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M&Aレポート

製造業界のM&A  回顧と展望 (2021年4月)

2021.5.7

  • 製造

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コロナで変わる製造業の成長戦略

周知の通り、2020年は世界の産業・経済の歴史に刻まれることになる「コロナショック」が人々の暮らし・産業構造・経済活動、全てを大きく変えた年だった。

あらゆるビジネスがオンライン化・省人化に向けた取り組みをはじめ、変化できた企業と、そうでない企業との間ではこのたった一年で、結果的に大きな溝ができてしまった。

どのようにコロナショックを切り抜けているのか?

この一年で、数多くの経営者と接する中、目先の運転資金を調達するために補助金の活用、もしくは製造ラインの効率化によるコストカットを追求するなど、あくまで「現状維持」を前提とした方法が精一杯であるという企業も少なくなかった。

その一方で、未曽有の危機を乗り切るため「企業を変革する」という強い意志で、他の企業との連携をダイナミックに進める企業も、大きく増加した年でもあった。

それまでは、M&Aの買収側の相談を頂いた際には、明確な戦略を持たずただ「良い会社があれば買いたいので幅広く検討している」という企業も非常に多かったが、
コロナショック後は逆にそういった企業からの買収の相談は減少した。他方、「EV化を見越して軽量素材に関わる技術をM&Aで獲得したい」等、戦略性を持って買収と向き合っている企業は増加し、その結果、当社が関与したM&Aの件数はコロナショック下においても過去最高の件数を記録することとなった。

中堅・中小企業のオーナー経営者の意識も徐々に変わり始めている。

ひと昔前まで、引退を見据えた60~70代の経営者が「跡継ぎがいない」という理由で譲渡を考え当社の門を叩くというケースが一般的だったが、昨今においては
40代~50代の経営者からの譲渡の相談も非常に増えており、当社成約実績を見ても譲渡オーナーの3割程度が50代以下となっている。

業績が悪くなった会社が増えてきているんじゃないか?

そう思うかもしれないが、そのほとんどが、少なくとも現状はあえて売る必要はない「黒字・財務優良」の製造業だ。

それでも「会社の譲渡」という選択肢と真剣に向き合いたいという経営者の本音は「単独経営に拘って、成長のチャンスを逃すよりは良い会社がいれば、グループ経営で会社のステージアップを図りたい」というものだ。
日本の製造業は、長い年月をかけて特定の業界や顧客に力を注ぎ続けた結果、その実績と信頼をベースに安定経営をしている中堅・中小企業が非常に多く、それらの企業が日本のものづくりを支えている。
「求められた製品を、定められた納期で必ず納める」
当たり前のことの積み重ねが、色褪せない「ジャパンブランド」を作ってきたが、それゆえにある業種・取引先への「依存体質」からなかなか脱却できない企業も非常に多く環境変化にあわせた業態転換が非常に苦手な企業は少なくない。

「単独で変われなければ、他社と手を組むのはどうか」
そう考え、単独経営からM&Aによるグループ経営を目指す多くの経営者はM&A後もグループ全体のバックアップを受けながら、新しいチャレンジを続けている。
成長のために株式を売却することのデメリットも当然ある。
一番は「意思決定の自由度」だ。オーナー経営者個人による自由な意思決定は難しくなり、経営方針においてボードメンバー間で意見の相違や衝突も時にはあるかもしれない。

他方、「経営資源の自由度」は単独経営と比べて、飛躍的に高まる。
グループ全体の力を借りることでダイナミックな設備投資や幅広いネットワークを活用した販路の拡大を図る等、経営の打ち手は大きく広がることになる。
どちらを選択するかはオーナー経営者自身の生きざまにも関わる部分なので、正解・不正解はないが様々な業界・企業においてビジネスモデルの変化が求められる中、後者のグループ経営という選択肢を志向する経営者は、間違いなく年々増えている。

2020年製造業M&Aの振り返り

コロナショックの最中、多くのモノ・情報・サービスの交換が「対面」から「通信」に変わった。

オンラインでのコミュニケーション、ロボットを活用した遠隔操作、諸業務のペーパーレス化等が急速に進む中、それを支える「電子化・自動化」の技術に関わるM&Aが2020年は非常に多かった。

(図1:レコフM&Aデータベースより企業名を引用し日本M&Aセンターが作成)

コロナ環境下におけるスマホ・タブレット等の通信機器の爆発的な普及と、脱炭素&電動化シフトにともなう「車のコンピューター化」の進展
というダブル需要は、世界規模の深刻な半導体供給不足を招いた。加えて、通信機器・省エネカーの浸透に伴いユーザーニーズが多様化することで、求められる技術レベルも急速に高まっていくこととなった。

その結果、国内外のあらゆる半導体・電子部品企業は「量」と「質」両面の強化が至上命題となり、多くの企業が単独でのパワープレイではなく企業間連携(M&A)を通じた経営基盤と技術力の強化を志向した。

PCIホールディングスとソートの提携にように、半導体関連企業の中でハードウェアに強い企業とソフトウェアに強い企業が結びついて付加価値を高める企業もあれば、石炭事業を祖業とする三井松島ホールディングスのように業態転換を図るために最先端の半導体技術の獲得を図るなど、「電子化」の流れの中、業界の枠組みを超えてプレイヤーが変化しており、今後もこの傾向は続くだろう。

もう1つのキーワードが「自動化」だ。自動化・省力化はあらゆる製造業において近年進んできた流れだ。
その背景にある経営課題は「人材不足」であり、企業は「いかに少ない人で付加価値の高い製品を作り続けるか」について知恵を絞り技術を磨いてきた。ロボット化・FA化の流れの中で、システムインテグレーターと呼ばれるライン全体の企画・効率化等を一挙に手掛ける企業が存在感を高め、企画・設計ができる技術者の希少価値に注目する企業は非常に多い。

その最中、2020年のコロナショックにより大手・中小問わず、あらゆるものづくり企業が「省力化」、更には「無人化」への対応を迫られることとなった。

人材派遣業を中心に展開するアウトソーシンググループによるスマートロボティクス(ロボット関連製品開発)のM&A等の象徴的な事例や、ダイヘン(アーク溶接ロボット等)による独ラゾテック(ロボットシステムインテグレーター)の買収等、世界規模でM&Aによる「自動化戦争」が展開された。

製造業の現場の作業やバックヤードの管理業務については、ロボットが行い人的管理は大部分がオンライン(遠隔)でまかなわれるという未来もおそらくそう遠くはない。
コロナショックを引き金に加速する技術革新競争を勝ち抜くためには、会社・業界の枠組みを超えたダイナミックな企業提携が今後も必要になってくるだろう。

M&Aセミナー(「Change」)

第一部「変化を恐れない経営」

講師:日本M&Aセンター 専務執行役員 中村 利江

日本最大級の宅配ポータルサイト 「出前館」 を運営する株式会社出前館のエグゼクティブ・アドバイザー、出前館元会長。

第二部「2021年M&Aトレンド」

講師:日本M&Aセンター 取締役 渡部 恒郎

業界再編M&Aの第一人者。2020年同社最年少で取締役に就任。M&Aの第一人者として、M&Aのプロフェッショナルファームとなる業界再編部を立ち上げる。2020年同社最年少で取締役に就任。

第三部「異端を受け入れる力」

講師:株式会社今治.夢スポーツ 代表取締役会長 岡田 武史

日本の元サッカー選手、サッカー指導者、元サッカー日本代表監督。現在はFC今治運営会社「株式会社今治.夢スポーツ」代表取締役、日本エンタープライズの社外取締役。

京都大学経済学部卒業後、株式会社キーエンスに就職。セールスエンジニアとして製造業の生産ラインの効率化に8年間従事。その後、日本M&Aセンター業種特化事業部 製造業支援室長として中堅・中小製造業の成長戦略・事業承継に係るM&Aの専門としている。

上席課長
製造業界支援室 室長
太田 隼平