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M&Aレポート

食品卸売企業の譲受メリットと買収監査時のポイント

2021.11.17

  • 食品

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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の図斉です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は、食品卸売業の譲受メリットと買収監査時のポイントについて執筆させて頂きます。

食品卸売業界のコロナによる影響

食品卸売業界は、食品業界の中でも外食業界と同様、コロナの影響を受けた業界です。食品卸売の取引先は、外食やホテル等の観光業関係の取引先も多く、それらの売上の縮小がそのまま打撃を受けた形となっております。

日本M&Aセンターにも、コロナによる経営状況の悪化からご相談をいただくケースも増えてきている状況です。特に中小の食品卸売業は大手の食品卸売業の価格競争に巻き込まれ、取引先の剥離も起きている状況となっています。これは、これまで中小の食品卸売業は地元企業との密なやりとりに小ロットの対応を行ってきたことにより、取引先となってきましたが、大手食品卸売企業がこれまで対応してこなかったような小規模の取引先にも、営業をかけるようになり、価格競争が生まれているためです。また、長い取引先であって、その取引先の売上状況が芳しくなく、少しでも利益を出さざるを得ないため、どうしても価格が安い卸売企業と取引するという流れとなっています。

このように、食品卸売業界はこれまで以上に価格競争が生まれると想定され、中小の食品卸売企業は、大手企業のパートナーとして経営していくことが必要な時代になってくるかと思います。

食品卸売業の譲渡企業が高い評価を得られるケース

これまで、当サイトのコラムでも度々食品卸売業界の市場動向について(2021.7.28公開分)は、記事をあげさせていただきましたが、西原商会を中心とした、食品卸売業界がどのように譲受企業を検討していくべきかという内容でした。今回は食品卸売業の譲渡企業が高い評価を得られるケースをまとめます。
食品卸売企業が高い評価を得られるケースは主に下記3点となります。

①希少な仕入先を有している
食品卸売業において、希少な仕入先を有している点は譲受企業にとっても、非常に評価されるポイントとなります。譲受企業がこれまで複数の商社を通して、手に入らなかった商材の直仕入が可能となれば、譲受企業の利益率は向上していきます。また、譲渡企業にとっても、譲受企業の販路を活かすことにより、さらなる売上増加を目指すことが可能となります。

②地域の有力な企業の取引
地域の有力な企業との取引は、長年のネットワークや交友関係によるものが非常に大きく、参入障壁が非常に高くなっています。以前のコラム(食品卸売業を営む地域名士企業が譲渡を決断するに至った理由/2021.8.11公開分)で挙げさせていただいた譲渡企業も3代に続く某大手食肉加工企業との強固な関係を築いており、安定した売上を確保しておりました。
一方で、譲渡企業としては、これらの取引関係やオーナーや株主、一従業員のみに依存していないかは注意が必要となります。あくまでも会社として、双方関係・取引ができていない場合、譲受候補企業は、取引が剥離する可能性があると想定します。譲渡を検討される場合は、有力な取引先に関しては、組織ぐるみでの取引にしていく必要があります。

③粗利の高くなる仕組み・組織体制
食品卸売業はどうしても価格競争に巻き込まれやすく、粗利が非常に低い企業が散見されます。その中で粗利の高くなる仕組み作りをしている企業は評価が高くなる傾向があります。例をあげると、仕入れた商品を加工の協力会社に依頼し、付加価値をつけて、卸売りしている企業は、収益性が高い企業が多い傾向にあります。また、物流網をしっかり引いており、効率的なオペレーションを組めている企業も、評価が得られることが多いです。

食品卸売業の買収監査時のポイント

前項では評価を得られるケースを挙げさせていただきましたが、実際に譲受候補企業とのトップ面談、基本合意後、譲渡企業の買収監査が実施されます。

食品卸売業では、資産性となるものが、商品在庫に限られるため、譲受企業のほとんどが商品在庫の状況について、細かくヒアリングや実地調査が行われます。

日本M&Aセンターでも、譲渡企業に対して、B/S上の商品の帳簿価額に関して、違和感のない数値かどうかの確認やオーナーへのヒアリングを実施し、大きな乖離がでないように努めていますが、監査の実施会社によっては、商品在庫に対しての評価軸が異なるケースや実地の棚卸が年に数回しか行っていない場合、想定の株価と大きく乖離が生まれてしまう可能があるので、注意が必要です。

譲受企業は、商品在庫をどのように管理しているのか、棚卸のタイミング、消費期限の認識の仕方については、ヒアリングを実施することを推奨します。一方で、譲渡企業のオーナーは上記ヒアリング事項に関して、的確に答えれるように準備し、特に消費期限の認識はどのような計算で、その消費期限を設定しているかを把握することが非常に重要です。

商品在庫が論点となった実例

上記の食品卸売業の買収監査時のポイントに沿って、実際に日本M&Aセンターで買収監査時起きた実例をピックアップいたしました。

①過去処分した商品をB/S上では処理していなかったケース
このケースでは、過去に商品が火災で燃えてしまい、なくなっていたというものでした。本来であれば、当期の特別損失として計上すべきでしたが、利益調整として税務リスクがあるとのことでそのままB/S計上しておりました。幸い本件では、事前にオーナーから伺っていたため、問題なく進んだものの、譲受企業からすると、譲受直後に損金計上する必要があるなど、経営上のリスクにもなりうるので、事前の処理をしておくことがベターです。

②オーナーが実際の商品在庫について認識していなかったケース
このケースは、オーナーが仕入に対して、従業員に任せきりで把握していないというものでした。長年仕入を任せており、信頼が厚かったため、従業員から聞いていた商品在庫価額をそのまま計上しておりました。結果的には、譲受会社が買収監査時に実地調査を行ったため、このような事態を把握できましたが、オーナーはできる限り実際の商品在庫を見ておくことがベターです。

③譲受企業と譲渡企業での消費期限の認識が異なるケース
このケースは、譲渡企業が冷凍食品を扱う会社となっており、国際基準や日本の慣習によって、消費期限表記の認識が異なるというものでした。本件では、譲渡企業側が厳しめの消費期限表記を設定していたため、問題がありませんでしたが、逆のパターンも十分に想定されます。譲渡企業側は、どのような背景でその消費期限表記にしているかは、事前に説明できるようにしておくことが重要です。

いずれのケースも譲渡企業、オーナーがいかに自社の商品在庫状況を把握しているかが重要で、かつそれを説明できるかによって、譲受企業の心象も変わってきますので、今後譲渡を検討される場合は、仕入担当等の商品在庫について、整理をしておきましょう。

いかがでしたでしょうか?
2週間に1回に渡って今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
次回のコラムは食品業界支援室江藤よりお送りいたします。

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執筆者プロフィール



株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品支援室 図斉 亮介
Mail:zusai@nihon-ma.co.jp
TEL:070-7796-3550

埼玉県生まれ中央大学商学部卒業後、大手証券会社にて資産運用コンサルティングに従事。また、㈱マイナビにて、人材領域における法人営業・マネジャーを経験。その後、㈱日本М&Aセンターに入社。外食・食品業界専門チームにて、食品製造企業を中心に企業の存続と発展に向けたМ&A支援に携わる。