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M&Aレポート

食品事業の海外投資におけるメリット、デメリットと注意点

2021.12.15

  • 食品

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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の白鳥です。
当コラムは日本М&Aセンターの外食・食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
本日は白鳥が「海外投資におけるメリット、デメリットと注意点」についてお伝えします。

海外投資に目を向ける理由

皆さん、想像してみてください。とある会社の話ですが、社長は58歳で、娘がいるものの医学の道を歩み始めている。これからの会社の存続、発展・成長を考えると第三者への株の承継も考えているそう。
ここまでは、日本でも昨今ありえそうな状況ですが、ここからです。

大都市の近郊に構える、社長の会社の周辺はここ10年で商業ビルの建設ラッシュがあり、百貨店、飲食店どこの店へ行っても連日大盛況。新しいホテル、商業施設がオープンする。毎年20万、30万人と人口が増え、年間の出生数も100万、110万、120万とどんどん新生児が生まれ、若い人が増えている。そんな中、先の会社の社長は、何か新しい施策をやるわけでもなく、コスト削減をすることもなく、なりゆきに任せて経営をしているが売上は年々15%ずつ増え、ここ5年間の間に税引後利益は3倍になりました。だからと言って社長に奢りはない、なぜなら周りの社長もみんなそんな状態だからです。

これは2021年秋のクアラルンプールの景色です。

ASEAN投資への魅力

日本国内については、人口減少、高齢化などマーケットシュリンクの議論がし尽くされて久しいです。海外へ成長戦略を見出したい企業は多い中、実際のところ飛び込める企業は稀です。ただ前述した景色・雰囲気を感じて頂ければわかる通り、マーケットの成長性が見込めるフィールドへ飛び出さない理由はありません。ここからは海外の中でもASEANに絞って、特に東南アジア投資へのメリットを紹介します。

①圧倒的な成長性
まず人口動態を確認すれば自明ですが、日本国は人口オーナス期と呼ばれる、逆ピラミッド構造。要は生産人口、消費人口が減っていくなかで今後10年以内に127万社が廃業すると言われている市場です。一方でASEANは逆に人口ボーナス期と呼ばれる、子供がどんどん生まれ、働く人、消費をする人口が年々増えている諸国です。構造的に物が売れ、消費される高いポテンシャルを持っています。

②地理的な近さ
海外諸国の中でもヨーロッパ、北米と比較して、地理的な近さがあげられます。東京からアジアの主要都市へは、飛行機で6~8時間もあれば到着する。また時差についても1~2時間程度である。欧米とのビジネスは時差との戦いになるが、日本との活動時間がさほど変わらないため現地とのやりとりもストレスなく進められます。

③心理的な近さ、ジャパンプレミアムについて
同じアジア人であり、日本人と基本的には気質、人柄が似ています。もちろん様々なタイプの方がいますが、根っこのところは同じで親しみやすいという感覚がある点です。またASEANの最大の魅力は日本に好意をもっており、良いイメージがある国が多いことです。実際「M&Aをするなら日本企業と手を組みたい」と語る現地オーナーは少なくありません。

投資スキームの種類

それでは、ここからは実際投資をする際には、どのような手順、パターンがあるか説明します。各々、メリットとデメリットも確認します。

①資本を投入しない企業提携
資本参加を伴わないアライアンス(業務提携)については、メリットとしては簡単に始めることができ、成果があがらなければ簡単に解消できるという経営リスクの小ささです。ただ問題点は経営に直接参画するわけではないので、相手がどこまで真剣にやってくれるか分からない点があり、また相手企業によっては提携した結果技術やノウハウが盗まれるリスクもあります。

②資本を投入する 現地法人設立
2番目のケースは自ら新規投資で現地で法人設立をするパターンである。メリットとしては、自社の経営方針を100%、薄めることなく進めることができ、利益もそのまま享受できます。ただ一方で人材の確保、許認可や現地当局への手続きや調整、ローカルルールの理解と味方の探索など、2、3年はあっという間に過ぎていくため軌道に乗るには5年前後は覚悟する必要があります。

③現地企業への資本参加
1、2番の折衷案ではないが、3番目は現地企業への増資や、株式取得などによる資本参加による進出のパターンがある。こういった場合、投資先の対象会社の過半数を取得(マジョリティ)するのか、50%以下の少数(マイノリティ)取得するのか議論が分かれる。マイノリティ出資のメリットはリスクを最小現にできるところにあります。一方で対象会社へ与えられる影響度は限定的です。次にマジョリティの場合は逆に経営の意思決定は親会社の意向を入れることができ、スピーディに進めることができます。一方でコスト面では少額投資にはならないこと、管理体制の構築、目標の共有、相手へのリスペクトなど買収後の論点が多いことも事実です。

買収監査で注意する点

海外投資において、いざ買収するとなった際、最終の契約書を締結する前に買収監査をバイサイドで対応することになる。その点で注意するべき点を実際筆者が経験したことも含めて説明します。

買収監査上の論点注意点
①買収監査を実施する法律事務所、会計事務所の選定について
いわずもがな、国ごとには法律が違っています。また法律はあるものの、実務的にはどこまで許されるラインなのかグレーゾーンのローカルルールがどの国にも存在しているのです。従って、現地に支店(ブランチ)がある事業者に監査をお願いすることをお勧めします。本社が日本であれば、コストを上乗せすることで報告書も日本語、和訳の対応も可能なケースもあります。

②監査での注意点・論点その1 外資規制
まずは海外の会社を日本企業が買収並びに投資を行うということは、海外現地法人の譲渡希望企業にとっては、内資企業から外資企業になることを意味します。私が担当したセルサイドがインドネシア案件では、こういった内資企業をPMDN、外資企業をPMAと言い、須らくPMA企業になるためには資本金100億ルピア(日本円で約81,000千円)が必要となり、この基準に満たないローカル企業がほとんどあるため増資等の対応が必要となる。また製造業は外資参入OKですが、小売業は外資規制がある、など国によってルールが定められているためまずは事前に外資企業への移行への規制を確認するべきです。

③監査での注意点・論点その2 銀行からの同意
インドネシアにおいては、銀行から借入をしている際、M&A実行時に借入の全額返済もしくは、クロージング決済前までに同意を得ないといけない契約条項が必要なケースがあります。

④監査での注意点・論点その3 土地について
日本国内では工場や事業所の土地を会社が所有することは普通ですが、一部の海外では土地は法人は所有できず、株主のオーナー個人が所有して会社へ賃貸借しているケースがあります。インドネシアにおいても上記になっており、個人でしか所有できません。ただ本件のような外資が投資する際には、法人・個人の資産の分離を行うべく、日本でいう所有権に代わる建設権を会社に登記するという手続きが必要になるケースもあります。

⑤監査での注意点・論点その4 財務諸表の資料について
特に東南アジアでは、会社が自ら作っている決算書(インハウス)資料には、パターンが自社用、銀行用、その他取引先用と3パターンほどあると言われているほど、信ぴょう性が乏しいものであることが多いです。従って、買収監査を行う前に地元の会計事務所に依頼をして、プレ監査(オーディット)を行い、ある程度精度の高い資料に移し替えたうえでその資料を持って、買収監査を行った方が短時間でスムーズに監査を進められます。

その他、注意する点は労務問題や、環境問題、など枚挙にいとまはありません。こうして記載してしまうと、やはり海外はリスクが高いから怖い、辞めた方がいいかもと尻込みしてしまうかもしれません。

ただ、私の経験した海外M&Aのケースでは、監査を行い簿外債務が発覚したとしてもマーケットが伸びているため、売上、利益が150%で成長している、10年前100万円で買った土地が1億円になっている、などプラス材料が結果上回る報告を見てきています。一方、日本の譲渡企業で買収監査を行い時価評価すると赤字、債務超過になってしまうことも少なくありません。やはり伸びてる市場で戦っているのか、シュリンクしている市場で戦っているのか、フィールドの違いを現場でも感じずにはいられないのです。

とある日本国の買手企業の社長へなぜ、海外進出したいのか?と聞いたところ
「伸びている市場を体験したい。」と仰った。
食品関係の非常に安定した企業でしたが、やはり国内の人口は減っていき、若い人は都心に集中していっています。「間違いなく国内だけで勝負していたらジリ貧になる。内部留保がある今のうちに伸びているマーケットへのチケットを手に入れたいと思った」とも、コメントを残しています。

我々日本M&Aセンターは2016年から東南アジアの現地で拠点を設け、譲渡企業の探索を地道に行ってきています。そういった中で、前述のリスクや、注意すべき点などナレッジが蓄積されつつあります。また現地スタッフの雇用も進めているため、細かいニュアンスの通訳なども可能です。

御社にやっていただくことは、2つのみであす。伸びているマーケットに飛び込む勇気をもつことと、先方のオーナーとの相性を確認することです。相性はやはり、海外案件でも非常に重要になります。それだけアジアの会社も社長が会社の顔であり、体現するものです。

少しでも海外への関心がある場合はぜひ当社にお問い合わせください。


いかがでしたでしょうか?
2週間に1回に渡って今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けをさせて頂きます。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

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食品業界支援室長
江藤 恭輔
▼https://www.reorganization-ma.jp/

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日本全国に点在する優れた食文化をM&Aで存続させ、全国に広める

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▼出前館前社長中村利江が語る、出前館の成長の軌跡と、アフターコロナでの“食品・外食企業”の採るべき選択

■著書■ 
Amazon売れ筋ランキング【6部門第1位】
▼M&A思考が日本を強くする JAPAN AS NO.1をもう一度

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執筆者プロフィール



株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品支援室 白鳥雄飛
Mail:shiratori@nihon-ma.co.jp
TEL:070-4577-1390

宮城県仙台市生まれ東京工業大学卒業後、㈱リクルートにて、法人営業を経験。その後、㈱日本М&Aセンターに入社。食品業界支援室にて、食品業界を中心に上場企業から中堅・中小企業まで幅広くM&Aの支援を行っている。