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M&Aレポート

食品製造業M&Aにおける工場のチェックポイントと解決策

2021.5.19

  • 食品

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2020年は、コロナ禍における巣籠り需要の大幅な伸長により、食品製造業の業績は好調で、それに合わせて、菓子類の製造販売業や総菜製造業などのM&Aが、非常に活発に実施された1年でした。

概要

【食品製造業M&Aの件数推移】

Sources:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成
公表日ベース

【業態別】

出典:株式会社日本M&Aセンター 食品製造業 譲渡企業累計データ

代表的な事例

① 3月【売】ポテトかいつか×【買】カルビー 
② 3月【売】鎌倉ニュージャーマン×【買】モロゾフ
③ 3月【売】香り芽本舗×【買】ヨシムラ・フード・HD
④ 5月【売】コスミックダイニング×【買】アークランドサービスホールディングス
⑤ 6月【売】浅野屋×【買】日本みらいキャピタル
⑥ 7月【売】豚まんの店幸崎×【買】クリエイツ
⑦ 9月【売】松山製菓×【買】西原商会
⑧ 10月【売】トリアノン洋菓子店×【買】21LADY
⑨ 12月【売】スカイフーズ×【買】竹下製菓
⑩ 12月【売】ファミール製菓×【買】鈴木栄光堂

2021年も、2度の緊急事態宣言の発令や、ワクチン接種の遅れなどにより、引き続き食品製造業のM&Aが増加していくことが想定されます。

そのような状況下において、食品製造業M&Aの一番のポイントと言える工場について、工場そのものが様々な問題を抱えており、ディールのブレイクポイントとなるケースが非常に多くあります。本コラムでは、想定されうるポイントと、それらの対応策について、これまで経験したディールを基に、記載して行きます。

【問題点①】 建物の建築確認申請がそもそもなされていない

事実:建物の建築時期が40年以上前の物であったりするケースにおいて、建物の建築確認申請がそもそも実施されていない場合があります。そのような建物は、日本国内においては非常に多く存在しており、築年数が古い建物であれば、珍しいケースではありません。また、年1回実施される消防点検なども、現状の内部の仕様が問題ない場合、指摘されることもないため、現オーナーも、特段問題意識を持たず使い続けているケースがあります。

解決策:基本的に、このような建物は違法建築と言わざるを得ず、また、建築確認申請は、後から取得し直すということも、そのような制度も存在しないため、建物を取り壊して再建築しない以上、適法な建物とすることはできません。また、既存の建物に増築、大規模な改修工事などをすれば、使い続けることは可能で後々行政から指導を受けるようなことも、現実的には無いと言えます。そのため、M&Aの譲受企業は、そもそも違法状態を適法にすることは出来なということを理解した上で、最低限、建蔽率や容積率に違反がないことを確認し、1級建築士などの専門家による、当該建物を使い続けることについて特段問題がないことの確認書などを徴求することで、最低限のリスクを回避することが出来ます。

【問題点②】 建築確認申請時の図面と現状の仕様が大きく違う、検査済証が発行されていない

事実:建築確認申請を行った際の図面では、2つある建物はそれぞれ独立していて、建物の中で繋がっていないものとなっていたが、その後、工場のラインや製造工程の効率化のため、壁を壊して一つの建物にしており、それにより500㎡超の建物になってしまい、建物の耐火基準を満たさない建物になってしまった。

解決策:建築確認申請時の図面と現状が異なるため、当然違法建築となりますが、このような場合でも、通常使い続ける分には問題は無いため、経営者も、問題意識を持っていないケースが多くあります。
上記のような場合、改めて一体化した建物に外壁を付けて別個の建物にするか、耐火基準を満たす仕様に改修する工事を実施するかの2つの選択肢が想定されます。コスト的には、後者の方が安価に済むことが予想されますが、本質的な改善にはならないため、費用をかけて、建築確認申請図と同様の間取りに改修工事を行うことをお薦めします。

【問題点③】 HACCPが未取得、又は、取得するのに相当の費用をかける必要がある

事実:昨今の食品工場の運営においては、HACCPの取得は、工場規模の大小を問わず、もはや当たり前の時代に入って来ました。そのため、買い手企業としても、株式譲渡時点で万が一HACCPが未取得であっても、譲渡完了後には必ず取得することが想定されます。但し、築30年以上の工場建築物であれば、そもそもHACCPが取得出来る仕様になっていなかったり、取得するための改修工事で、多額の費用を要するケースが考えられます。

解決策:HACCPを取得するのに必要なコストを株価から差し引く交渉をする必要があります。但し、全額売主に負担させることは、なかなか許容しがたいというケースも想定されます。実際に工事を行うことで、建物そのものの資産価値も向上しますので、必要コストとその後の資産価値の増加分を勘案し、金額の折合いを付ける必要があります。

【問題点④】 工場の建物や底地をオーナー自身が保有しており、相場より非常に安い

事実:工場底地をオーナー個人が保有しており、地代は相場の20分の1程度を会社から徴求していた。M&Aが完了した後、オーナーは対会社としては第三者の地主という立場になるため、相応の家賃の支払いを希望していた。

解決策:譲渡の対象となる対象企業の収益力と株価の兼ね合いにもなりますが、基本的には、家賃の増額分による営業利益の年間減少金額を、向こう数年間分の株価から控除するという方法を取る以外に、解決策はないと考えられます。もちろん、家賃設定は当事者間で自由に決められる性質のものではあるので、必ずしも相場の家賃を取る必要はなく、一旦株式譲渡金額を高くして税金を抑えるか、中長期的に安定した収入を確保するか、オーナーが選択する場面とも言えます。

青山学院大学法学部卒業後、埼玉りそな銀行にて法人営業を経て2015年に日本M&Aセンターに入社。食品業界を専門として製造業、小売業、外食業などのM&Aに取り組む。17年は丸亀製麺を展開するトリドールHDと「晩杯屋」のアクティブソース、「ラー麺ずんどう屋」を展開するZUNDのM&Aを手掛けた。

課長
食品業界支援室 室長
江藤 恭輔