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M&Aレポート

2021年 食品業界のM&A 回顧と展望(惣菜・中食業界)

2022.1.6

  • 食品

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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の松原です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームの食品業界支援室のメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は、「2021年惣菜・中食業界の振返りと2022年の展望」について執筆させて頂きます。

過去5年間の惣菜・中食業界のMA件数の推移と主な事例

■過去5年間の推移

出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成(2021年12月16日時点)
※買収・事業譲渡のみのデータになっており、資本参加は含まれておりません。

2021年の惣菜・中食業界のM&Aは公表されているもので4件あり、急増した2020年と比較すると減少していますが、2017年から概ね増加傾向にあると言えます。

一般的な定義として惣菜・中食業界は、「家庭外で調理・加工された日持ちしない調理済み食品で、家庭や職場、学校等に持ち帰ってすぐに食べられる物を取り扱う業界」です。我々の生活をより省力化された、より便利なものにしており、その恩恵を受けている方も少なくないでしょう。

10年連続で成長してきた業界が、コロナ禍によって激変しており、2020年は市場規模が5000億円縮小し、マイナス成長に転じています。2020年は、惣菜・中食業界のみならず、食品業界全体がコロナ禍の影響を受け、食品業界のM&Aの件数は前年より増加しています。今手を打っておかなければ5年後10年後に生き残っていけないという危機感から、大手のグループ入りを検討する企業様や、経営の多角化を目指し、自社の持っていない事業領域に強みを持っている企業様の譲り受けを検討する企業など、M&Aをコロナ禍に対応する有効な選択肢の一つと捉えられた企業様が多かったように思います。2021年は後半にかけて、コロナ禍が収束傾向に向かい、惣菜・中食業界の業況も相応に活気づいてきており、前年活況だった業界のM&A件数も2021年は落ち着いてきています。

食品業界支援室では年間数百人の惣菜・中食業界の経営者と面談しており、今回のコラムでは、惣菜・中食業界のM&Aにフォーカスしたいと思います。

惣菜・中食業界の代表的なM&A事例

2017年
【売】のぼる×【買】日清医療食品(ワタキューセイモア)
⇒病院・福祉施設向け寝具などリースのワタキューセイモア(京都府井手町)の全額出資子会社で病院・介護福祉施設向け、給食受託の日清医療食品(東京)は、弁当給食、米飯食品製造販売ののぼる(福岡県北九州市)を2017年9月に譲り受けました。同社は売上高約22億円。乳幼児向け弁当を福岡県内の約160の保育所・幼稚園に提供しています。日清医療食品は幼稚園・保育所給食市場での業容拡大を図るためにM&Aを決断しています。

2018年
【売】宇美フーズ×【買】オーミケンシ
⇒オーミケンシは、食料品製造加工販売の宇美フーズ(福岡県宇美町)を2018年7月に譲り受けました。同社は福岡県を中心にこんにゃく、惣菜、おでんなどの製造加工販売を展開している企業で、オーミケンシは、新たに食品事業の領域に事業を拡大するためとみられます。

2019年
【売】トオカツフーズ×【買】日清製粉グループ本社
⇒日清製粉グループ本社は、惣菜事業のトオカツフーズ(横浜市)を2019年7月に譲り受けました。トオカツフーズは1968年設立、売上高1141億5600万円。総合中食サプライヤーとして、コンビニエンスストアを中心としたデリカ惣菜事業、宅配ルートを中心とした冷凍惣菜事業を展開しています。日清製粉グループ本社は2012年にトオカツフーズに資本参加し、デリカ惣菜、冷凍食品の製造委託を通じて協力関係を築いてきました。グループの基礎研究技術や商品開発力などを生かし、中食・惣菜事業、冷凍食品事業の拡大を図るためにM&Aを実行しました。

2020年
【売】冨士屋かまぼこ×【買】まねき食品
⇒老舗駅弁製造のまねき食品(兵庫県姫路市)は、神姫バスの全額出資子会社でかまぼこ、惣菜など製造販売の冨士屋かまぼこ(大阪市)を2019年3月に譲り受けました。同社は1931年設立。まねき食品はだし巻き卵、総菜、弁当、ねり物などを手がける企業です。

2021年
【売】浜田屋×【買】まん福ホールディングス
⇒食に特化した事業承継プラットフォーム事業のまん福ホールディングス(東京)は、弁当製造・販売の浜田屋(神奈川県茅ヶ崎市)を2021年3月に譲り受けました。浜田屋は1990年設立、従業員約100人、販売店舗数6店舗、後継者が不在でした。まん福HDは後継者不足に悩む食関連企業を譲り受けし、新たなノウハウを導入して成長に導く事業に取り組んでいる企業で、商品開発強化、原価適正化などの業務改善に取り組む予定です。

M&A事例から見る惣菜・中食業界 が抱える問題点

冒頭でもお伝えしましたように、惣菜・中食業界は伸びています。一般社団法人日本惣菜協会が毎年公表する惣菜白書によりますと、食市場全体の中でも惣菜・中食市場の成長が著しく、ここ10年間の推移をみますと、食市場全体が10年前の113.7%であるのに対し、惣菜・中食市場は127.1%となっています。高齢化、核家族化、女性の社会進出などのライフスタイル変化により、惣菜・弁当の利用が大きく増加しています。惣菜・弁当の専門店以外に、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア等でも次々と業界に進出し、どこでも購入できるようになってきています。
2019年まで10年連続で成長してきた惣菜・中食業界ですが、2020年はコロナ下がもたらす生活様式の激変によって、市場規模は2019年の10.3兆円から2020は9.8兆円までシュリンクしました。
出典:一般社団法人日本惣菜協会「2020年版惣菜白書ダイジェスト」

惣菜・中食業界の経営者と話すと、「日本は深刻な人口減になっているので、惣菜・中食業界は長い目で見ると縮小していく。」と考えている方が多いです。伸び続ける惣菜・中食の市場を業界の中にいる人たちは楽観視していないように思います。

業界の課題として「生産性の向上」や「労働力不足」がよく挙げられます。加えて、「食品廃棄ロス」、「廃プラスチック」などの問題もあります。こういった課題やその解決策は先述のM&A事例からも垣間見ることができます。

食品製造業は他の製造業よりも利益率が低く、2020年の統計によると、製造・仕入原価が69.2%、販売及び一般管理費が26.5%で、営業利益が4.4%と低い水準になっています。
過去の惣菜・中食業界のM&Aをみてみると、同じ業界同士が手を結ぶケースが多いように思います。2017年の「のぼる×日清医療食品」、「冨士屋かまぼこ×まねき食品」の資本業務提携がその良い例です。規模が大きくなることによって、より安く仕入れができるようになったり、販売先を共有したりすることができ、収益力の向上を図ることができます。

コロナ禍で苦しむ外食業界も惣菜・中食業界に進出してきており、プレイヤーが増えることによって競争も増え、厳しい状況にある惣菜・中食業界の企業も多いようです。競争激化する業界で生き残るためには、利益が残る体質を整備することが先決で、同業同士のM&Aはそれを可能すると思います。

2021年の「浜田屋×まん福ホールディングス」の例をみてみると、名物弁当「しらすわっぱ」を手掛ける創業60年を超える老舗弁当製造業の浜田屋は「食の事業継承集団」であるまん福ホールディングスと合流した後、商品開発強化、原価適正化などの業務改善に取り組み、わずか半年で利益が前年比2,500万円改善したといいます。後継者不足とコロナ禍による売上減に悩む企業が、M&Aによって従業員の雇用が守られ、成長のきっかけを得られたように思います。

2022年の惣菜・中食業界の展望

コロナ禍が落ち着いてきたこともあり、業界の市場規模は2019年以前の10兆円規模に回復すると推察します。参入障壁が低い業界である上に、コロナ下のこの2年間でプレイヤーが急増したことにより、競争がより一層激化すると思います。労働者不足、HACCPによる衛生管理の義務化等の問題も山積しており、商品には自信があるが、外部環境の変化についていけないのではないかと考える企業は増えていくはずです。2020年の特殊要因を除くと惣菜・中食業界のM&Aは増加傾向でありました。将来不安によってより規模の大きな企業と手を結ぶケースや、後継者不在によるM&Aは2022年も引き続き増加すると思います。


以上、惣菜・中食業界の動向について、まとめさせていただきました。今回のコラムが2022年に向けての取り組みのご参考になりましたら幸いです。

いかがでしたでしょうか?
今後も定期的に食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

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執筆者プロフィール

 

株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品業界支援室 松原鵬博
Mail: t.matsubara@nihon-ma.co.jp
TEL:070-2493-4494

中国遼寧省生まれ、福岡県育ち。東京外国語大学外国語学部卒。日本語、中国語、英語が堪能。大和証券の本店営業部で中小企業の資産運用コンサルタントを経験した後、食品製造会社を起業、メディアでも話題に。日本M&Aセンター入社後は食品製造業を経営していた経験を活かし、食品業界支援室で食品製造企業や外食企業のM&Aを支援。上場支援や補助金関連のアドバイスにも強い。