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M&Aレポート

中堅食品企業によるASEAN企業へのクロスボーダーM&A

2022.6.20

  • 食品

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日本M&Aセンター食品業界支援室の松原です。
当コラムは日本M&Aセンター食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報をお届けします。
今回は、最近増えつつある国内の中堅食品企業によるASEAN企業へのM&Aについてお伝えしてまいります。

「胃袋」が減り続ける国内市場

日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに人口減少に転じ、現在では毎年20万人~30万人規模で人口が減っています。20万人~30万人と言えば、日本の地方の中規模クラス都市が毎年一つずつ消えていくのと同じです。人口が減ればそれだけ食料品も住宅も車も家電もサービス関連も、何もかも消費が減ります。日本人の平均的な胃袋のキャパシティは、平均1日当たり2,226キロカロリーですので、国内の人口減少に伴い、国内の食料品の消費量が年々減少しています。

食品関連業界はこのような市場縮小により年々競争が激化してきています。消費縮小のほかに、原材料費の高騰や、人口減による人手不足と人件費高、設備老朽化に対応するための投資増加等により、2,30年前に比べると、食品関連業界の経営が段違いに難しくなってきています。

一方で、6億6,700万人の人口を有するASEANでは、人口も経済も劇的に成長しており、国内のみでの事業展開では成長が見込めない日本の食品関連企業にとって、活躍できる巨大なマーケットが存在しています。

ASEAN企業に対するクロスボーダーM&A

ASEANは東南アジア諸国連合の略で、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、ラオス、フィリピン、カンボジア、ミャンマー、ブルネイの10カ国が加盟している地域経済共同体です。人口ボーナス期を迎えている国が多く、世界の消費を牽引する地域です。

前述の日本国内での商品、サービスは人口減により消費が縮小しているので、多くの企業がASEANに事業展開の舞台を移してきています。資本を投入せずに現地の同業者と企業提携を行う進出方法と、自社で資本を投じて単独進出を行う進出方法がありますが、前者では提携の真剣度が低いケースが多く、後者では事業を軌道に乗せるのに時間がかかるケースが多いです。
そこで第3の進出方法として、現地企業への資本参加、言い換えれば資本移動を伴う提携(M&A)が挙げられます。ASEANの企業に資本参加し、経営に参画することで、単独進出よりも迅速に現地マーケットにリーチでき、自社の戦略に基づく経営が可能になります。

ASEANは日本同様にファミリービジネスが多く、様々な理由により子どもたちが家業を継がないことがあります。平均寿命が日本よりも短いこともあり、50歳代半ばから引退を考え始めます。後継者不在企業のオーナーの多くはM&Aを事業継承の手段として考えており、外国資本の受け入れに前向きな経営者も多いです。より資金力、より技術力を持つ企業と組むことで自身が引退した後も企業成長できるので、ASEANではM&A熱が高まりつつあります。

ASEAN諸国では国ごとにM&Aに関するルールが異なっており、外国企業が投資できる割合を限定する外資規制や、慣習的に二重帳簿の作成が多く財務情報の信用度が低い国があります。目覚ましい経済成長を遂げるフィリピン、タイ、インドネシア、ベトナムは上記の外資規制が厳しく、会計の信頼性が低いので進出時に慎重に事前準備する必要があります。対照的に、シンガポールやマレーシアは外資規制が緩く、会計の信頼性が高いので安心して進出できるが、経済成長が緩やかです。

投資スキームや買収監査を注意すべき点に関しましては、以前に当社食品業界専門グループの白鳥が執筆したコラムがありますので、ご興味のある方はぜひとも以下リンクの記事をお読みください。
▼食品事業の海外投資におけるメリット、デメリットと注意点

中堅企業によるクロスボーダーM&Aが増加

日本企業による海外企業へのM&Aは、これまで大手企業を中心に進められてきました。2000年頃から国内の業界再編でM&Aに自信を深めた大手企業は、2006年頃から海外に目を向けはじめました。少子高齢化で縮小傾向にある国内市場より、成長する海外市場のほうが業績拡大のチャンスに満ちていました。そこに直接飛び込むには、すでに現地でのシェアをにぎっている既存の大手企業を買収する海外M&Aが最善の道でした。

2011年の東日本大震災の影響で電力コストが上がったことも脱日本に拍車をかけ、それ以降、海外M&Aの件数は右肩上がりとなります。食品大手によるM&Aとしては2014年のサントリーによるアメリカ蒸留酒最大手のビーム社の譲受け、2019年のアサヒグループによるオーストラリアのビール大手のカールトン&ユナイテッドブリュワリーズの譲受けのような買収金額が1兆円を超える事例や、業務用食品卸大手のトーホーが2015年の初めての海外M&Aを皮切りに6年で7社買収を行った事例が挙げられます。

経済の長期低迷で閉塞感を感じていた日本企業は、この10年間で海外M&Aという武器を手にして、成長してきました。そして今、大手企業に続く形で、中堅・中小企業が海外M&Aに本格参戦しようとしています。

私たち食品業界専門グループは年間1200社もの食品関連業界の経営者と面談しており、中堅の食品関連企業の中でASEAN企業に対するクロスボーダーM&Aのメリットに気づき始めた企業が増えてきています。ASEANで物を安く作って日本で販売するという考えしか持たなかった経営者は、日本では到底体験できない巨大マーケットでの事業成長に乗り遅れまいとASEAN企業とのM&Aに関心を持つようになり、コロナ禍の出国規制が緩和された今、譲渡企業への訪問に向かっています。

「資金も人材もそろっている大手企業なら直接現地法人を作ればいいかもしれないが、中堅企業がASEAN進出するには現地の後継者不在の同業者と資本提携することで、人材や販路の獲得に時間がかからないしリスクが低い。」

「国内では、20年間必死に事業拡大を頑張ってきたが、二桁成長を経験したことはなかった。今回のM&Aで年々15%成長を遂げる企業と仲間になり、成長マーケットへの進出を果たしたい。」

「同じアジア人で、心理的な距離も近いASEAN企業に対するM&Aはいわば勝ち馬に乗るようなもの。日本の高品質な食品製造のノウハウをアジアに広め、ローカルなシェア拡大を図りたい。」

私が担当している売上30億円~100億円の数社の中堅食品企業の社長たちが売主様とのトップ面談や現地見学後に実際に話したコメントになります。

日本M&AセンターのASEAN拠点

日本M&Aセンターは、海外M&Aを検討しようとする中堅・中小企業向けに、ASEAN企業とのM&Aという選択肢を創出した自負を持っています。日本国内でM&Aサービスの総合企業として多くの企業様のM&Aをお手伝いしてきた当社は、2016年にシンガポール拠点を設立後、ゼロから海外ネットワークを構築してきました。その後マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシアに次々と拠点を開設し、現地企業の譲渡希望案件を数多く抱えています。現地企業でも国内同様に当社内の会計士や弁護士ら専門家チームが常に分析しており、案件の品質にこだわっています。
ASEAN進出へのご関心があればぜひともお問い合わせください。

いかがでしたでしょうか?
2週間に1回に渡って今後も食品業界支援室から最新の業界情報をお届けさせて頂きます。
次回のコラムは食品業界支援室・高橋よりお送りいたします。

食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。
また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

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執筆者プロフィール

 
株式会社日本М&Aセンター
業界再編部 食品業界専門グループ チーフ 松原鵬博
Mail: t.matsubara@nihon-ma.co.jp
TEL:070-2493-4494


東京外国語大学外国語学部卒。日本語、中国語、英語が堪能。大和証券の本店営業部で中小企業の資産運用コンサルタントを経験した後、食品製造会社を起業、メディアでも話題に。日本M&Aセンター入社後は食品製造業を経営していた経験を活かし、食品業界支援室で食品製造企業や外食企業のM&Aを支援。海外進出や上場支援、補助金関連のアドバイスにも強い。