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M&Aレポート

食品卸売業を営む地域名士企業が譲渡を決断するに至った理由

2021.8.11

  • 食品

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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の図斉です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は、2021年6月に成約に至った食品卸売企業のM&Aについて執筆させて頂きます。

地域の名士企業が譲渡の決断に至った背景

今回の譲渡企業様は、関東で売上 数十億の食品卸売業を営む企業でございました。創業は明治時代からとなり、地域ではまさに名士と呼ばれる企業様でございました。

当社との接点は、2014年でした。当時は買収を検討しており、その勉強のため、当社のセミナーに参加をしておりました。その後は買収ニーズに合った案件がなく、接点は薄れておりましたが、2020年8月に近隣での近隣業種の譲渡案件があり、ご面談の機会をいただきました。買収提案のための面談で、案件の紹介をしようとしたところ、社長から『譲渡を検討している。すでに他社2社との提携仲介契約を締結している』という旨を伺いました。理由としては、主に3点ありました。

①後継者不在
②社長の体調不良による早期引退希望
③コロナによる業績悪化

このような状況下であったため、スピーディーなお相手探しを希望されており、譲受企業を探しておりました。
すでに他社2社が提携仲介契約を締結していましたが、日本M&Aセンターも探していただけないかという依頼をいただきました。当社では通常『専任契約』を前提としており、かつ他社2社は着手金なしという条件でしたが、当社は案件の質を担保するため、着手金ありという形にしております。その中で、当社の譲受候補企業先や企業評価の中身を評価いただき、着手金ありという形にもかかわらず、ご契約をいただきました。

提携仲介契約における『専任契約』『非専任契約』のメリット・デメリット

企業の譲渡を希望される場合、M&A仲介会社と契約するのが、『提携仲介契約』となります。その際、当社に限らずどのM&A仲介会社も『専任契約』を推奨しております。この『専任契約』というのは、契約したM&A仲介会社のみでM&Aを進めるという内容になります。譲渡企業様からすると、M&A仲介会社1社だけに依頼することは、M&A仲介会社の働きぶりによっては、お相手探しに難航するリスクや、『非専任契約』のほうが、よりよいお相手を見つけることができるのではないかと考えられるかと思います。

『非専任契約』の場合、複数社とのM&A仲介会社との提携仲介契約が可能ではありますが、情報の出所が多くなるため、情報漏洩のリスクや、同一企業に対して複数のM&A仲介会社からの提案が起こり、『あの企業は売り急いでいる』といった見方をされ、株価の評価が低くなるというケースもございます。

そのため、M&A仲介会社では、上記のようなリスクや最大限の株価評価をいただくためにも『専任契約』を推奨しております。仮に『専任契約』を締結したM&A仲介会社でのお相手探しに難航している場合は、その仲介会社との『専任契約』を解除し、新たな仲介会社との『専任契約』も可能でございます。

本件では、我々がお伺いしたタイミングで、すでに2社との提携仲介契約を締結されており、『非専任契約』という形での契約をしましたが、結果として、日本M&Aセンターから提示した譲受企業が一番高い株価となり、成約まで至りました。M&A仲介会社を検討される際は、『専任契約』で、より多くの企業との接点を持っている仲介会社のほうが、満足度の高いM&Aを実現できるかと思います。

名士企業に多い後継者不在のパターン

今回の譲渡理由は、後継者不在と上記で記載をさせていただきましたが、具体的には、社長の娘様が医学部であり、将来は医者を目指すというものでした。娘婿に嫁がせて、その婿に社長を引き継ぐという選択肢もありましたが、娘婿が会社を引き継いだ場合、娘様も会社の経営には携わらないわけにもいかず、結果として医者という道から外れなければなりません。そのため、第三者に経営権を譲渡することで、娘様には安心して医者の道を歩ませるというものでした。

地元名士企業での後継者不在で多いのが、今回のパターンです。地元名士企業様は、金銭的に恵まれているケースが多く、そのご子息の方は、当然ながら幼いころから英才教育が可能となり、都市圏の有力大学や医学部に進まれて、大手企業に就職、役員への出世コースを歩まれる。今回のような医者になるケースも非常に多いです。もちろん、その後戻ってくるケースもありますが、ご子息の意思確認は必要となります。

本件では、社長ご夫妻が娘様自身にやりたいことへの道へ進ませてあげたいという想いと社長のご体調の問題もあり、早い段階での譲渡相談・決断ではありましたが、ご子息がすでに他社へ進まれている場合は、引き継ぐ意思の有無を早い段階で確認するべきかと思います。

地域の有力企業でも業態変化が必要な時代に

今回の譲渡企業様は、上述の通り食品卸売数十億の売上を誇っておりました。そのような企業様でも、近年は利益率が年々低下しており、その中でのコロナ禍で経営にかなり苦戦を強いられておりました。前回のコラムの通り、食品卸売業はビジネスを根本的に見直さざるをえない状況になっております。一方で、卸売業が持つ取引先や物流面は、M&Aを検討する譲受企業にとってもシナジーを見出しやすい業態となります。

本件でも、コロナ禍で厳しい経営状況にもかからず、複数の譲受先企業が候補先として挙がりました。結果として、特定の食品商材で業界シェアトップの企業様との資本提携となりました。今後譲渡企業様は、譲受企業様の一拠点として活かされながら、本業の改革に取り組んでいる最中です。社長も、従業員の将来的な幸せを考えたときに、同業と手を組むよりもこのような企業と提携したほうがよいのではないかとの考えをもとに複数の候補先の中からお選びいただきました。

変化が求められる時代の中で、中堅・中小企業は自社単独だけでの変革も相応の資金力がないと厳しい状況です。M&Aという選択は、ネガティブな選択ではなく、自社の存続と成長を目指せる経営の選択肢です。少しでも経営の選択肢を増やしたい、どのような会社が自社に関心を持つのか、もしご興味ございましたら、一度ご相談ください。


いかがでしたでしょうか?
2週間に1回に渡って今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
次回のコラムは食品業界支援室 江藤よりお送りいたします。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。

買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

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執筆者プロフィール



株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品支援室 図斉 亮介
Mail:zusai@nihon-ma.co.jp
TEL:070-7796-3550

埼玉県生まれ中央大学商学部卒業後、大手証券会社にて資産運用コンサルティングに従事。また、㈱マイナビにて、人材領域における法人営業・マネジャーを経験。
その後、㈱日本М&Aセンターに入社。外食・食品業界専門チームにて、食品製造企業を中心に企業の存続と発展に向けたМ&A支援に携わる。