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M&Aレポート

M&Aにおける物流・運送会社の企業価値算定方法とは【最新】

2022.6.3

  • 物流

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相続税評価の違いと手取りシミュレーションについて

企業評価について、多くの人が勘違いをしてしまっているように思います。
皆さまが想像していらっしゃる企業評価はおそらくM&Aの“正しい企業評価”ではありません。

中堅・中小企業の企業価値は上場企業のように公開された価格があるわけでもなく、もちろん決算書等の数字だけでは見えない価値もあります。結論から言いますと、答えがありません。それだけにM&Aでの企業価値の算定は正しい知識やデータ、ノウハウをもって正確に算出すべきものなのです。
本コラムでは企業価値の勘違いされやすい理由や、現状の物流業界での企業価値算定方法について解説を行います。

相続税評価とは違う!M&Aでの企業評価

まず、企業価値として大半の経営者が想像してしまうのは、顧問の税理士の先生などに主に算出してもらう“相続税評価のための企業価値”です。これは例えば親族内で計画的に贈与をして株を移す際や相続が発生したときに、その相続税を知るために必要な株価を表しています。詳細の算定方式は割愛しますが、基本的にはその企業の“今”に着目し、今の資産や配当額、利益額等に着目して算出します。

対してM&Aでの企業価値は企業の“今”に加えて“将来性”を加味された算出方法となります。一般的に今を正しく算出する相続税評価のための企業価値と、M&Aでの企業価値では将来性を加味している分、後者の方が高くなることが大半です。

M&Aの企業評価の代表例3手法を紹介

では一般的にM&Aの企業価値の算定方法はどのようなものがあるのでしょうか。
大きく分けて次の3つの手法があり、物流業界で主に使われている手法がコストアプローチ法です。もちろん、それぞれ着目する観点が違うため、一言で物流企業といっても手法を適宜変えていく必要もあるため、その点はケースバイケースとなり自社にとってどれが最適なのかはディスカッションをして確認をしてほしいと思います。

1. コストアプローチ法(企業の純資産価値に着目)
2. マーケットアプローチ法(株式市場における株価に着目)
3. インカムアプローチ法(企業の収益力に着目)

詳しい各評価方法の特徴については最後に参考として載せていますので、そちらをご覧いただきたいと思います。
コストアプローチは現実の財務状態と経営成績をバランスよく反映させることができ、中でも「時価純資産価額法」に「営業権」を考慮する方法が最も多く採用されています。

営業権というところがいわゆる将来性に該当する部分であり、税引き後の営業利益額を基準に将来の何年分(これは何年という基準があるわけではなく、相場による)かを加味して価値に組み込むという考え方です。

営業権の算定で重要な「本来の」という考え方とは?

ここで大切になってくるのが修正した純資産額と営業利益です。それぞれを正しく評価することで算出できますが、これにおいてもいくつか注意点があります。

例えば、純資産ですが、おもに固定資産の価値、売掛金やその他資産の回収可能性、保険積立金やゴルフ会員権などの価値について再評価が必要なことがほとんどです。したがって、帳簿上の資産と、修正後の資産は大きく変化することがあります。

例えば、土地などが最たるものですが、帳簿上5000万円の価値として固定資産台帳に記載されていても、実際の土地の売買価格を調査してみると、2000万円の価値でしか取引できないという場合があります。その際は企業価値算定時の純資産が3000万円帳簿と比べて減額となります。

反対に保険の積立金などは帳簿上が1000万円なのに、保険会社に解約返戻金(解約するといくらもどってくるのか)を確認すると1300万円と、少し高くなっているケースが多く、その際は純資産が300万円増加することとなります。このように各資産について時価に修正をし、“本来の”純資産を算出することが大切です。

さらには営業利益についてもかなり注意が必要となります。売上と経費について細かく検証が必要となってきます。単に接待交際費等の不要経費を削ることはよくある話ですが、物流業界ですとコンプライアンスの是正による費用の変化がとても多くなっております。

今でも多い名義貸しについてはしっかりと正社員として雇用した際の社会保険料を費用として見込まなければいけないですし、労務時間超過の際はそれを是正した際の費用や人員増を見込まなければいけません。

その他車庫飛ばしに対してどのような対応をすればよいか、償却制ドライバーについてどのような対応をしなければならないか、M&Aとして相手から利益とみられるものとそうでないものは何か、これらを業界特有な事情を考慮して正確に評価をし直さなければなりません。これらは物流業界に精通したコンサルタントとディスカッションをすることで項目を教えてもらうことができます。

この点をしっかりと精査し、自社がどのような評価になるのかを事前に知っておくことで、のちのちの相手との認識の差やトラブルなどを極限まで無くすことができます。

どのような点が論点になるのか、修正点になるのか、当社の無料サービスの簡易評価で確認してみてはいかがでしょうか。
当社ではグループ企業に企業評価総合研究所という企業評価のための企業があります。過去のM&Aのデータやノウハウ、事例などの情報が蓄積されており、正しい企業評価の情報を提供しています。さらにはそこに物流業界の専門チームから、業界特有の論点等を確認することでより正確な情報を得ることができます。

まとめ

昨今では企業の内情を良く知らずに決算書等の情報だけで“おたくはいくらで売れる”などと誘われるケースが多いと聞きますが、上記をしっかり精査しないことには本来の正しい数字は算出できません。上記のような情報に惑わされてしまいますと、仮に相手が出てきて、先に進んでも買収監査等で大きく減額、などの事態になってしまうことになります。いかに事前に正しく情報を集めるかが大切であり、M&Aの成功率が大きく変わります。

物流業界は今、大きな変革期にあり、M&Aが盛んにおこなわれています。それだけに、正しい方法で正しいM&Aの企業評価を行い、トラブルをなくし、企業がよりよい方向に向かってほしいと切に願っております。私たちはその一助となればとおもい、これからも情報提供し、物流業界の発展に寄与したいと考えております。

M&Aへのご関心、ご質問、ご相談等ございましたら、下記のお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
▼お問い合わせフォーム

※参考 M&Aの評価手法代表的な3手法

1. コストアプローチ法

・簿価純資産価額法
簿価純資産価額法とは、帳簿上の資産から負債を差し引いて株主持分を計算する方法です。計算方法として極めて容易な方法ですが、一般的に取得原価主義に基づいて帳簿上で記載されている資産・負債の額は、現時点の価値を表示しているとは言いがたいため、株式売買取引目的で株式価値を計算する局面で直接利用されることは多くなく、重要性の小さな子会社株式の計算等で利用されています。

・時価純資産価額法
時価純資産価額法は、企業の資産・負債を時価評価して、差額の時価純資産価額を株主持分として計算する方法です。これによる計算は、簿価純資産価額法よりも真の経済的実態を表していると言えますが、計算には一定の作業が必要になります。また、将来の企業価値を加味した手法とは言えません。

・時価純資産+営業権法
これは、時価純資産に、会社の超過収益力である営業権を考慮することにより、単なる清算価値あるいは再調達価値のみならず、将来の企業価値を加味した継続企業価値を表す方法です。

2. マーケットアプローチ法

・市場価額法
市場価額法とは、株式市場における株価を基に株式価値を計算する方法です。上場している会社や株式の取引が活発に行われている会社の少数持分株式の売買を目的としたときに適用できます。対象会社の株式は証券取引所等の株式市場で取引されておらず、また最近における独立第三者間の取引事例がないため、中堅・中小企業のM&Aでは市場価額法はほぼ手法としては採用できません。

・類似業種比準法
類似業種比準法とは、国税庁が業種ごとに公表する1株当たりの配当金額、1株当たりの利益金額および1株当たりの純資産価額とそれに対応する株価をベンチマークとし、対象会社の1株当たりの配当金額、1株当たりの利益金額および1株当たりの純資産価額から対象会社の株式価値を計算する方法で、相続税・贈与税の計算に利用されるケースが多い。
類似業種比準法は、相続税の評価通達に定められた未上場株式の計算方法であり、相続対策や同族間での株式の移動を検討する際に適した計算方法だが、独立した第三者間の取引価格を計算する際に利用することは適当ではありません 。

・類似会社比準法
類似会社比準法は、基本的な発想は類似業種比準法と同様で、対象会社と規模・業種が類似する会社を数社選定し、株価・利益・純資産等をベンチマークすることにより、株式価値を計算する方法です。そのため、類似会社比準法を採用する場合には、対象会社と規模・業種が類似する会社を複数選定できることが求められます。

3. インカムアプローチ法

・収益還元法
収益還元法とは、企業の予想利益を資本還元率で除して株式価値を計算する方法で、株価計算のためには、信頼性の高い利益あるいはキャッシュフローの計画値が必要となります。そのため、詳細な事業計画がなければ採用が難しく、この株価計算方法は中堅・中小企業では基本的に採用できない手法です 。

・DCF法
DCF法は、企業が将来獲得すると期待されるキャッシュフローを現在価値に還元した合計額を基礎に株式価値を計算する方法だ。現状、利益が出ておらず純資産も少ない研究開発型ベンチャーにおいては、他の計算方法によると株式価値がゼロあるいは少額となってしまいます。このような場合、事業計画を基に、リスク要素を相応に反映させることにより、DCF法による試算を検討することがある。なお、この方法を採用するためには少なくとも3~5年の一定の信頼できる事業計画が必要となるため、事業計画の精度から考えると、一般的な中堅・中小企業では利用しづらい方法と言えます。

・配当還元法
配当還元法では、企業からの配当金額を資本還元率で除して株式価値を計算する。収益還元法が企業の収益獲得能力に着目しているのに対し、配当還元法は企業の配当金額に着目して、その投資効率の面から株式価値を計算する方法です。したがって、事業のシナジーを求める通常のM&Aにおいて採用されるケースはほとんどありません。

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。2019年度全社MVP・全社最高売上を記録。

業界再編部 部長
物流業界専門グループ
山本 夢人