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M&Aレポート

プラント工事業界のM&A動向

2022.6.20

  • 建設・不動産

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日本国内のプラント需要の落ち込みによって、全国のプラントにて廃止や機能停止が相次いでいます。再生可能エネルギーへのシフトや脱炭素化の流れは加速しており、プラント工事業界は今後も事業環境が大きく変化していくことが予想されます。本コラムでは、プラント工事業界の動向を踏まえたうえで、プラント工事業界M&Aの特徴を捉え、業界経営者はどのような立ち回りが求められるのかを考えていきます。

プラント工事業界の動向

まずはプラント業界の需要についてマクロの視点から確認していきましょう。下記は経済産業省が統計しているプラントエンジニアリング業の国内受注高の推移です。国内受注高は1991年のバブル崩壊後、リーマンショック、東日本大震災を経て右肩下がりに推移をしてきました。そして、震災の翌年である2012年の底を打ち、現在は若干回復傾向にあります。しかしながら、実際にはここ数年、全国にてプラントの統廃合や機能停止が相次いでいます。また市場規模としても統計を開始した1994年は9.8兆円市場だったものが、直近2021年では6.5兆円市場にまで減少しています。

出典:経済産業書「特定サービス産業動態統計調査」

数あるプラントの中で最も動向が激しいのが、石油化学系のプラントです。下記は、経済産業省が発表している国内向け石油製品販売量の推移です。国内向け石油製品販売量はは2012年にピークを迎え、過去10年間で販売量は約25%減少しています。

出典:経済産業書「資源・エネルギー統計」「燃料油計」

上記の通り、国内需要の落ち込みによって、石油元売り会社が再編され、全国の石油化学系プラントにて停止や廃止が相次いでいます。

出典:各社IR資料より日本M&Aセンター作成

ミクロの視点でプラント工事業界が抱える課題を考えると、①取引先の偏重、②事業ドメインの集中、③後継者不在が考えられます。
一つ目の課題は取引先の偏重です。プラント工事を手掛ける中堅・中小企業は、商圏が同一地域に集中していることで取引先が偏重している傾向にあります。上述したように、国内のプラントの統廃合や機能停止が相次ぐ中で、プラントそのものがなくなってしまうリスクが潜んでいます。
二つ目の課題は、事業ドメインの集中です。企業規模に関わらず、石油化学系・製品系・エネルギー系・環境系など特定の種類のプラントに特化をしている企業が多く、事業ドメインの分散が出来ていないことがほとんどです。
三つ目の課題は、後継者不在です。各地のプラントにて仕事を請け負う中堅・中小企業において、後継者問題を抱える企業は多く、M&Aを活用した事業承継について当社にご相談をいただくことが増えております。特殊な作業を施工する企業や特別な技術を持った企業が後継者不在のために廃業していくことは、日本の基幹産業を支えるプラント業界にとって大きな問題だと考えられます。

プラント工事業界M&A動向

プラント工事業界におけるM&Aは増加しています。下記はプラント業界におけるM&A件数の推移です。ご覧の通り、2015年にはプラント業界のM&A件数は8件にもかかわらず、2021年には約3.8倍の31件となっており、プラント業界におけるM&Aが急増していることが分かります。

出典:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成 

プラント工事業界の代表的な成約事例

2022年3月
【売】宇部興機 ×【買】日工
⇒日工(兵庫)は、鋼構造物・産業機械の設計・製作・据付・設備保全を手掛ける宇部興機(山口)の全株式を取得しました。日工グループは新たな事業として環境リサイクル事業に注力をしており、宇部興産の環境分野での高い技術力とノウハウがシナジー効果を生み出すことが想定されるため、本件実行に至りました。

2020年7月
【売】渡部工業 ×【買】高田工業所
⇒高田工業所(福岡)は、産業プラント配管工事やメンテナンスを手掛ける渡部工業(北海道)の全株式を取得しました。プラント建設やメンテナンス事業を展開する高田工業所は北海道地区へ進出し、プラント事業の事業基盤強化、拡大を目指します。

会社譲渡の背景は、「事業承継・後継者不在」、「採用難による人材不足・従業員の高齢化」、「業界の先行き不安や資金繰りへの不安」、「大手資本力やブランド力の獲得」などが挙げられます。一方で譲受けの傾向としては、「エリア拡大」「人材獲得」「内製化の実現」などが挙げられます。
プラント業界においてM&Aが急増しているのは、上述してきた業界全体が抱えるマクロの課題(プラント需要の減少)と、各事業者が抱えるミクロの課題(取引先の偏重、事業ドメインの集中、後継者不在)が深刻化してきているからだと考えられます。そのような課題を解決し成長を目指す企業がM&Aの可能性を模索しています。

具体的なアクション

まずはM&Aについて正しく知ることが大切です。今回事業承継や成長戦略を目的とした、会社を戦略的に譲渡するM&A戦略について解説いたします。

会社を譲渡するM&A戦略には、準備と実行の2つのフェーズが存在します。

①準備:「現状認識」と「選択肢の具体化」
・第三者目線で自社の強みや課題を認識する。
・株価評価手法や自社の株式価値を知る。
・どんな相手を希望するのかを考える、どんな相手が関心を持つのかを知る。

②実行:「M&Aの遂行」
・具体的な候補先との条件交渉を行う。
・リスク(財務、労務面)を洗い出す。
・契約締結を行う。

M&Aを成功させるには、準備が何よりも重要です。なぜなら早い段階から準備することで、適切なタイミングで実行のフェーズに進めるからです。しっかりと準備をしておくことで、満足のいく条件や希望のお相手を見つけることに繋がります。下記はM&Aにおけるよくある失敗例です。いずれも原因は準備を始めるのが遅かったことに集約されます。

(失敗例1)これまで業績は良くタイミングが来た際に相談しようと思っていた。会社の業績悪化といった外的要因からM&Aを検討し始めたが、満足のいく株価でのお相手が見つからなかった。

(失敗例2)社長自身の体調の悪化や後継者が突然継がないことになり、M&Aをせざるを得ない状況となった。候補先は見つかったが、時間が決まっているため、条件やお相手先を妥協しなければならなかった。

(失敗例3)自身が65歳引退したいと思い、その直前からお相手探しを始めた。お相手を探し始めた際には業界のM&A市場は成熟しており、お相手探しが難航した。

ここまで見てきた通り、M&A戦略が成功するかどうかは会社の業績やM&A市場の動向などによって大きく左右されます。そのため、M&A戦略を成功させるには、早い時期からの準備が非常に重要となってくるのは間違いないのではないでしょうか。

終わりに

ここまで見てきた通り、プラント工事業界を取り巻く環境は大きく変化してきています。さらに加えて、医薬品プラント市場の拡大や風力発電・液化天然ガスなど新たなエネルギー需要の拡大など業界のトレンドは大きく転換しつつあります。そのような市場環境の変化に対応するべく、経営戦略の選択肢の一つとしてM&A戦略を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

本コラムや建設業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。また買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。


コンサルタント紹介



業界再編部 建設専門グループ 清水 貴章 
新潟県出身。青山学院大学経済学部卒業後、損害保険ジャパン株式会社にて保険代理店向けのコンサルティング営業に従事し、日本M&Aセンターに入社。現在、建設業界専門グループに所属し、建設業界の中堅・中小企業のM&Aを支援している。