MENU
CLOSE

M&Aレポート

2021年 食品業界のM&A 回顧と展望(フードビジネス業界)

2021.12.27

  • 食品

Facebook Twitter LINE

こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の高橋です。
当コラムは日本М&Aセンターの外食・食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は高橋が「フードビジネス業界の2021年の振返りと2022年の展望」についてお伝えします。

フードビジネス業界が抱える3つの課題

 フードビジネス業界は大きく分けて「外食」「食品量販店」「食品製造」「食品卸売」「食品原材料生産」の5つで構成されているかと思います。

2021年の業種別のМ&A件数は

・外食産業:大幅減少傾向
・食品量販店:増加傾向
・食品製造:増加傾向
・食品卸売:増加傾向
・食品原材料生産:横ばい傾向

となっており、コロナ禍のマイナス影響を大きく受けた外食産業が大幅減少しており、それ以外の業種においては概ね増加傾向にあったといえます。

 2021年のフードビジネス業界におけるМ&A増加傾向にある要因としては、コロナ禍の影響で、フードビジネス業界のマーケットは大きな変化を強いられたことも要因の一つではありますが、コロナ禍に関係なく、フードビジネス業界は3つの大きな課題を抱えており、それを解決するための手段としてM&Aが増加していると考えられます。

①国内人口減少に伴う慢性的な人手不足・マーケットの縮小による「売上減少」

 ご存知の通り、国内の人口は年々減少傾向にあり、このままいくと2020年~2050年の間に約20%減少すると言われています。
フードビジネス業界の市場規模は人々の胃袋の数に起因しており、一人当たりの胃袋を大きくすることは困難なので、人口減少=市場規模縮小に繋がり、インバウンド需要などを加味せず考えると、今から30年後には約20%の国内市場が無くなると予測できます。
仮に30年後、コロナ禍のような問題が発生し、インバウンド需要が無くなった場合には、約20%減少した市場の中で戦うしか無く、今よりもフードビジネス業界は苦戦を強いられると考えられます。

②世界的な人口増加に伴う食糧不足による「食材原価の高騰」

 一方で世界の人口は、日本の人口減少と相対して年々増加傾向にあります。
国連人口基金(UNFPA)が発表した世界人口白書2020によると、2020年の世界人口は約78億人となり、2019年に比べて8000万人増加したとされています。また、国連 経済社会局人口部が発表した「世界人口推計2019年版:要旨」によると、今後30年で世界人口は20億人増加し、2050年には97億人に達すると推計されています。
このような世界的な人口増加は、世界的な食糧不足に繋がり、食糧の獲得競争がグローバルに進む可能性が今後ますます高くなっていき、日本における食糧調達コストは年々上がっていくことが考えられます。
更に2021年はコロナ禍の影響で、「牛タン価格が7割アップ」するなど「ミートショック」と呼ばれる肉価格の上昇が激化しました。原油価格の高騰に伴う「家畜の餌が値上がり」、コロナ禍による各国の外国人労働者の入国規制に伴う「肉を生産する人の不足」といった要因によって、ミートショックは引き起こされましたが、食肉だけではなく、魚・野菜も同様なメカニズムによって価格は上昇しており、短期的にも中長期的にも食材原材料の価格が下がる見込みは薄い状況となっているかと思います。

③最低賃金の上昇・働き方改革などへの対応に伴う「人件費の高騰」

 「労働者の最低限の生活保障」と「それにより国民経済を回すこと」を目的として、最低賃金は年間約3%ずつ引き上げられており、また同一労働同一賃金などの働き方改革への対応に伴い、“同じ労働量に対してこれまで以上の人件費を支払う必要がある”時代となりました。
また、コロナ禍の影響で人材の流動性に拍車がかかり、労働者が今の職場から違う職場を探す機会が増えたことにより、フードビジネス業界の優秀な人材が、成長産業の企業へ流れていくといった問題が発生し、これまで以上に優秀な人材を確保することも難しくなったと感じられます。

 このような外部環境の中で、フードビジネス業界の多くのプレイヤーは“そもそも売上を上げることが困難な市場環境の中で、企業努力により同じ売上高を維持していたとしても、コストが年々増加していくことで、営業利益高は減少していく”といった状況下に置かれ、1社単独でビジネスを維持・発展させていくことが数十年前と比べると極めて難しい時代に突入しているかと思います。
これらの問題を、自社よりも「力のある会社」若しくは、「自社とは違った強みを持つ会社」と手を組むことによって解決し、業界の荒波を超えていこう!といった前向きな意味でのM&Aが近年は増加しているように感じます。

コロナ禍によるマーケットの大変革と定着

 先述させて頂いた通り、フードビジネス業界は大きな課題を抱えている中で、コロナ禍の影響で2020年はマーケットが“変化”し、2021年はマーケットの変化の“定着”を引き起こしたと考えれます。今後も定着していくであろう変化をいくつか記載させて頂きます。

①外食需要から中食・内食需要へのシフト
 緊急事態宣言や蔓延防止措置に基づき、外食需要が激減していく中で、皆様もご存知の通り、消費は中食・内食需要へシフトしていきました。
これまで、「美味しいものを食べにいくなら」「家族や友人と楽しく食事をするなら」「さくっと食べるなら」といったような需要に対応していた、外食産業でしたが、コロナ禍により、「家でも美味しいものを食べれる」「キャンプなどのアウトドアで家族や友人と楽しく食事が出来る」という概念の定着が加速したため、人々のライフスタイルが変化し、マーケットが移行しました。一度拡張したマーケットは文化として定着していく可能性が高く、この変化は恐らく一過性のものではないことが考えれます。

②居住区域の変化に伴うマーケットの分散化
 リモートワークなどが加速したことにより、どこでも働ける時代に突入し、コロナ禍に関係なく、リモートワークを推奨する企業が増えてきました。これに伴い、居住区域を、物価の高い都心部から物価の安い郊外に移行する人が増加し、都心部での消費が郊外へ分散していきました。マーケットが分散したことにより、飲食店や小売店は出店エリアの見直しが必要になり、食品製造業や食品卸は販売エリアが変わったことにより、物流網の見直しの対応が求められたかと思います。今後もリモートワークなどの新しい働き方が更に定着していく中で、このような変化は今後も加速していくと考えられます。

③食品消費のラグジュアリー化
 居住区域が郊外に移行するなど、人々の生活の固定費が削減傾向にあり、イベント事が減少している中で、国内全体としてはデフレ傾向ではありますが、浮いた資金をこれまでよりもグレードの高い食品や外食に使うといった消費のラグジュアリー化も加速していきました。コストが増加している中で、単価アップが狙えるチャンスが拡大したことは、業界にとっては喜ばしいことではありますが、人々の消費欲求の変化に伴い、展開している商品の見直しなどが今後より求められてくると考えれます。

④業界の垣根がなくなり、食産業70兆円を全員が狙う時代に
 日本総菜協会「総菜白書2020年版」によると、外食市場約25兆円、中食市場約10兆円、内食市場約36兆円であり、食産業全体で約70兆円あるとされています。
コロナ禍の影響でマーケットが変化したことにより、外食市場のプレイヤーが中食に参入、業務用食品卸が量販店向けのチャネルを拡充、更にはキャッシュ余力のある一部の量販店が自社のブランディングのために外食市場に参入など、これまで以上に業界の垣根を超えて、食産業全体を狙った取り組みを行う企業が増えました。
このような取り組みは今後も加速していくと想定され、自社の強みを活かしてどのように横展開をしていくのか?ということをより考えていく必要がある時代に突入したのではないかと感じております。

 これら以外にも、今後定着していくであろう変化はあるかと思いますが、いずれにしても企業としては、いくつかの事象においてはコロナ禍前には戻らないことを前提に、企業戦略を構築していく必要があると感じています。

2022年求められるのは「マルチチャネル・マルチブランド化の促進」

 このような変化が起きているフードビジネス業界において、2022年は販売先のマルチチャネル・商品のマルチブランド化の“促進”がキーワードになってくるかと考えております。

 2020年~2021年はコロナ禍の影響でマーケットが大変革し、定着しつつありますが、このような変化は過去を遡ると、「バブル崩壊」「リーマンショック」など様々な要因によって引き起こされます。
これからの経営において、劇的なマーケットの変化が起きたとしても、耐えることが出来る体制を作る必要があり、そのためのキーワードが「リスク分散」であり、その手段が「マルチチャネル・マルチブランド化の促進」と考えております。

 例えば、大阪王将などを展開してる株式会社イートアンドホールディングスは、コロナ禍の影響で外食事業は大きな打撃を受けましたが、一方で1990年代から取り組んでいた冷凍食品販売が急拡大し、直近決算では外食事業よりも高い売上高を記録しており、このコロナ禍でも黒字計上を実現しております。

 このように、特定の販路・商品(業態)に依存するのではなく、複数の販路・商品(業態)を持つ、つまり「マルチチャネル・マルチブランド化」を実現しポートフォリオを拡充することが、今後より求められると感じており、2022年は次のマーケットの変化に備えて、「マルチチャネル・マルチブランド化の促進」を、模索するではなく、実行していく必要がある年と考えております。

 もちろん自社単独で、新規の営業開拓や新商品・業態の開発を行うことによって「マルチチャネル・マルチブランド化」を実現することも出来ますが、それには相応の“時間”が必要となります。
そういった中、М&Aで他社と手を組むということは最も早期に「マルチチャネル・マルチブランド化」を実現するための手法だと言えます。

様々な課題があるフードビジネス業界で、次のマーケットの変化がいつ来るか分からない中、自社単独で頑張り続けるのではなく、他社と協調していち早く業界の荒波を超えていく体制を作ることは、会社や従業員をより安全で幸せな環境におけるチャンスが広がるものだと思っております。

今回のコラムが2022年に向けての取り組みのご参考になりましたら幸いです。

いかがでしたでしょうか?

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

▼お問い合わせフォーム

執筆者プロフィール



株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品支援室 高橋 空
Mail:so.takahashi@nihon-ma.co.jp


神奈川県生まれ青山学院大学経営学部卒業後、大手コンサルティングファームにて外食・食品専門のコンサルタントとして国内外の外食・食品企業に対して、出店戦略、組織マネジメント、既存店活性化、業態開発など様々なプロジェクトに従事
その後、㈱日本М&Aセンターに入社。外食・食品産業に対する知見を活かして、外食・食品業界専門チームにて、企業の存続と発展に向けたМ&A支援に携わる。