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M&Aレポート

上場企業のM&A戦略
Vol. 1 SBSホールディングス株式会社

2021.7.28

  • 物流

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2月19日、2020年12月期のSBSホールディングスの決算説明会が行われました。

1987年に設立し、一代でトラック運送業界の売上高上位10社に入る位置へと上り詰めた。同社はM&Aを成長戦略の軸にして進化を続けています。上場時200億の売上高であった同社は15年で、中堅企業を脱し、業界の真ん中で流れを作る側へと回りました。
中堅企業が、その時代を創れることを証明したともいえる実績であります。

本コラムでは、SBSグループの歩みを同社決算説明資料から、M&Aと戦略を併せて見ていきます。また、本コラムにおけるM&Aとは、広義のM&Aであり、株式など資本異動を含む提携のことを指します。

大きく4分類されるSBSのM&A戦略

SBSグループの今日までのM&A戦略を大きく分類すると以下の4つに分けられます。

(SBSグループ決算説明資料より日本M&Aセンター作成)

①2004~2007 「上場後の急成長期間」

 この時期でSBSはM&Aを21件実施しています。売上高としては200億円から1000億円への増加を果たしました。上場から規模を拡大し、事業領域についても新しいものを取り入れていったのです。PMIの仕方としては、対象会社の顧客見直し、新規営業への注力と既存事業拡充の投資の2軸です。

②2007~2010 「グループ体制固めと事業の選択と集中」

この時期においてはM&Aの件数は減少、さらに、数件の譲渡を実施しました。グループとしての体制を固め、事業の選択と集中を実施しました。SBS上場時にメイン事業であったメーリングサービスのSBSポストウェイもこの時期に切り離しています。

③2010~2016 「海外展開」

 2010年から海外案件のM&Aを実施しました。海外現地法人の立ち上げも実施しました。しかし、インドのTranspole社のM&Aが上手くいかなかったことをきっかけに遠ざかります。

④2017~ 「飛翔」

 M&Aでの体制が格段に整います。ファンドを立ち上げ、譲受主体を増加させたと同時にPMIの在り方についても、見直し、その幅を広げました。SBSグループ全体としての、「融合」により相乗効果を生み出しやすい体制を築き、さらに投資に積極的になっています。

以下、詳しくその道のりを見ていきます。

2004~2007 「上場後の急成長期間」

同社(当時は株式会社エスビーエス)は、2003年12月にジャスダック市場へと上場を果たしました。設立から18年のことです。

初値で時価総額3,205百万円を記録し、ジャスダック市場入りをしました。
また、当時のメインの事業内容はメーリングサービス事業であり、2番目の事業として3PL事業を掲げていました。

○2004年12月期(第19期) 売上45,124百万円
M&A 10社 (雪印物流株式会社 買収他)

M&Aの積極展開を経営戦略に掲げた上場1期目は、10社のM&Aを実施しました。後にSBSグループとしては、メーカーの子会社切り離しのM&Aを数件実施しますが、その第1回目となる雪印物流の買収を実施しました(雪印乳業の子会社)。上場1期目の物流企業の買収は業界に大きな衝撃を与えました。90.22%の株式の取得で、買収金額は30億円でした。
参考までにSBSの財務状況を想像するために、2003年12月期のSBS社の財務状況を見てみると、売上高193億円、総資産55億円、自己資本16億円、現金同等物19億円です。上場企業であるとはいえ、30億円の投資は軽いものとは言えないと思われます。この買収はM&Aを主軸にするという決断のもとに行われた1件であり、その意味合いは大きいのです。

また、当時の経営戦略(2004年の決算説明会)では、以下の4つを経営方針として挙げていました。
①グループ連結売上1000億円
 経常利益1.5%→3%への向上
②クライアントのリクエストには必ず応える意識の徹底
③強烈な営業力の展開とグループシナジーの追及
④M&Aの積極展開とグループ内インフラ整備の推進

グループ売上の確保と、その拡大の中での姿勢についての4軸です。M&Aはインフラ整備としての位置づけとして経営方針4軸の一つでありました。

○2005年12月期(第20期) 売上89,319百万円
M&A 9件(東急ロジスティック 買収他)

東急ロジスティックの買収は東急の子会社のTOBです。上場後大手子会社切り離しM&Aについて2件目となり、94.93%の株式取得に成功しました。本件の買収総額は156億6500万円となり、プレミアムは約30%でありました。
 
2年続けての大手物流子会社の切り離しM&Aであります。
本件の統合の方法について、2005年12月期の決算説明会資料において説明がなされている。なお、同説明会資料は4つの題目で構成されており、その1つに「ポストM&A及び事業戦略についての説明」という欄を加えていることからもM&Aを主戦略に置いているということが分かります。
まず、当時のSBSにおけるM&Aの位置付けは以下でありました。

①事業インフラプロバイダーを目指す上でのM&A
②ターンアラウンドの実績の積み重ね

これは、ある特定の部分の強化というよりは、全体としての基盤を大きくするためのM&A戦略と見受けられます。
そして、PMI(M&A後の統合)の部分についてです。

まず、雪印物流の主な課題は雪印グループ関連会社依存の経営体制でありました。売り上げ環境は厳しい環境で推移、ただ一方で協力運送会社への車両などのリース事業を行うというユニークな側面も持ち合わせていました。
上記課題に対し、まずは新規顧客開拓を実施しました。その結果、スイートガーデン社の物流業務を一括受注することに成功し事業部の強化を図りました。また、それに伴いセンター共同配送事業を強化しました。そして、ユニークな側面として持ち合わせていたリース事業については事業部を立ち上げ、一つの柱として伸ばしていくことに決定し、次年度の24億円の投資を実行することに決めました。

続いて東急ロジについて、こちらの物流事業は安定的な業績で推移出来ていました。利益構造としては不動産賃貸業からの比率が高い状況でありました。
これに対し、新規顧客の開拓(既存顧客での売り上げ安定推移のために新規顧客の比率が少なめ)、不動産部の新設等を実施しました。

上2件のPMIにおいて共通しているのは、

①顧客開拓、既存の売上の見直し
②特徴的な部分のさらなる強化

です。

物流事業としてのポテンシャルを最大限生かせる顧客を確保する営業力と、元々対象会社が持ち合わせていた特徴的な事業にしっかりと投資をして伸ばしていくことで、統合をうまく図っていきました。

○2006年12月期(第21期) 売上142,644百万円  
M&A2社(全通、TLロジコム)

   

2007~2010 「グループ体制固めと事業の選択と集中」

○2007年12月期(第22期) 売上147,098百万円  
M&A1件(株式会社ダックの譲渡)

○2008年12月期(第23期) 売上139,406百万円

○2009年12月期(第24期) 売上115,711百万円  
SBSポストウェイの譲渡

2007年~2010年までの4年間、M&A件数は減少しましたが、その中身をみていくと、同社の戦略が見えてきます。2007年、2009年のM&Aは自身の事業の切り離しのM&Aです。切り離した子会社である株式会社ダックは引っ越し事業、SBSポストウェイはメーリングサービスの事業です。選択と集中型のM&Aであり、2006年までのM&Aで築いた地盤を固めるための手段であったのでしょう。さらに、メーリングサービス事業は上場当初、メイン事業として行っていた企業であり、この部門の譲渡というのは同社にとって今後の方針の大きな決断であったことが見て取れます。
 この後、SBSグループは世界へとそのビジネスを広げていきます。

2010~2016 「海外展開」

○2010年12月期(第25期) 売上119,824百万円  
M&A2件(ビクターロジ買収、エイシーシステムコーポ買収)

リーマンショックもあり、M&Aの件数も減少していたが、2010年に電機メーカーの物流子会社を譲り受けます。ビクターロジは日本ビクターの物流子会社です。なお、同社はJVCの傘下です。2社に共通しているのは、国際物流に通じている点にあります。エイシーシステムは輸出通関業務の専業企業であり、アパレル・靴関係に高い輸入ノウハウを持ち合わせていました。
第25期のこの2件のM&AはSBSグループが国際物流推進へ注力を始めた象徴であると言えるのではないでしょうか。2011年からの経営目標として同年に発表した4つの戦略にも海外戦略が含まれています。

○2011年12月期(第26期) 売上121,148百万円  
M&A2件(日本レコードセンター、Atlas Logistics Pvt. Ltd.)

○2012年12月期(第27期) 売上127,935百万円

東証二部への上場。それに伴い、過去M&Aにより譲り受けた8社の社名にSBSを冠につけた社名へ変更。また、トラックや制服デザインについても一新。

○2013年12月期(第28期) 売上132,205百万円

東証一部への上場。SBSを冠にした社名は14社に。
同期に掲げた中期業績目標(2014~2017)において、自立成長とM&Aでの拡大の2軸を掲げています。2017年12月期での売上2000億円(650億円増)を目標に掲げ、そのうちの200億円を自立成長、450億円をM&Aでの成長と位置付けました。

○2014年12月期(第29期) 売上141,535百万円
M&A 1件 (Transpole社)

インドの国際物流業者をM&Aで譲受け。対象会社は空路、海路に加え、鉄道を活用できるフォワーダー。欧州と中国を結ぶ鉄道輸送網は、ロシアや中央アジアを経由し、フルーツから自動車部品まで、週4便の輸送が可能な物流企業でありました。
同社のPMIとして、トレードラインの拡大(インドー中国、中国―欧州、インドーASEAN)を掲げました。

○2015年12月期(第30期) 売上157,996百万円

Transpole社の株式譲渡
債権回収が困難であり、再建が厳しいと判断し株式の譲渡を決定。

○2016年12月期(第31期) 売上149,054百万円

  

2017~ 「飛翔」

○2017年12月期(第32期) 売上152,870百万円

○2018年12月期(第33期) 売上203,516百万円  
M&A1件 リコーロジスティクス

リコーロジスティクスのM&Aはメーカーの切り離しM&Aである。リコーロジは国内外で3PL事業を展開している企業であり、66.6%を18,300百万円での譲受けとなりました。
 また、PMIについては、

①香港のオフィスを統合
②SBSタイ法人でのフォワーディング事業統合
③SBSロジコムとの倉庫共同運営

などを実施しています。
上場直後の切り離しM&Aの譲受けの際は、

①顧客開拓、既存の売上の見直し
②特徴的な部分のさらなる強化

であったため、PMIの手法も変化したと言えるのではないでしょうか。
それぞれの領域、分野を伸ばすことをメインとしていたPMIの方法は、既存事業との統合で相乗効果を生み出す方針へと変化しました。SBSグループの総合力の向上に伴う、実現が可能なPMIの幅が広がった結果でしょう。
また、同年のSBSグループキーワードとして「融合」を掲げている。PMIについてはまさにこの部分が体現されています。

○2019年12月期(第34期) 売上255,548百万円  
M&A2件(京葉自動車教習所、姉崎自動車教習所)

教習所を2件譲り受けた同年、SBSグループの新たな成長戦略を3本の柱で掲げました。

①物流インフラの強化
②M&A
③LT・IT科学技術(LT:logistics technology)

M&Aの戦略として、この年に立ち上げたのが「日本物流未来ファンド」です。日本政策投資銀行との共同出資で立ち上げました。中小企業の物流のM&Aについて、同社を譲受け主体として2.3年後にSBSグループの連結子会社へとEXITするというスキームです。

○2020年12月期(第35期) 売上257,192百万円  
M&A4件(東芝ロジ他)

売上893億円の東芝ロジスティクス(東芝物流子会社)の株式66.6%を20,130百万円で譲り受けました。同社は4PL企業として委託元の企画推進までを担う事業を展開していました。
また、小規模のM&Aも並行して実施。うち1件は日本物流未来ファンドでの譲受けとしています。

まとめ

売上200億円での上場というステージ変更、そこからの更なる規模拡大のために、まずは件数を追ったM&A戦略。そこから体制を固め、さらに次のステージへ。M&Aを主軸に、業界の動向に合わせた戦略と、現状の体制にあったPMIの組み立て方で拡大ししたSBSグループの道のりは、M&Aが増加する物流業界の中で成功事例として参考にされていくべきではないでしょうか。
また、最近ではファンドを用いた譲受体制も整えており、業界そのものの変革の仕組みづくりを行い、業界再編をけん引しています。M&Aを活用した業界の改革であり、このような企業を中心にますます物流業界の業界再編は加速していくではないでしょうか。
これは売上200億円の企業による15年での出来事であり、この可能性は中堅企業であれば、どの企業にも可能性のあることであります。

コンサルタント紹介








業界再編部 物流業界支援室 宮川 智安
群馬県出身。実家は七代続く水産業の卸売。早稲田大学卒業。大学時代は競走部に所属(400mで全国IH準決勝)。
2020年新卒で日本M&Aセンターに入社し、全国の物流業界を専門にM&A業務に取り組む。