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M&Aレポート

物流企業の企業評価、設備投資の関係

2021.4.13

  • 物流

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物流業界の企業評価法

物流業界で用いられる企業評価は大きく2種類存在しています。

①コストアプローチ法(企業の純資産に着目)
②EBITDA倍率法

①は、企業の純資産を時価替えする作業を行い、それに収益ベースのプレミアム、いわゆる「のれん」を足して計算をします。
例えば、
簿価の純資産:1億円、営業利益:2千万円
の企業があるとします。

この簿価に含まれている資産の中には含み損益があるものがあります。例で言うと、土地や保険の積立金などです。これらを時価替えするとともに、収益力の面では、実態の超過収益というものを算出します。
(超過収益は今回の論点ではないので細かい説明は省きます。参考:超過利益金額=正常利益(「修正後」税引前当期純利益) - 一般的期待利益(時価総資産 × 期待利子率))

算出後、
時価純資産:1.2億円、超過収益:3千万円

となる場合に、現在物流業界では超過収益5~6年分が相場であるため
1.2億円 + 3千万円×6年分=3億円(譲渡対価)

と計算がされます。

②の計算方法は、EBITDAという指標を用いて計算をします。
EBITDAとは「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の略です。税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。
簡易的な計算方法として「営業利益+減価償却費」として表されます。そのため、キャッシュベースの営業利益として考えられます。

EBITDA法では株式価値を事業価値そのものと非事業用の資産、有利子負債を分けて考えます。このうち事業価値がEBITDAで表されます。
例えば
EBITDA:5千万円、非事業用資産:7千万円、有利子負債:2千万円
という企業があったとします。

そうすると、現在EBITDA倍率でも6倍あたりが相場である業界のため
5千万円×6 + 7千万円 + 2千万円 = 3億5千万円(譲渡対価)

という計算になります。

EBITDAと設備投資について

EBITDAは「営業利益+減価償却」と説明しました。物流業界で大きな減価償却が発生する項目として大きいものに「トラックへの投資」があります。そのあたりがEBITDAに反映されてくるため、M&Aではそのあたりを注目します。

 例を出して考えてみます。
①の企業は毎期トラックを購入している企業です。その分減価償却(直近5千万と仮定)が発生します。
②の企業はここ数年設備に投資をしていないという企業です。減価償却費は多くありません。(直近1千万円と仮定)

①、②の企業ともに営業利益で5千万が出ている場合、
①のEBITDAは1億円であるのに対し、②に企業のEBITDAは6千万円となります。②のEBITDAが少ないことから、直近で施設に投資していないことが予測され、①の企業よりも今後施設に投資する必要額が多くなることが予想されるわけです。それはプラスのイメージにはつながりません。
このように、設備投資している額(減価償却費で見れる)は、今後発生する費用の予測にもなるのです。

もちろん、①のEBITDA倍率に有利子負債を足しますので、①の企業の方が、株式価値が上がるという話ではありません。
一方で、この減価償却のタイミングを考え、うまく車両を売買し資産を活用していくような企業もあります。ますます厳しくなる物流業界の規制の中で、トラック売買の重要度は高まっています。
 EBITDAを経営指標として意識している企業が取り入れている手法として、車両売買のタイミングの重要性があります。
減価償却仕切ったタイミングで車両を売却することで高値で売れるとともに高いEBITDAを維持できるのです。いわば車両も資産運用のような形で取り組んでいるスタイルとも言えます。
賃金交渉や、人件費の問題を考えるとともに車両の運用について考慮する方法に注目が集まっています。

トラックの定性的な評価と企業評価の関係

数字で表される設備投資について説明してきましたが、数字では表されない部分ももちろんあります。トラックの整備状況はその企業そのものを映しているという信念を持つ社長もいます。
 
実際に昨年度成約したM&Aでも、決め手は譲渡企業のトラックの状態であった事例があります。
 譲渡側は後継者不在の関西の企業でした。そこに名乗りを上げたのは九州の企業です。拠点拡大を視野に入れM&Aを検討にしていたところ、絶好の位置にあったことから手を挙げました。しかし、譲渡企業のオーナーが希望する価格は、上で紹介したコストアプローチ法やEBITDA法で計算されるような数字よりも高い額でした。
譲渡側としては今まで堅実にやってきた会社は自分の納得する額でなければ手放さない。譲受け側としては、投資回収の計算に見合わない額は出すことが出来ない、となかなかその落としところに悩んでいました。
話が決まったのは、実際に現地の見学をした際です。譲受け側の社長が譲渡企業の車庫を見学した際に、そのトラックのこの上なくきれいに整備された状態に驚き、「この企業とであれば相乗効果もより生めるだろう」ということで、実際の計算額よりも上乗せした、譲渡企業側の希望額に合わせた額で話はまとまりました。
無事成約し、数か月後に譲受け企業を訪れると、社長の読み通り、統合にうまく成功し、想定していた額よりも大きな相乗効果を生み出すことに成功していました。その分投資回収も早めに進みそうというお話をいただきました。
これは数字では計算されないプレミアム「のれん」です。実際のM&Aでは1+1が2でないことがほとんどです。そのため、実際の計算額よりも高い額で、株式のやり取りが行われることが多いのが実際です。

M&AセンターとAzoop社の提携

当社物流業界支援室として、上記の設備投資のパートで挙げたような悩みを物流企業のオーナー様からお聞きし、課題解決に努める中で、この度2021年4月1日付で運送業界全体の効率化に資するサービスを提供する株式会社Azoopと業務提携契約を締結いたしました。Azoop社は運送業界向け車両売買プラットフォームをはじめとしたサービスを展開しています。
 M&Aの増加、DX化が加速し、業界再編が起きている中、新鮮な情報を得難い状況にあるのも事実であり、大手企業と中小企業の間に情報格差が生まれています。「物流業界を良くしたい」という思いをもつ両社は、本課題の解決のために、当社の日本全国にネットワークを有する営業網とM&Aのノウハウと、Azoop社の提供するDX化をサポートする運送業の総合プラットフォーム事業の連携が重要だと考え、本提携に至りました。
日本M&Aセンター業界再編部では、物流業界に特化したチームで、業界再編の支援をしております。引き続き物流業界に寄与することで日本経済に貢献すべく努めて参ります。

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。2019年度全社MVP・全社最高売上を記録。

業界再編部 部長
物流業界支援室 室長
山本 夢人