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M&Aレポート

-奇跡のV字回復をけん引したヒット商品を次の世代へ-「3秒に1個売れる生クリームパン」を生んだ老舗のパン屋さんの事業承継M&A

2022.5.19

  • 食品

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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援グループの松岡です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は2022年の1月に私がお手伝いさせていただいた生クリームパンメーカーの「清水屋食品」様の事業承継の事例の紹介をさせていただきます。M&Aをご決断された清水敬子様は、お父様、お母様から会社を承継された三代目の女性社長(当時)。どのようなお考えでM&Aをご決断されたのでしょうか。

パンの卸売からヒット商品メーカーへの大転換

株式会社清水屋食品は1959年に地域に愛されるパン屋を目指し、清水様のお父様がご創業。店先でロバを飼っており、時折そのロバで引き売りをする「ロバのパン屋さん」として地域では話題のパン屋さんであったそうです。その後、学校給食や自衛隊給食、新幹線のサンドイッチ販売など、BtoB向けの事業も拡大されましたが、原材料費の高騰や競合との価格競争などが相まって、非常に厳しい経営環境に置かれておりました。1998年、清水様が社長に就任されたときには、さらにコンビニの台頭などもあり、パンを作っても売れない苦難の時代を迎えます。

そこで考え方を変え、2010年に生み出されたのが「生クリームパン」。大手にはできない手作り感のある商品を、冷凍で全国に届けたいという想いから商品開発されました。パンの卸売をやっていたこれまでの経営の延長線上にはない方針の大転換で、周囲には反対の声も多かったようです。しかし、ここで変わらなければ会社がなくなってしまうという危機感から大胆な方針転換を決断されました。

冷凍してもふわふわの食感を損なわないような生地の配分や、食べた方の満足感を高めるような生クリームの分量など、非常にこだわって商品開発をされ、2020年には「3秒に1個売れる生クリームパン」として、コンビニや催事などで大人気の商品となり、2021年には清水屋食品様は年商で10億、従業員も100名を超える岡山県の製パンメーカーを代表する企業にまで成長されました。

ヒット商品を生んだ会社をどうやって次の世代に残していくか

「生クリームパン」のヒットにより業績面では非常に好調となった清水屋食品でしたが、清水社長には先行きに対する不安もございました。それは会社を誰に引き継いでいくか、という「事業承継問題」。清水社長は当時60歳、お子様は娘様が3人おり、皆様清水屋食品の取締役や従業員として勤務されておりましたが、承継の意思はなく後継者不在でした。取締役で勤務されていた次女の愛子様は、非常に優秀な方でしたが、清水社長のご苦労や会社の厳しい時代をご経験されており、「私には経営者は務まりません」と明言しておられました。

そこでM&Aという手法で第三者に事業を承継するという選択肢を考えられ、当社へお相手探しのご相談をいただきました。M&Aでお相手探しをされる中で、重要視されたポイントは「愛着のある生クリームパンという商品の美味しさを守りつつ、より進化させてくれること」「作り手である従業員の皆様の雇用を維持すること」の2点でした。

お相手探しをスタートして早々に複数の候補先が手を挙げ、熱烈なラブコールを清水屋食品に送りましたが、最終的には佐賀を拠点とし、九州を地盤とするアイスクリームメーカー・竹下製菓株式会社をM&Aのお相手として選ばれました。

竹下製菓様は、主力商品はアイスクリームと生クリームパンとは製造工程が異なるものの、「同じ冷凍品を扱う食品メーカーであることで強みも弱みも分かり合える」「竹下製菓様も女性社長で従業員の皆様もこれまでと同じく安心できるのではないか」という点で、M&Aで会社を託すのに最適なお相手だと、我々からもアドバイスさせていただきました。

もっと美味しい生クリームパンをより多くのお客様へ

最終的には竹下製菓様を選ばれた清水屋食品様でしたが、今後はどういった展開が期待されます。

・生産キャパシティの拡充
清水屋食品様は、生クリームパンのあまりの大ヒットから工場はフル稼働であり、生産余力がない状態でした。一方竹下製菓様は佐賀県と埼玉県に工場を有されており、清水屋食品の喫緊の課題であった製造キャパシティの拡充が一気に解決されることとなりました。また竹下製菓様としても、主力商品がアイスであるため、閑散期の冬場にも工場が稼働させられることは大きなメリットと考えられます。

・販売チャネルの増加
清水屋食品様は、食品商社経由での小売店への販売をメインとされていましたが、竹下製菓様の直接取引のある小売店への販路拡大や、工場拠点が増えたことでこれまで手薄だったエリアでの販売数増加など、販売チャネルの増加が見込まれます。

・コラボ商品の開発
両者とも非常に強いブランドの商品をお持ちの企業様ですので、コラボ商品の開発でより美味しい新商品が販売されていくと考えられます。

清水屋食品様がこだわりぬいて開発された「生クリームパン」が、より美味しくなってより多くの消費者に届けられることは、本件の担当者としても、「生クリームパン」の一ファンとしても楽しみでなりません。


いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界専門チームから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

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執筆者プロフィール


株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品業界専門チーム チーフ 松岡弘仁
Mail:matsuoka@nihon-ma.co.jp
TEL:070-4577-1404

熊本県生まれ。東京大学法学部卒業後、新卒社員として㈱日本М&Aセンターに入社。入社以来、食品業界支援室にて、上場企業から中堅・中小企業まで幅広くM&Aの支援を行っている。