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M&Aレポート

2021年 食品業界のM&A 回顧と展望(青果卸業界)

2021.12.27

  • 食品

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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の松岡です。
当コラムは日本М&Aセンターの外食・食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
本日は松岡が「2021年青果卸業界のM&A動向と2022年の業界予想」についてお伝えします。

1. 過去5年間の青果卸M&A件数の推移と主な事例

■過去5年間の推移

出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成(2021年12月16日時点)
※買収・事業譲渡のみのデータになっており、資本参加は含まれておりません。

■代表的な事例

2017年
【売】東果大阪×【買】神明
東果大阪は売上高424億1700万円。一部報道では金額は数十億円と言われている。両社が精通した事業分野を融合させることで、集客力、販売力、商品提案力で屈指の農産品流通企業グループへの成長を目指す。

2018年
【売】成田青果市場×【買】神明ホールディングス
成田青果市場は成田エリアでの青果物流通の拠点として効率的な流通、安定した取引を推進し、川上から川下までの幅広い取引関係や情報収集力、千葉の生産者を中心とする地場産地との強固な信頼関係、仲卸業者を通じた販売網・販売力を構築している。神明HDは関東圏の青果流通市場でのシェア拡大、海外でのシェア拡大を図る。

2019年
【売】北栄農産×【買】エア・ウォーター
トミイチは原料仕入から販売まで一貫した事業展開を図るとともに農作業の代行や作業環境の改善などを図るコントラクター事業を推進している。調達力の強化、コントラクター事業の拡充を図る。

2020年
【売】富山青果センター×【買】アイディック
食品スーパーマーケットの大阪屋ショップ(富山市)は、子会社で仕入調達・物流製造のアイディック(富山県射水市)を通じて、青果卸の富山青果センター(富山市)を11月4日付で買収した。既存株主から全株式を取得した。同社は1970年設立、売上高約100億3500万円、従業員55人(正社員38人、パート社員17人)。大阪屋ショップの仕入先だった。アイディックは新鮮で安心安全な青果物の提供を実現する。野菜と果物の安定調達に繋げる。

2021年
【売】イースタングリーンマーケティング×【買】カメイ
カメイは、シンガポール子会社のKamei Singapore Pte. Ltd.を通じて、同国の青果(野菜・果物)輸入卸販売会社のEastern Green Marketing Pte. Ltd.、Alamanda Singapore Pte. Ltd.の2社を8月31日付で買収した。カメイはグループの食料事業、シンガポールでの食料事業を拡大する。東南アジアでの事業基盤を構築する。

2017年、2018年にかけての神明による2件連続の青果卸M&Aに代表されるように、異業種の食品卸からの青果卸への参入というものが近年頻繁に生じています。また食品卸だけでなく、エア・ウォーターのような物流網に強みを持つ企業や物流・運送業界からの参入も増加しています。

その一方、2020年に見られるようなスーパーマーケットなどの川下企業が川上企業である青果卸をM&Aするといった垂直統合型のM&Aも見られます。

カメイなどの大手は、国内市場が飽和している現状から海外に目を向け2021年にはシンガポールの青果卸企業をM&Aで傘下に迎え入れています。

2. 既得権益的な業界構造の崩壊とM&Aの増加

青果業界においては、まだまだ中央卸売市場が担う役割は大きいと考えられます。青果市場を経由した青果物の流通量は、日本全体で6割程度、地域によっては7割近い青果物が市場を通じて流通しており、青果卸が青果流通をコントロールしている重要な存在であることから、市場のルールが存在し、ある種守られた業界であることはよく知られていることでしょう。

一方で2020年6月には改正卸売市場法が施行されるなど、青果物取引自由化の流れもあり、これまで既得権益的に守られていた、いわゆる「青果市場」や「仲卸」というビジネスモデルの在り方が問われています。

M&Aという視点でも見てみると、青果卸業界はその閉鎖的で保守的な業界構造やルールから、M&Aが起こりづらい業界でもありました。市場や組合のルールによっては、株主や役員に関して市場取引の安全性を害さないように部外者を排除しようとする取り決めがある場合があり、同じ市場内でのM&Aや他地域からのM&Aによる市場内企業への参画が阻害されるケースが多くありました。

2020年6月の市場法改正によって、市場の保守的なルールを是正していこうという流れとなり、そういったルールがなくなった結果、M&Aが起きやすい状況も生まれています。

同市場内のM&Aでは、2021年6月に大田市場内で東京青果による東京神田青果の買収が行われました。もともと4%の株式を保有はしていましたが、その保有比率を78.9%まで高め、グループ会社化を図っています。この2社は、強みとする仕入れ産地や販売先の顧客基盤が異なるため、グループとなることでシナジーが大きく発揮されることを期待してのM&Aと考えられます。また業務上の連携やバックオフィス機能の共有によってさまざまな部分で効率化を図り、より競争力を高めてくるものと思われます。

また、他エリアからのM&Aによる資本参加では、2021年4月に長野県連合青果がぐんま県央青果をM&Aし、100%子会社化した事例が挙げられます。長野県連合青果は、もともと群馬にも拠点を持っており、関東圏への影響力をより高める意図があったものと考えられます。こういった他エリアからの参画は、地域の反発を招くケースもあるため、今後のPMI(M&A後の経営統合)がうまくいくかどうかが、注目される事例となります。

3. 既存の価値観にとらわれない新たなビジネスモデルの構築を

一方でルールがなくなっても、まだまだ市場内で事業を営む方々の価値観までは変わったとは言いづらい状況であるように思われます。同市場内でのM&Aや他地域からのM&Aによる資本参加に対して、自分たちのこれまでの利益を脅かされるのではないかと、排他的である市場もまだまだ存在しているのが現状です。

しかし、既得権益的な業界構造がなくなりつつあるいま、業界として新しいビジネスモデルの構築が求められる時代となっているのも事実です。その新しいビジネスモデルの芽となりうる、他地域や異業種の考え方を取り入れるM&Aという手法を排除することは、業界の緩やかな衰退にも繋がりかねません。

日々業務に忙殺されて、仲卸というビジネスモデルの危うさから目を背けたり、変化を恐れたりするのではなく、自らビジネスを変えていく、あるいはどこかと手を組むことで自社のビジネスをより良い方向へ変容させていくことが求められているのではないでしょうか。

以上、青果卸業界の動向について、まとめさせていただきました。今回のコラムが2022年に向けての取り組みのご参考になりましたら幸いです。

いかがでしたでしょうか?
今後も定期的に食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。


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執筆者プロフィール


株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品支援室  松岡弘仁
Mail:matsuoka@nihon-ma.co.jp
TEL:070-4577-1404

熊本県生まれ。東京大学法学部卒業後、新卒社員として㈱日本М&Aセンターに入社。入社以来、食品業界支援室にて、上場企業から中堅・中小企業まで幅広くM&Aの支援を行っている。