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M&Aレポート

上場企業のM&A戦略
Vol. 2 センコーグループホールディングス株式会社

2021.12.7

  • 物流

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「物流を超える」を掲げているのは、創業1916年、100年以上の歴史を誇るセンコーホールディングスです。
上場を果たしたのは1975年のことです。(大阪証券市場第1部)長年にわたり業界をけん引してきた企業が今、M&Aを積極的に実施しています。

同社の強みは「現場力」である。売上5700億円の巨大企業であるものの、自社社員で管理・ 運営しており、外部に全面的なアウトソーシングは行わない方針です。包括的に受ける業務に対し、自社のセンコー品質で対応するのが同社です。そんなセンコーHDは設立時から社有船就航や通運事業、さらには倉庫業も営んでいました。昨今はモーダルシフト化という言葉で表される海運・鉄道などを輸送に取り入れる動きであるが、センコーHDは設立当初から本質的にはこの方針をとっていました。

そして、センコーHDはここ数年間、M&Aに積極的に取り組んでいます。2001年3月期時点で、子会社と関連会社の総数は34社(子会社29関連会社5)でしたが、直近2020年3月期においてその総数は132社になっています(子会社123社関連会社9社)。

その中身は、センコーHDとしての総合力を強化する動きです。自社社員での管理・ 運営しており、外部に全面的なアウトソーシングは行わない方針を詰める動きもM&Aで強化しています。自社比率を高める動きです。そしてそれはすなわちモーダルシフトを促進する動きへと繋がっています。

中期経営計画から見る戦略上のM&Aの位置付け

この20年間で中期経営計画は6度定められました。
この中身を見ていくと、M&Aが自然に戦略の中心へと移行していったことが見て取れます。

①2001年~2003年『ITネットワーク時代の「流通情報企業」をめざして』

業界に先駆けて1965年にコンピュータを導入した背景もあり、「流通情報」を掲げ、ロジスティクス・システムの開発や、 需要予測、棚割分析といった新たな流通機能の開発にも取り組みました。この時、M&Aは一文字も現れていません。

②2004年~2006年『流通情報起業の確立に向けお客様のSCMをサポートする物流企業No.1を目指す』

ここで「モーダルシフト」という単語が、中期経営計画の中に5要点の一つとして取り組まれます。ここでもM&Aの言葉はありません。

③2007年~2009年『流通情報起業の確立』を目指して

この時初めて、方針の中に「M&A」の単語が入ります。実際に、この時期を境にセンコーHDのM&A件数は急増することとなります。レコフデータ調べの公表ベースでは2001~2007年の間に発表されたM&Aの件数が2件であるのに対し、2007年~現在で見てみると、29件のM&Aが実施されています。

④2010年~2012年 『グループ全体で「社会との共生」を図り、従業員の「成長志向」を育む中、「高品質」でコストパフォーマンスの高いサービスを「グローバル」に提供する流通情報企業を目指す。』

この中期経営計画では、3つある事業戦略の一つとしてM&Aが挙がります。事業拡大のための新規拠点の設置、老朽化拠点のスクラップ &ビルドが目的と明確になります。

⑤2013年~2016年『国内外から信頼される、流通情報企業』

100周年に向けた最後の4年間の中期経営計画です。そこで掲げた計画資料には、センコーHDの転換が書かれていました。「商流事業の拡大」「ものづくりへの挑戦」などであります。そしてその手法としてM&Aが挙げられました。M&AがセンコーHDにおける戦略の軸になったように感じるのがこの時期です。

⑥2017年~2021年『未来潮流を創る企業グループ』

100期を迎えた同社が打ち出したのは「人々の暮らしと産業を支える企業グループとして、 物流・商流事業を核に、未来を動かすサービスや商品の新潮流の創造に挑戦する成長戦略」です。まさに「物流を超える」を体現する方針でしょう。物流企業がインフラ企業であることは従前より言われることであるが、それをしっかりと体現している戦略です。もちろん、その手段の一つとしてM&Aを掲げており、実際この4年間でM&Aを14件実施(レコフM&Aデータベース)しています。

M&Aによりレバレッジをかけた戦略建て

M&Aが戦略の中心へと移行したことは見て取れました。自社での発展を中心に取り組んできたセンコーHDが、徐々にM&Aを戦略の中心に取り入れていく中で、経営計画に変化が生じました。
売上高の伸び率の設定に着目したい。

○2004~2006年 戦略の中にM&Aなし
 計画1,730億円→2,000億円(15.6%増) 結果1,982億円

○2007年~2009年 計画の中にM&Aの単語あり
 計画 1,982億円→2,500億円(26.1%増) 結果 2,277億円

○2010年~2012年 3つある事業戦略の一つとしてM&Aが挙がる
 計画 2,277億円→3,000億円(31%増) 結果 2,935億円

○2013年~2016年 手法としてM&A
 計画 2,935億円→4,000億円(36%増) 結果 4,554億円

○2017年~2021年 
 計画 4,554億円→7,000億円(53%増) 

15.6%増の計画値の設定であった20年前に比べ、現在の設定は53%増である。この急成長を描くまでに成長しているのである。
まさしく、レバレッジをかけた戦略であると言えましょう。

物流会社からのブレイクスルーを実現したM&A

(図:2007年以降の主なセンコーHDのM&A 出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成) 

人々の暮らしと産業を支える企業グループとして介護・フィットネスなどのライフサポートやCSR活動などにも精力的に取り組んでいます。直近で2020年9月にも保育所などを運営する企業の譲受を実施し、そちら方面への進出においてもM&Aでのレバレッジをかけることに成功しています。
また、センコーHDの当初からの強みであるモーダルシフトにおいてもM&Aを活用している。環境にやさしくを求めた理念はしっかりと評価をされており、人 日本物流団体連合会 から「第21回物流環境大賞」部門賞2件を受賞しています。
この動きは、市場からも評価されておりセンコーHDは複数のESGインデックスにも選定されています。

まとめ

自社での拡大、自社での業務を中心としてきた戦略で歴史を築いてきたセンコーHDだが、その良さを残したまま、M&Aでレバレッジをかけ更なる発展を遂げています。

歴史の上にたつ企業こそ、今変革の選択を迫られているのではないでしょうか。環境問題、コンプラ問題、ITの進化等々目まぐるしく変わるこの業界をけん引する企業は、新しい手法を恐れず取り入れ、改革に挑戦をする企業でしょう。

コンサルタント紹介

業界再編部 物流業界支援室 宮川 智安 
群馬県出身。実家は七代続く水産業の卸売。早稲田大学卒業。大学時代は競走部に所属(400mで全国IH準決勝)、2020年新卒で日本M&Aセンターに入社し、全国の物流業界を専門にM&A業務に取り組む。