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M&Aレポート

譲渡オーナーとの語らい Vol.4
株式会社未来工房亞主様(福岡県・IT企業)

2021.4.2

  • IT

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福岡県福岡市、ベンチャー・スタートアップの街と言われる同市に老舗のIT企業がある。福岡市内でSES事業を展開する同社は1994年に馬場氏が創業。高校3年時に将来はコンピューターの世界で働こうと決心した馬場氏によって「未来工房」と名付けられた同社は、2019年9月に鹿島建設などの建設業界向けのERPの開発を行う株式会社チェプロとM&Aを実施。SES企業とプロダクト企業のM&Aのその後の話を聞いた。

もっと早くから動くべきだった(M&Aのきっかけ)

(竹葉) M&Aについて実際に動き始めたのは2年前のセミナーでしたよね?セミナーに参加したきっかけは何でしたか?

(馬場氏) セミナーに参加したのは、2年前なので58歳の時ですね。当時、福岡のIT企業で、私の周りでもM&Aを進めている会社さんが何社かありましたし、直接「うちとどうですか?」と声をかけてきてくれた取引先もいたのですが、「他にも譲受けてくれる会社はいるのかな?」と思って参加しました。

(竹葉) やはり、60、65歳くらいで完全引退、というイメージをお持ちで、そのタイミングで動き始めた感じでしょうか?

(馬場氏) 50歳くらいからM&Aを含めて事業承継どうするかは少しずつ考えていたのですが、実際に動いたのが、まあ58歳の時でセミナーが初めてでした。思ったのは、もっと早く動くべきだったな、ということでしたね。

(竹葉) それは何故でしょうか?

(馬場氏) IT業界は、やはり若い人にどんどん継いでいかないと、と思うんですよね。
変化のスピードが速いですし、色々なところにアンテナを張っておく必要もあるので・・・。恥ずかしながら、もうスマホもよく扱いきれないのに(笑)そういうレベルで社長はできないなあ、と。あとは、仕事のやり方ですとか、考え方ですかね。私の世代だと根性論だとか精神論が、そんな気持ちはなくても言葉の端々に出てしまうことがあって、今の若い人たちはそういったところでは仕事しにくいだろうなと思うんです。例えば、有休がとりやすいだとか、産休も、男性の育児休暇も、素直に「良いよ」って言ってあげられる環境じゃないと、人は離れていきますし、会社は大きくなっていけないですからね。

株式を持ち続けることにこだわりはなかった

(竹葉) セミナーに参加されてから弊社と実際にアドバイザー契約を締結させていただくまでに、気持ちの整理とか、何か迷いみたいなものはありましたか?

(馬場氏) 譲渡すること自体に迷いはなかったのですが、「本当に買い手が現れるのかな?‥」という不安が大きかったです。それまで自分の会社の価値がいくらなのか、とか考えたこともなかったですし。こうやって計算するのか!というのは新たな発見ではありました。

(竹葉) よく、「将来的には譲渡したいけれども、社長でいる限りは自分で株を持っていたい」というオーナーさんがいらっしゃいます。馬場様は株式の譲渡後も社長としてお仕事をされていますが、株式を持ち続けることにこだわりはなかったですか?

(馬場様) 福岡は土地柄ですかね?社長=オーナーという会社は多分7割くらい、私の仲の良い社長さん方も、株主は同じ業界の全然違う会社という方が多いんです。身近に株持っていないけど社長という人が結構多くいたので、そのへんはこだわりはなかったですね。

(竹葉) 確かに身近にいるとイメージしやすいですよね。どういった会社に譲受けてほしい、というのがあったんですか?

(馬場様) まったく自分たち同業じゃないほうがいいと思ってました。一緒になったとしても、人数の拡大にしかならないのかなと、数が増えるだけで何にもならないなと思ったんです。M&Aをするからには後継問題を解決して、さらに会社を変えるきっかけにしたいと思っていましたし。

従業員の反応は、思っていたものと違っていた (M&Aの開示)

(竹葉) 開示した時の従業員の皆さまの反応はいかがでしたか?

(馬場氏) 思っていた反応ではなかったですね…。
もっと、「え、何?」「どうなるの?」とかいう反応を期待していたのですが(笑)、「ふーん」という感じで拍子抜けしました。
私としては当事者として色々と従業員のことも含めて考えながら進めていましたし、最終契約書の判子を押したときに、「これで決まったのか…」という感慨深い気持ちや、これで楽になるのか、きつくなっていくのか、どっちになるのかわからない不安もあったので、もっとリアクションしてよ!って思いました(笑)

(竹葉) キーマンの方々の反応はどうでしたか?

(馬場氏) 彼らは、「社長の判断は正しかった」と言ってくれました。社内で社長ができるような人はいなかったですし、直接言ってはなかったけど、いずれどうなるのかなあ、という不安はあったようです。

(竹葉) 2019年9月末にM&Aを実行して、1年半経ちますがどうですか?ご自身の仕事内容ですとか、社内の雰囲気に変化はありましたか?

(馬場氏) 私の仕事は、社長として変わった部分はほとんどないですね。ちょっと中間管理職みたいなことをやる部分が増えたかなあ、という感じです。2つの会社がいかにスムーズに交わっていけるか、というところに時間を使っています。
コロナの影響もあり、本格的に動きだしたのが去年の7月から、5名選抜して親会社であるチェプロさんの開発の仕事に参加させています。チェプロさんから研修に来て頂いて1か月間勉強会をしてもらいました。チェプロさんとは仕事のやり方やコミュニケーションの取り方がだいぶ違うので、その辺は私が間に入ってフォローしていますよ。

(竹葉) その選抜メンバーは馬場様が指名したのですか?社内で募集をかけて?

(馬場氏) 私が選抜しましたね。コミュニケーション能力や自社開発に向いていそうなメンバーです。実は、彼らの現場からの引き上げが結構大変でした。

(竹葉) もともと現場に派遣されていて、それを引き上げて自社開発に、ということですよね?

(馬場氏) そうです。お客様に迷惑がかからないようにするのは当然なのですが、現場に入っているのが長いメンバーが多かったこともありまして、影響がないように。あとは他の残るメンバーにも不安だとか影響が出ないように調整しながらでしたので。M&A後はこの調整が一番大変でしたね。こちらの都合で引き揚げますなんて一番やっちゃいけないですからね。

(竹葉) 今回選抜メンバーに入っていない方でも、自社開発をやりたいという方はいらっしゃいますか?

(馬場氏) いますね。どちらかといえば、自社開発をしたいという人の方が多いんじゃないかな?SES派遣で求人をかけても全然人が来ないんですよね。1月にも募集をかけたんですけれども、全然来ませんでした。
今回、M&Aしたことでゆくゆくは自社開発もやってもらって、と思ってはいます。自社開発の仕事が多くはないので、いつという約束はまだできないですが。

(竹葉) 社員の方々のキャリアアップにもつながりますしね?

(馬場様) そうですね。向いている向いていないもありますが、向いていればキャリアアップには確実になっていきますね。今回の選抜メンバーにとっても、キャリアアップになっていると感じています。

妻と日本全国を旅したい

(竹葉) 50歳くらいから譲渡をお考えだったということですが、65歳くらいで引退というイメージでいらっしゃいますか?

(馬場氏) まあ、65歳くらいまでは働くのかな、と。でも社長としてではないですね。63歳くらいで社長は引き継ぎたいです。私自身、人生は75年と思っていて、そう思うと65歳で完全引退して、10年…早いですね(笑)

(竹葉) 65歳で完全引退して、何をされたいとかございますか?

(馬場氏) 旅行が好きなので、妻と日本全国を旅しようと思ってます。これまで仕事ばかりで妻にあまり楽しい思いをさせてきてこれなかったので…。引退後は一緒に楽しく過ごしていきたいですね。
妻からは、M&A後も変わらず仕事をしているので「何も変わってないね、結局仕事辞めないとね、何も変わらないよね(笑)」という話もしてまして、時間の使い方はM&Aの前後で変わっていないので、引退したら本格的に変わっていくのかなと思います。

M&Aをせっかくしたのだから、楽しく過ごす

(竹葉) 本人を目の前にしてではありますが、日本M&Aセンター、というか私の仕事ぶりはいかがでしたか?(笑)

(馬場氏) 最初あったときはすごく好青年だなと(笑)、あと一番大きかったのが、IT業種のことを良くわかっていたので、業界の共通言語も通じて、その辺はすごくやり易かったです。やはり、業界の慣習を知っているかどうかで大きく変わってくるかと思います。

(竹葉) お手本のようなご回答ありがとうございます。。最後に、M&A後のことが不安に感じているオーナーの方々へアドバイスやメッセージがあればお願いします。

(馬場氏) あくまで私個人の考えでは、M&Aをせっかくしたのだから会社にどう残るかはさておき、「残りの人生を楽しく過ごせるか?」ということを考えた方が良いと思っています。M&Aをやってもその後ずっとその会社に残ったとして、衰えるまで働き続けるのは辛いですよね‥。
お取引先の方たちにM&Aしましたという報告をしたのですが、本当に拍子抜けする程に反応が薄くて、まあ、現場で働く技術者が変わらないというところでIT業界ではあまりM&Aに対しては抵抗がないんじゃないのかな、という気がします。
であれば、後継者の問題を解決して会社が大きく変わっていくきっかけにもなるわけですし、さらに自分も楽しくなっていく、M&Aは、そのためにあるんじゃないかと思います。

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公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツを経て、日本M&Aセンターに入社。IT業界専門のM&Aチームの立上げメンバーとして5年間で1000社以上のIT企業の経営者と接触し、IT業界のM&A業務に注力している。18年は京セラコミュニケーションシステム㈱とAIベンチャーの㈱RistのM&A、21年には(株)SHIFTと(株)VISHのM&A等を手掛ける。

上席課長
IT業界支援室 室長
竹葉 聖