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M&Aレポート

建設業界のM&A  回顧と展望 (2021年4月)

2021.5.19

  • 建設・不動産

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建設業界で業界再編が加速している。建設業界にとって、M&Aをどのように活用していくかを過去の事例と共に今後の展望を下記にまとめる。

建設業界の大きな業界の流れ

建設業界を取り巻く業界動向は大きく2つあり、「人手不足」と「市場ニーズの変化」があげられる。
一つ目の「人手不足」の問題についてみてみると、国土交通省が発表している建設労働者人口は2000年から20年間で約180万人減少している(図-1)。実際に2021年1月から4月までに200社以上の経営者とM&Aを含めた戦略会議を実施しているが、「現場で働く従業員の確保が難しくなっている」というお声はよくあがる。同時に建設業界の高齢化は重要な論点である。従業員の高齢化に加えもちろんオーナー自身も年を重ね「後継者不足」についての問題を抱えている。従業員に後継者候補がいない、後継者候補であるご子息自身が継がないという選択をしている、またはオーナー自身が継がせたくないというケースも多い。当社の2020年に成約した建設業譲渡会社の約80%のオーナーは「後継者不足」を理由に譲渡を決断されている。残りの20%は成長戦略、選択と集中といった譲渡理由が続いている。最近は40代と比較的若いオーナー社長が大手の傘下入りを決意し、自社の更なる成長を求めM&Aの選択肢を取るケースが増えているのが特徴的である。

図-1 建設業就業人口の推移  出所:国土交通省

二つ目は総工事売上高に占める維持修繕工事の割合が増加しているという点である。官公庁、民間共にだが、官公庁を見てみると高度経済成長期以降に作られてきた道路・橋梁・トンネル・上下水道などの社会インフラの老朽化が進み、現在全国的に更新する必要がある時代に突入している。国土交通省が公表しているデータに基づくと、公共工事に占める維持修繕の割合は2000年からの17年間で2倍に増加している(図-2)。

図-2 公共工事総売上と維持・修繕工事が占める割合
出所:国土交通省「建設業を取り巻く主な情勢」、e-Statを基に日本M&Aセンターで作成 

建設業M&Aの推移

このような業界の存続を危ぶむ深刻な状況を打破するためにM&Aを活用しヒト、モノ、カネという経営資源や新規商圏の市場を効率的に獲得する建設会社は増加している。これは建設業界が許認可ビジネスであること、建設業独自の前金依存体制という状況も踏まえると、譲受・譲渡双方の立場からみて建設業とM&Aの相性は非常に良いことが背景にある。この結果、建設業界におけるM&Aの成約件数は増加の一途を辿っており、建設業M&A累計実行件数は年々増加、2020年時点では397件(前年比+25%)の成約がある。これは他業種と比較してもトップクラスである。

図-3 建設業M&Aの当社累計成約件数
出所: 日本M&Aセンター作成

受注の川上である総合建設業はどのようにM&Aを活用しているのだろうか

➀中堅・中小総合建設業のM&A戦略

中堅・中小の総合建設業は上述の課題解決と持続的な成長を実現するために積極的にM&Aを活用している。これは施工体制の強化・エリア拡大戦略のための同業種を獲得することから、第二・第三の柱を作るため隣接・異業種を獲得するというM&Aにまで及ぶ。

出所:レコフM&Aデータベースを基に日本M&Aセンターが作成

エリア戦略として受注を取りたい市場の空白地を埋めるため該当地域の総合建設業を営む会社をグループ化し商圏を獲得すること、注力したい工事領域を強化するため特殊技術や取引先を有する会社を獲得すること、既に展開している地域においても隣接業種を獲得することで、支配力の強化を実現している。
前述したような高度経済成長期に施工された様々な構造物の維持修繕工事が急激に増加している状況において、M&Aにより施工体制を整えることで中堅中小の地方総合建設業にとってM&Aは地方創生に貢献するための存在となり、活路のひとつになる可能性も秘めている。
各社共通するのは建設業における深刻な高齢化、労働人口の減少という根本的な問題であり、増加する維持修繕工事への対応が急務となる中で、短時間で経営資源を獲得できるM&A戦略は今や持続的な成長を目指す総合建設業にとっては無くてはならない成長戦略手段となっている。

②大手総合建設業の戦略

大手総合建設業についても触れておく。大手総合建設業は、上述のような地方戦略よりも海外への展開を進めるため海外企業を中心に獲得を続けている。また労働人口の減少に歯止めがかからない状況において、DX戦略は必要不可欠である。この二つの大きな方向に向け既に大手総合建設業は舵を切っている状態で、ここでもM&Aを積極的に活用しているのが実情だ。2021年現在も引き続き設計施工・施工の効率化を目的化としたITやテクノロジー系の企業との資本提携に集中している。

出所:レコフM&Aデータベースを基に日本M&Aセンターが作成

これまでのM&A動向からみて、この動きがこれからも更に拡大すると考えている。今後の総合建設会社のM&A動向としては、➀中堅・中小による業界再編型のM&Aが加速することと同時に、②大手総合建設業においては海外進出や省人化に向けたITやテクノロジー技術の獲得に向けたM&Aが同時並行で加速し、今後更に増加することが予想される。

最後に

建設業界は今、変革の時を迎えている。そして既に建設業の業界再編は始まっている。大手、中堅・中小など企業規模の大小にかかわらず、大きな業界の変化を追い風とするのか、逆風と捉えるかそのカギはM&Aにあると感じている。成長を目指す企業にとって、M&Aは無くてはならない戦略の一つであり、当社M&A仲介会社が果たす責任は大きいと感じている。一人でも多くの皆様の存続と発展に貢献し、社会インフラを担う建設業の一助となるべく尽力していく所存である。

M&Aコンサルタントの紹介

業界再編部 建設業界支援室 中崎裕貴 
同志社大学経済学部卒業。バークレイズ証券にて国内機関投資家、証券会社向けの投資商品の組成と助言業務に従事。その後、マッコーリーキャピタル証券にて国内外の機関投資家向け金融商品の投資戦略立案と提案業務に携わった後、日本M&Aセンターに入社。以降、業界再編部にて建設業界のM&A成約に取り組む。