&A、21年には(株)SHIFTと(株)VISH、22年には(株)USEN-NEXTHOLDINGSと(株)バーチャルレストラン等を手掛ける。

業種特化1部 チーフマネージャー
IT業界専門グループ
グループリーダー
竹葉 聖