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M&Aレポート

クレーン建設業界のM&A動向

2022.5.16

  • 建設・不動産

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コロナ禍以降の2020年以降、クレーン建設業界M&A件数が急激な勢いで増加しています。クレーンの新車価格の高騰・クレーン中古価格の下落やオペレーターの高齢化、取引先である業界の再編など、クレーン建設業界を取り巻く市場環境は変化しています。本コラムでは、クレーン建設業界の動向およびM&A動向を踏まえたうえで、クレーン建設企業がどのようなアクションを取るべきなのかを考察していきます。

クレーン建設業界の動向

まずはクレーン業界の需要についてマクロの視点から確認していきましょう。下記は、国土交通省が発表している建設投資額の推移です。東日本大震災以降、建設投資額は回復傾向にありましたが、2020年を機に減少に転じ、東京オリンピックの建設需要が終わりを迎えました。復興予算もほとんど消化済みであることや、民間建築需要が減退していることを踏まえると、業界全体の需要については大きな上昇は見込めないと想定しています。

続いてミクロの視点からクレーン建設業界を見ていきましょう。

①ヒト(人材不足と高齢化):ヒトについては、オペレーターおよび経営管理人材の不足と高齢化が深刻化しています。クレーン建設企業の多くは創業60年~70年程度経過しており、現在の経営者が創業者であれば、年齢が70歳以上であることがほとんどであると考えられます。また2代目に事業承継が出来ていたとしても、3代目にあたる次の世代がいないケースが多いと予想され、事業承継課題を抱える企業が多いと推測されます。加えて、2024年に待ち受ける働き方改革への対応も迫られており、クレーン建設企業にとってヒトは解決すべき喫緊の課題となっています。

②モノ(クレーンの新車価格の高騰と大型化):クレーン建設企業にとっての「モノ」であるクレーンは経営に欠かせませんが、近年、クレーンの新車価格の高騰と大型化の傾向があります。クレーンの新車価格は、過去は1トン100万円と言われた時代もありましたが、近年は鋼材などの原材料価格の高騰から1トン200万を優に超える車種も増えています。またクレーンの大型化も進んでいます。近年、大型施設等の建設需要に応えるべく、1,000トンクラスの超大型クレーンの導入は堅調に推移していますが、そのような超大型クレーンの価格は1台10億円を超えるものもあります。中小企業にとって大きな投資負担になる一方で、単価は大きく見込めないほか、稼働率が悪化すると、経営に大きなインパクトを与えてしまいかねません。新車価格の高騰と大型化のいずれにおいても、中堅中小企業にとっては大きな負担となっています。

③取引(取引先の業界再編):取引については、クレーン建設企業の取引先である製鉄および石油業界の再編です。これまでプラント内の常駐作業は安定受注先として知られておりましたが、それぞれ製鉄・石油業界も大きく変化しており、クレーン建設企業にとっても変化が求められています。製鉄業界は30年近い業界再編によって、現在では実質的に日本製鉄とJFEの大手2社体制となっております。(下記図)。

石油業界も需要減退や規模拡大を目指すために業界再編が起きていましたが、現在では実質的にENEOSと出光興産の大手2社体制となっております。

いずれの業界もすでに業界再編が完了し、国内プラントの統廃合が進んでいます。プラントの定期修繕工事などの需要が減少していくことが予想され、プラント内での仕事を請け負っていたクレーン建設企業にとっては大きな影響があります。

なぜクレーン建設業界のM&Aが増加しているのか

クレーン建設業界の動向で見てきたように、2020年以降クレーン業界は、マクロ・ヒト・モノ・取引先において大きな構造的な課題に直面しています。今後企業成長を果たすためには、それぞれの課題を解決していく必要がありますが、解決策としてまさにM&Aが求められています。

そもそもクレーン建設企業が、激動の時代を生き抜くためには、ヒト・モノ・取引先の課題を解決する必要があります。しかしながら、例えば、「ヒト」の課題を解決しようとして、ヒトを積極的に採用したとしても、モノと取引先は従来通りのため、根本的な企業成長には繋がりづらいと考えています。またモノの課題を解決しようと、大型クレーンだけを購入したとしても、人材採用や大型クレーンに見合う受注が獲得できるかは不透明となってしまいます。

そこでヒト・モノ・取引先の課題を一気に解決する手法としてM&Aが注目されています。エリアの異なるクレーン建設企業と提携することで、人材・クレーン・取引先を獲得することが可能になります。また例えば、A社とB社が稼働率50%の同機種のクレーンを保有していた場合に、1グループになることによって、1台で済むようになるため、1台は売却し、別の事業投資を行うことができるようになります。

M&Aによって、ヒト・モノ・取引先の課題を解決し、自社の成長と発展を目指す手法が近年頻繁にみられるようになっています。

クレーン建設業界のM&A動向

クレーン建設業界におけるM&Aは急増しています。下記はクレーン建設業界における成約事例の一覧です。御覧の通り、2020年を機に一気にM&Aが急増し、その流れは2021年も継続しています。

クレーン建設業界M&A事例(一部)

2020年6月
【売】青木重機運輸×【買】内宮運輸機工
⇒内宮運輸機工(千葉)は、同業の青木重機運輸(茨城)とのM&Aを実現しました。内宮運輸機工は人材・クレーン・事業エリア獲得し、関東エリアの基盤を更に拡充していく狙いです。

2021年5月
【売】川端重機興業×【買】電材エンジニアリング
⇒電材エンジニアリング(神奈川)は、同業の川端重機興業(青森)とのM&Aを実現しました。電材エンジニアリングは東北エリアにおける風力関連工事を拡大することが狙いです。グループ一体となって東北エリアを更なる強化を目指します。

2022年2月
【売】三和機工×【買】キナン
⇒建機レンタルを手掛けるキナン(和歌山)は、クレーン建設業の三和機工(神奈川)とのM&Aを実現しました。キナンは全国にて建機レンタル業を展開していましたが、本件でクレーン建設業という新規事業に進出しました。

会社譲渡の背景は、「事業承継・後継者不在」、「業界への先行き不安」、「成長戦略」などが挙げられます。一方で譲受けの傾向としては、「エリアの拡大」、「人材の獲得」「新規事業進出」などが挙げられます。

近年クレーン建設業界においてM&Aが急増しているのは、上述してきたクレーン建設企業を取り巻くマクロの課題とミクロの課題(ヒト・モノ・取引)が深刻化してきているからだと考えられます。そのような課題を解決し成長を目指す企業がM&Aの可能性を模索しています。

終わりに

ここまで見てきた通り、クレーン建設業界を取り巻く市場環境は大きく変化してきています。そのような市場環境の変化に対応するべく、譲受け・譲渡いずれにおいても経営戦略の一つとしてM&A戦略を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
M&Aへのご関心、ご質問、ご相談等ございましたら、下記のお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。



コンサルタント紹介


株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 建設業界専門グループ シニアチーフ 前川 拓哉

群馬県出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、新卒にて日本M&Aセンターに入社。最年少でシニアチーフに昇格。クレーン建設業界のM&Aを積極的にサポートしており、電材HD&Huationg HD(シンガポール)を手掛けるなど、多くの実績を誇る。