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M&Aレポート

九州の調剤薬局M&A事情

2021.6.3

  • 調剤薬局

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日本M&Aセンター調剤薬局支援室の原佑輔と申します。
当コラムは株式会社日本M&Aセンターで調剤薬局を専門としている調剤薬局支援室のメンバーが業界についての分析や最新情報などを執筆しております。
今回は、近年調剤薬局M&Aが最も盛んな九州地区におけるM&A動向を解説いたします。

調剤薬局M&Aが最も盛んなエリア

いま、調剤薬局M&Aにおいて九州は非常に注目されています。
2013年のトータルメディカルサービス(福岡)のM&Aを皮切りに、日本における調剤薬局M&A件数は爆発的に増加しました。2019年には永冨調剤薬局(大分)、ナチュラルライフ(佐賀)が大手企業との資本提携を選択しました。記憶に新しいところでは2020年のJR九州ドラッグイレブンなど、県を代表するというよりも九州、西日本を代表する中堅調剤薬局チェーン各社が大手調剤・ドラッグストアとの資本提携の道を選択しています。

大手調剤薬局チェーンの本部機能は東京

なぜ九州でこれほど調剤薬局M&Aが盛んなのでしょうか。
いくつか理由は考えられますが、一番大きな理由は『譲渡オーナーがそのまま代表として継続し易い環境だったから』だと思います。

みなさまご存じの通り、調剤薬局大手の企業はすべて東京に本部機能があります。東京から遠い九州エリアを管理するのは非常に困難です。そういった状況と親和性が高かったのがM&Aによる資本提携でした。

資本提携後も譲渡オーナーは代表取締役を継続する事例が多い

M&A後、譲渡オーナーに代表を継続してもらえれば、東京の本部から管理をするためのマネジメント層の人間を送る必要がなく、譲受け企業側としてもメリットが高く、また、譲渡オーナー側としても自身で比較的自由に経営を続けながら、事業承継問題や人出不足の問題を解決することができます。

トータルメディカルサービスの大野社長は大手調剤薬局チェーンであるメディカルシステムネットワークと資本提携を開始してから8年が経過する今でも代表取締役を継続しています。2年前に大手企業と資本提携をスタートさせた永冨調剤の永冨社長も代表取締役を継続しています。重ねて、ご子息であられる永冨専務は資本提携後、すぐに親会社のメディカルシステムネットワークの本部で全国の薬局運営支援を行う部門に所属し、多くの経験を得られたと聞いております。そしてその後、2021年4月に同じメディカルシステムネットワークの傘下であるトータルメディカルサービスの代表取締役専務に就任されました。ご自身が専務を務める大分の永冨調剤のマネジメントに加え、トータルメディカルサービスでも専務として福岡もマネジメントすることにより、永冨専務は九州全体の将来を託されたように見受けられます。資本提携をしなければ、このような形で活躍の場が広がることはなかったと思います。

整理しますと、『今まで通り経営を続けつつ、大手企業の力を使い各種経営課題を解決したい譲渡オーナー』と『九州エリアで店舗網を拡大させたいものの、管理をするための地理的負担を軽減させたい譲受け企業』の間でお互いのニーズが合致しているのが九州における調剤薬局M&Aの特徴であり、譲渡企業・譲受け企業ともにM&Aニーズが高い理由であるように感じます。また、資本提携後に高い相乗効果が生まれ、うまくいっている事例が多いというのも、M&Aが盛んな理由のひとつかもしれません。

10店舗以下の調剤薬局運営企業では適正な年収での人材獲得が難しい

中堅企業によるM&Aが増えた結果、1-10店舗を展開している調剤薬局運営会社からの相談も九州エリアは増加しています。

調剤報酬のマイナス改定、薬価差益の減少などから事業として生み出すことができる利益は年々減少しています。今までは薬剤師不足が深刻なエリアでも福岡市での年収相場から10-20%ほど高い年収額を提示すれば薬剤師は確保できました。しかしこれからはそういった対応は難しくなるでしょう。それだけの人件費の負担ができる時代は終わりを告げようとしているからです。

一度上げてしまった年収は下げるのが困難ですから、今まで「後継者不在」「人手不足」「質の高い医療を提供したい」などであったM&Aによる資本提携理由が「財務が厳しい」「賞与が払えない」といった理由に変わっていくことが予想されます。

M&Aのタイミングで変わる譲渡対価

もちろん、財務的にポジティブな状況によるM&Aなのか財務的にネガティブな状況でのM&Aなのかで株式譲渡対価は全く変わってきます。

現時点で利益を出せる体制であれば1億円での譲渡が可能だった会社が、2回の調剤報酬改定と複数回の薬価改定を経た4年後に利益を生み出すのが難しい状況となれば、会社の譲渡額は0円に近いものになってしまいます。

3年前に九州エリアで複数の調剤薬局を運営するとある経営者の方から、M&Aによる株式譲渡のご相談を頂きました。調剤報酬の改定、薬価の改定から市況は悪くなる可能性が高く、できるだけ早く株式譲渡し、代表取締役として継続勤務することを提案しましたが、当時その経営者の方は50歳代後半だったため、60歳になってから株式を譲渡して引退をしようという意思決定をなさいました。その時の株式譲渡の金額は約5億円でした。

今年、実際に60歳になり、その経営者の方から譲渡に向けて進めたいということで連絡を頂きました。コロナも収まる気配もないので、早めに進めたいということでした。
すぐに再度譲受け候補企業に株式譲渡の提案を致しましたが、株式譲渡の金額は3年前に提示された額の半分以下となっていました。

こちらの企業の場合、集中率が減算対象となる85%だったため、大手企業が運営するとなると、年間の技術料が数千万単位で減ってしまうことが理由でした。

どれだけ準備をしたかでM&Aの成否は決まる

先ほどの例のように、タイミングで株式譲渡対価は数千万、数億円単位で変わってきます。何をすれば株式譲渡対価は高くできるのか、逆にどういった内容だと株式譲渡対価は下がってしまうのか。譲渡を決めてから準備をしても、最高のM&Aを実行させることはなかなか難しいです。

最高のM&Aを実現させるためには、最高の準備をしておく必要があると思います。当社では「今であれば大手企業でどこか資本提携に興味を持つのか」「M&Aで株式を譲渡するといくらになるのか」などを定期的に確認することを推奨しております。

譲渡対価の算出

準備とはいえ、何をすればいいのかわかる方はほとんどいらっしゃらないと思います。多くの人にとってM&Aは一度だけのことだからです。

・何をすれば譲渡対価を上げることができるのか
・10年後に譲渡を想定する場合、今すべきことは何か
・自社に一番合う相手はどこなのか
・薬剤師の子供に継がせたいけど業界の先行きを考えると不安だ
・譲渡対価はいくらが適正なのか
・手数料はいくらかかるのか
・今いる社員たちの給料、賞与は下がってしまうのか

など、たくさんの疑問があるかと思います。ひとつひとつを自分で調べるのは非常に時間がかかりますし、大変です。当社は東証一部に上場しており、また、銀行や会計事務所を始めとする全国の提携先と連携しながらM&Aを行っております。多くの提携先があるからこそ、お客様には最高の価値を提供しなければなりません。

経営者のみなさまのもとには多くのDMやファックスなどが送られてきているかと思いますが、ぜひ一度当社にもご相談にいらっしゃっていただければと思います。

また、会社の価値の算出についても無料でお手伝いさせて頂いております。コンサルタントが資料を受領させて頂いてから1-2週間ほどで診断結果をお伝えできますのでお気軽にご連絡を頂ければと思います。

コンサルタント紹介

業界再編部 調剤薬局業界支援室ディールマネージャー 原 佑輔  
東京理科大学卒業後、コンサルティング会社にてPEファンドや大手企業を中心とした顧客の収益改善に貢献した後、日本M&Aセンターに入社。入社以来、調剤薬局業界を専門に、M&Aを活用した事業の発展・存続のための支援を行う。西日本エリアの調剤薬局を担当している。