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M&Aレポート

譲渡オーナーとの語らい Vol.3
株式会社ファインシステム様(兵庫県・IT企業)

2021.3.27

  • IT

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兵庫県加古川市、重化学工業、繊維産業が盛んな同市に創業35年を迎える老舗のIT企業がある。売上約3億円、社員数30名程の同社は、先代の佐藤勉氏が歯科技工所での勤務を経て、システムでの業務改善をヒントに、MS-DOSを用いて独学で歯科技工所向けシステム『いればくん』を作ったことが起業のきっかけとなっている。
2015年、同社を牽引してきた佐藤勉氏が急逝、株式の承継の問題を契機に、M&Aを実施した。
M&A前後の様子と想いを、同社に新卒で入社し先代とは20年来の関係となる現取締役COOの山内氏に話を聞いた。

先代が亡くなったことを悲しむ余裕もなかった

(山内氏) はい。最初は奥様に代表になって頂いたのですが、会社から長く離れていたということもあった、奥様から依頼を受け半年ほどで私が社長に就任することになりました。
そこからは、お世話になっているコンサルタントの方や先代と親しかった経営者の方々に相談したり、先代社長から聞いていた話を思い出しながら組織の運営とか、こうしていこうとか決めてやっていったのですが、やはり、自分がやっていることで本当に良いのかな?とか、悩みは多かったです。
先代から正式な形で引き継ぎを命じられ、必要なことを教えていただいたわけでもなかったので。

(竹葉) 先代社長からは頼むよ、というようなことを言っていただいたけど、突然、社長になり本当に自分でいいのか、という迷いもあったと。

(山内氏) 奥様は自分が継ぐことで安心していただいたので、その期待に応えていきたいと思っていました。

創業家の期待に応えたかった(M&Aへ向かって)

(竹葉) 奥様から最初、M&Aの話をお聞きになってどう思われましたか?

(山内氏) M&Aって何だろう?という感じでした(笑)、具体的にはよくわからなくて。未知のものに対する不安を感じました。

(竹葉) 奥様からは、M&Aの話をした際の山内様の反応は、けっこうネガティブなものだったと伺ったのですが、食事が喉を通らなくなったと。

(山内氏) M&Aについては、不安というよりも、どうなるのか分からない部分が多すぎて(笑)。M&Aがどうこうというよりも、なんというか反発の気持ちが強かった気がします。社長業も徐々に慣れてきた矢先のことだったので、喪失感というか。あとは創業家の期待に応えられたなかったのかな、という気持ちがあった。
新卒から入社して、先代の期待に応えたい!と思ってやってきて、苦しくも楽しくもあったのですが亡くなられて、自分が社長になって。今度は先代のご家族や会社メンバーの期待に応えたい!と思ってやってきていたので、一番は自分の感情的なところでしたね。

あのときは、あのときで最善だった

(竹葉) 創業家としては、株と連帯保証の問題の解決のためにM&Aを実行されたのですが、山内さんご自身で株を買い取られようともしたんですよね?

(山内氏) はい、仮に自分が買い取ったらどのくらいの額になるのか、借入がどのくらい必要になるのかなどを銀行に相談したりしました。当時は、「M&Aで従業員をバラバラにさせない、自分が会社と社員を守らなきゃ」という一心で、自分では冷静だと思っていましたけど、今思うと頭に血がのぼっていましたね(笑)。
それでも、どんな自分であれ、あのときは、あのときで私の最善だったと思います。

(竹葉) そういった反発心がある中で、候補先の社長さんとお会いして、どうでしたか?

(山内氏) 当時はすごく葛藤がありました。初めてお会いしたとき色々なことを聞きました。経営の考えなど質問させていただいて、ちゃんと真摯に答えてくださって、その時に仰っていたことが、M&Aした今も変わらないんですよね。

逆に自分のほうが変わったなと思うんです。M&Aを受け入れる直前は「それならもういいです」みたいな複雑な感情もあったように思います。

ただ、これまでとこれからとを考えてみて、自分が自分らしく生きていけるかと思ったら、感謝されてこその人生、否定や抵抗の先に自分自身が望み思い描く笑顔の世界はないなと思いました。このままでは、思いもよらない生き方をしていくことになる。これは目指す生き方ではない。と、だんだん考えが変化していきました。
M&Aをすることで、奥様が悩んでいる連帯保証や株の問題といった創業家の不安や問題は解決されますし、経営(主に社名・経営者・メンバー・事業)についても、これまでと変わらないなら、今まで通りにまた頑張っていけばいいかな、と思えるようになっていきました。過去を考えると苦しいだけですが、自分のやれることをやっていけば可能性が生まれるので、自分のやれることを頑張ろうと思いました。

ギンギラギンにさりげなく

(竹葉) 日本M&Aセンターの印象はいかがでしたか?山内様にとっては、最初は敵のような存在だったと思いますが(笑)

(山内氏) そうですよ。もう警戒心の固まりでした(笑)。なんだか東京からデキる風な奴が来たなと。後で知ったのは仕事にストイックで本当にデキる人なんだな、ということでしたけど。

(竹葉) ありがとうございます。山内様とは本当にいろいろお話させて頂きましたよね。

(山内氏) 濃いですよね。大阪で、担いでカプセルホテル連れて行きましたしね。

(竹葉) え?覚えてないです・・。

(山内氏) 深夜のたこ焼き屋さんで、酔っぱらって、もう帰りの電車ないですね、ってなって、お店の人に聞いて僕が担いでいきました(笑)なんか、泣きながらお話していて、この人良い人なんだなーって思いましたよ。

(竹葉) 本当にその節はありがとうございました…(笑)
山内様の私への警戒心が薄くなっていったのはそのあたりからですかね?

(山内氏) いえ、その前にカラオケに行ったことがあったと思うのですが覚えてます?竹葉さん、その時に「ギンギラギンにさりげなく」をこれでもかと全力で熱唱されてて(笑)あ、この歌をこんな風に歌う人に悪い人は絶対にいない、って直感的に思って、この人は信じてもいいのかもな、って思わせてくれました(笑)

期待値のすり合わせ(M&Aを経て想うこと)

(竹葉) 開示した時の、従業員の皆さまの反応とか、如何でしたか?

(山内氏) 特に大きな混乱もなく。やっていくと決めたのでついてきてほしい、ということは伝えました。

(竹葉) M&Aをして1年半ほど経ちますが、いかがですか? たとえばM&Aをせずに、この新型コロナの状況を迎えていたらどうだったかなど・・・

(山内氏) そうですね、おそらく、していなかったらしていなかったで、何かしら自分の納得のいく結果になるように取り組んでいったとは思いますが、過去ではなく、いま現在と未来のことをとらえて思うことは、率直に良かったことしかないです。現在の代表(パワーエッジ社長でもある塩原さん)がいてくれて、相談だとか話をしていると、自分自身の見直しにもなりますし、今は塩原さんの期待に応えていきたいと、そう思える存在に出会えたというのはとても大きいです。

(竹葉) 最後に、同じような、創業者から会社経営を任されている経営者の方々や、これから会社を引き継いでいこうとしている経営者の方々へアドバイスを頂けますか?

(山内氏) 私の実体験のなかで感じることは、M&Aでうまくやれるかどうかも「思いやり」が大切なのかなと思っています。結局、人間でいう結婚みたいなものなので、、
M&A直後に、塩原さんに失礼ながらも率直に質問させていただきました。
「塩原さんからみて、私の強みは? また、課題はどんなところがあるように見えますか? お役に立てそうですか? 適正ありますか?」と質問攻め(笑)。そのことにしっかりと考え真摯に答えてくださり、
「これから山内さんがどこまで成長していってくれるのか、物凄く楽しみです。マジメでやる気に満ち溢れていて素直。適性溢れています。」と。そして、私が持つ課題に対しても
「塩原が全力で注力していく課題だと思っている」「山内さんを本当の経営者として育てていきたいです。」と伝えてくださいました。
このときに、この人のもとで学ばせていただき、人として経営者としてさらなる成長を遂げたいと思いました。
うまく言語化できない部分もありますが、互いに相手のことを思いやり、真摯に向き合おうとする姿勢と、言行一致の一貫性が目に見えないかけがえない信頼を育んでくれているような気がしています。これからも塩原さんや先代とそのご家族、メンバーへの感謝を忘れず、縁ある人達の幸せに尽くすなかで、自分自身も幸せである生き方を楽しんでまいりたいと思っています。

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公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツを経て、日本M&Aセンターに入社。IT業界専門のM&Aチームの立上げメンバーとして5年間で1000社以上のIT企業の経営者と接触し、IT業界のM&A業務に注力している。18年は京セラコミュニケーションシステム㈱とAIベンチャーの㈱RistのM&A、21年には(株)SHIFTと(株)VISHのM&A等を手掛ける。

上席課長
IT業界支援室 室長
竹葉 聖