MENU
CLOSE

M&Aレポート

失敗しない!M&A仲介会社の選び方 アドバイザリー契約の注意点も解説

2022.6.10

  • 物流

Facebook Twitter LINE

売り手が専任・着手ありの方が良い理由について

今、日本の中堅・中小企業は時代の流れとともに大変革が求められている状況です。毎年約5万社が倒産または廃業をしており、そのうち約3万社が黒字廃業をしているといわれます。中小企業庁によると、2025年には中堅・中小企業の約245万社もの経営者が70歳を超え、その半分の127万社は後継者が決まっていないと見込まれています。後継者がこのまま決まらない状態であれば廃業せざるを得ないが、その約半数は黒字廃業と見込まれているのです。

中堅・中小企業の後継者問題の解決や業務の効率化、企業の成長を図る手段としてM&Aに対するニーズが高まるにつれ、M&Aの支援業務を行う事業者の数も急激に増えてきます。その結果として、M&Aの知識や経験が少ない事業者が乱立してしまっているのも事実であり、依頼をした企業との間でのトラブルなども増えています。

では、いったい何を基準にM&A支援機関を選べばよいのでしょうか?
本コラムはM&A支援機関の選び方について解説を行っていきたいと思います。

一番初めにM&A支援機関の登録事業者かの確認を!

まず大前提として知っていただきたいことは中小企業庁による“M&A支援機関の登録制度”です。これは中堅・中小企業が安心して支援機関を選ぶことを目的とされた制度であり、中小M&Aガイドラインを遵守するなど、一定の条件を満たした企業のみが登録できる制度となっております。

M&Aを支援するという点において、品質等を担保するのはもちろんのこと、事業承継、引継ぎ補助金を受けることができるのは、登録されている機関に支払ったもののみとされており、利用者にとってもメリットを得られる制度となりました。

この制度の公募が始まった2021年8月から同年9月までに最終的に登録されたFA及び仲介会社は全部で2,278件となりました。利用者からするとまだまだ候補企業が多く、選定に困ってしまうのが現実となっています。
命や家族の次に大切な自分の会社をどのような相手に譲るのか、オーナーとしては最高の相手とトラブルなくスムーズに進められることが大切であると考えています。

これを大前提としてどういった支援機関を選べばよいのか、各社のアドバイザリー契約の違いを知ることが重要となります。大きく分けて2つ、専任か非専任か、着手金があるか無いかが大きな違いなのではないでしょうか。

専任か非専任か?

これは候補先探しを一つの支援機関にゆだねる(専任)場合と、複数の支援機関に同時にゆだねる(非専任)場合を示しています。

結論としては専任をお勧めします。これは情報管理の観点と進めていくうえでのトラブル回避のためにとても重要なこととなります。

M&Aは不動産の売買とは違い、単に金額が高いからいいわけでは決してありません。会社として、従業員として、もちろんオーナー個人など、ステークホルダーであるあらゆる方々の幸せを総合的に考えたうえで相手を判断し、結婚していくこととなります。そのため、常にトラブル等を回避して完璧なM&Aを行っていかなければなりません。

まず、情報管理の観点からお話しますと、M&Aにおいてとても怖い事態が“情報漏洩”です。“情報漏洩”が起きた時のことを想像してみてください。
知人から「社長の会社が売りに出ているんだって?」と言われた際に、残念ながらどこからか情報が漏れてしまっていることを知ることになります。その際に非専任であると、いろいろな仲介会社に情報公開している状況であり、その漏洩源の特定が非常に困難を極めてしまいます。情報漏洩が仮に起きた際には即座の止血(それ以上漏洩を広げない)が大切であるにもかかわらず、それらがなかなかできず、取引先や従業員等を不安にさせてしまうこととなります。

その時に支援機関が協力してくれればよいですが、非専任であるとオーナーがすべての支援機関と連絡を取り、その漏洩源の特定のための調査を依頼し、その結果をもって漏洩源を判断するという作業となります。当然、支援機関に対応のスピードの差もありますし、企業ごとの情報管理の感覚やルールが違っており、足並みがそろわないことから、対応が後手後手に回ってしまうこととなります。

結局はオーナー個人が火消しに奔走しなければいけなくなるのです。これが専任である場合、オーナーとしても調査を依頼する会社が1社であり、情報管理の方法、提案方法や提案先についてもわかっているため漏洩源の特定が早期にできるようになります。もちろん、昨今はM&Aがこれだけ浸透している時代ですので、本当に根も葉もないうわさを流す方々もいると聞きます。調査の結果、根も葉もないところからの話だったということも珍しくはないのです。
こういったときに大切なのは、もやもやした感情がしっかりと晴れるかどうかです。そのような対策の一環として専任をお勧めしたいです。

もう一つの観点がトラブル回避です。非専任の場合にオーナー自身が大変なことは“自分自身でさまざまな基準を作って管理しなければいけないこと”です。非専任でありがちな事例として前提が違っていたということがあります。

例えば候補先A社が出してきた条件が1億、B社が出してきた条件が8000万円、オーナーとしては条件のよいA社で交渉をすすめ基本合意をし独占交渉権を与えます。そして買収監査をしたのちに、最終契約直前で大きな減額をされ、最終的には7000万円の提示がなされてしまった、という事例です。慌ててB社に候補を変えようとして話をするも、B社はもうすでにほかの企業のM&Aを進めていくこととなってしまっていたり、一度振られたことで熱が冷めてしまっていたため再度交渉に上ることはありませんでした。そもそも買収監査で膨大な資料を自分一人で集め、100以上の細かい質問に対応をした後で、これをまた再度やるのかと考えると精神的にもつらく、妥協して元々のA社で最終契約を締結することとなりました。

これはとても不幸なことだと思います。ただし、この事例で何が良くなかったのでしょうか。それは非専任であったことが良くなかったのだと思います。
A社を紹介した支援機関やB社を紹介した支援機関が悪いわけではありません。それを依頼したオーナーも悪いわけではありません。そもそものスタートが悪いだけです。

この手のトラブルは非専任の場合に多く、支援機関が違うことでその提案の質(重要な論点を見逃さずに提案書に織り込んでいるかどうか等)が変わってきます。そうすると当然価格を算定する根拠なるものの基準にずれが生じてしまうのは当たり前です。そのずれがあるのかないのかをジャッジするのは非専任の場合オーナー自身の役目となります。一つの支援機関に頼めば、このようなことはまず起こることはなく、同じ提案書で提案しているため前提にずれが生じることはほとんどありません。

以上のように非専任であれば条件調整やスケジュール管理、提案状況の確認等はすべてオーナーがやらなければならず、とても大変な作業となります。専任であればそういったことはすべて1社の支援機関にお任せすることができ、オーナー自身も業務多忙な中、安心して取り組んでいけるのです。

着手金があるか無いか

アドバイザリー契約時に着手金を支払う必要のある場合とない場合ですが、当然ない場合であれば気軽に相手探しを依頼できるというメリットがあります。しかし、着手金は一つの譲渡意思の表れでもあり、譲り受ける側からしても着手金を支払っていない案件は譲渡意思が固いのかどうかがわからず、結果的に譲受企業も同じスタンス(譲り受ける意思が固くない状況)での交渉スタートとなりがちです。意思の緩いもの同士がお見合い等をしたとしても、お互いの本気度が低いために決定打がなく、単に時間の無駄になってしまうというケースも多いでしょう。

また、支援機関側からしても無料で取り組みやすく、依頼企業が多くなることは良いのですが、当然相手の見つかりやすい譲渡案件から取り組んでいくため、本来しっかりとマッチングをして相手を探さなければいけない案件が優先度が低く、場合によってはほったらかされているケースも多いと聞きます。無料であるがゆえに譲渡オーナーも強くは言えないという悪循環もあるようです。

もう一つの観点がどれだけ最初に企業調査と企業評価ができているか、という点です。着手金を必要とする支援機関はそれだけコストをかけて提案書等を作っています。弁護士や会計士、社労士や司法書士、さまざまな目を通して調査し、のちのちのトラブルを回避するための論点整理、正しい企業評価等をすることができます。

M&Aで一番不幸なことはトラブルが起きることだと思います。ただし、それらは本来大半が事前の調査等で回避できるものであり、だからこそ最初にコストをかけてやる意義があるのです。

まとめ

以上のように支援機関にはそれぞれのスタンスやアドバイザリー契約の内容に違いがあり、その理由やそこから何が起こるのかなどをしっかりと理解したうえで進めないと、あとあと思っていたことと違う、と後悔してしまうのはオーナーの皆様かもしれません。大切な自身の会社を最高の相手と組んでいくためにも、支援機関は慎重に選んでいただきたいと思います。

M&Aへのご関心、ご質問、ご相談等ございましたら、下記のお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
▼お問い合わせフォーム

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。2019年度全社MVP・全社最高売上を記録。

業界再編部 部長
物流業界専門グループ
山本 夢人