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M&Aレポート

【2022年最新】物流M&Aの基本合意契約書・気を付けるべきポイントを解説

2022.7.1

  • 物流

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近頃は、「M&A」という言葉をよく耳にするようになりました。しかしながら、M&Aではトラブルが発生してしまう場合もあり、多くのケースにおいて誤った進め方をしていることが多いです。物流業界では近年、成約数が多くなっているものの、成功数は増えていないのはここに大きな原因があります。

成功率を上げるために、手順が重要であることは、先のコラムでお話した通りです。
▼【図解】物流業界M&Aの進め方!仲介で進めるうえでの注意点を解説|トラブル事例3例

今回のコラムでは、その中の「基本合意」にフォーカスをしてお話していきます。

基本合意とは

基本合意書は、最終の契約に先立ち、大方な条件が確定したタイミングで締結をします。具体的には、トップ面談を実施後、1社との交渉に入ったタイミングでデューデリジェンス(買収監査)の前に締結をします。英語ではLetter of IntentやMemorandum of Understandingと呼ばれ、頭文字をとってLOIやMOUといった略称が用いられることもあります。基本合意は、譲渡企業と譲受け企業との2者間の契約になります。契約主体に仲介会社などは入りません。両社が初めて直接結ぶ契約事になります。そのため、仲介で進めている場合、秘密保持契約などは仲介会社との秘密保持契約を締結していたものを、改めて直接相対で締結をする文言なども入っています。

主な構成としては、下記のようなものが一般的です。

・M&Aスキーム(100%株式譲渡なのか、事業譲渡なのか、会社分割かなどを明記します)
・譲渡価格(株式の価格はいくらなのか明記します)
・スケジュール(買収監査、最終契約の締結、クロージングの日程などを決めます)
・役員の処遇(譲渡オーナーやそのほかの役員についての処遇を定めておきます)
・その他附帯合意(非事業用の資産の処分などについて定めます)
・保証債務の解消等(譲渡オーナーの保証債務の解除について明記をしておきます)
・独占交渉権の付与(譲受け企業が独占的に交渉の出来る期間を明記します)
・秘密保持義務の設定(改めて相対での秘密保持を明記します)
・一般条項(実費の負担や、紛争についての第一審の管轄などを明記します)

基本合意書で重要なこと

基本合意書の締結で最も重要なことは、「問題の先送りをしない」ということです。
先にあげたような項目を飛ばすことなく、内容についても、定められるのであれば、細かく定めるということです。
「問題の先送り」とは、例えば、下記のような事です。

・譲渡価格は決まっていないため、買収監査をもって決める前提で基本合意に記載をしない
・役員の処遇については、最終契約までに決定をする
・非事業用の不動産の扱いについて決定をしておかない

「問題の先送り」は「買収監査で決めましょう」という言葉に置き換えられます。買収監査にて決定をすることが悪いことではなく、その際の議論のベース、土台となるものがないと議論も成り立たないのです。

例えば、買収監査で売掛金の回収見込みのないものが発見されたケースを考えてみましょう。
当然価格の交渉が起きるわけですが、①基本合意にて価格を定めていた場合②買収監査をもって価格提示をする場合で、議論のしやすさを比べます。

①基本合意にて価格を定めていた場合
基本合意にて価格を定めていた場合は下記のような議論が行われます。
買収監査以前のタイミングで、20XX年3月期の決算書に基づいて、基本合意書では○○円で提示をしています。という議論の土台がありますので、「買収監査にて、売掛金の回収見込みが△△円ないことが判明したので、その分を株価から減額をさせてください。」という交渉はロジカルになります。

②買収監査をもって価格提示をする場合
①に対して買収監査をもって価格提示をする場合は、売掛金の回収見込み無しの部分を考慮しながら、価格を始めて提示をされることになります。譲渡企業側としては、本来なんとなく想像をしていた(前段階の口約束の交渉の価格)よりも低い額が、買収監査後に提示され、それが初めての正式な譲受け企業の意向という形になります。売掛金のみに限らず、様々なものが反映された状況で株価の提示をされるわけなので、受け取り方としては、「案外低く評価をされてしまった」と捉えられるかもしれません。

物流業界の譲渡企業(売り手企業)が気にするべきポイント

・譲渡価格は適正に評価されているか?
仲介でM&Aを進めている場合には、株価の試算について説明があるかと思いますが、譲受け側の企業がどのようなロジックで譲渡価格を検討しているかを把握しておくとよいでしょう。

・スケジュールは適当か?
基本合意後のスケジュールが記載をされているかを確認しましょう。おもな事項としては、買収監査、最終契約書の締結、クロージングについての日程になります。規模にもよりますが、通常は、基本合意後1~3カ月以内程でクロージングまで進めることになります。また、それにともない有効期限についても、確認をする必要があります。有効期限は、独占交渉権の期限と同義ですが、通常2~6カ月ほどが目安とされます。有効期限までの期間が長すぎると交渉が間延びしてしまい、その分、譲渡企業としては他の譲受け候補との交渉が出来ない期間になってしまうので、譲渡側に不利になってしまいます。

・従業員についての記載があるか?
従業員(もしくは役員)についての記載事項はありますでしょうか。従業員の労働環境の維持の記載は必須です。更に、キーマンと言われている方については、別途対応を考えておく必要があります。例えば、主要な荷主の仕事を獲得してきたキーマンの方が、M&Aでショックを受けて急遽退職をしてしまった!となれば、譲渡企業・譲受け企業共に困ってしまいます。そのため、事前に開示をする、M&A後の処遇はこのような形にする。といった具合で定めておくことが重要です。

物流業界の譲受け企業(買い手企業)が気にするべきポイント

・有効期限は適当か?
先ほど、譲渡企業のパートで記載をしましたが、譲受け企業にとっても有効期限は確認が必要な項目です。譲受け企業としては、逆に短すぎると不利になってしまいます。例えば1カ月しか有効期限がない(独占交渉権の付与期間がない)とすると、その間に交渉を済ませることは難しいです。スケジュール感と見合った、有効期限を検討しましょう。

・特有の論点について
物流企業の譲受けは、その企業特有の論点と向かい合う必要があります。グレーな運行をしている企業や、当たり前のように法令を遵守していない企業を、その後のトラブルを回避しながらM&Aで譲受けしていくには、専門性を持った契約書作成をしていく必要があります。「問題の先送り」をせず、基本合意の段階で、個別論点についても、対応をしておくことが大切です。日本M&Aセンター物流業界専門グループでは、このあたりのノウハウを蓄積しています。

失敗例をご紹介

・譲受け企業に偏った基本合意書を見抜くことが出来ず大失敗!
冒頭にお話したように基本合意書は、譲渡企業・譲受け企業の両社が相対で初めて契約をするタイミングです。
最終契約も、この基本合意を骨子として作成をしていきますのできわめて重要ですが、その重要性を認識せず、譲受け企業が提示してきた案をそのまま飲んでしまい、気が付けば、かなり不利な最終契約を締結させられてしまっていた。等のことは起こりえます。口約束は信用なりませんので、あくまで、公平な契約書を作成することが大切です。更に、このようなケースは、M&A仲介業者が間に入っていない際に起こることがほとんどです。公平な目線を持つ第三者(業界に専門性があれば尚良い)に草案を作成してもらうもしくは、確認してもらうことが予防策として重要です。

・論点先送りで最終契約締結不可?
譲受け企業(もしくは譲渡企業)が、少しでも早く成約をしたい際に起きやすい失敗例です。
基本合意の個別論点については、最終契約までに決定をするという形で、基本合意書については、ほとんど何も決定事項がないような基本合意をたまに見かけます。先ほどもお話しましたが、このような基本合意を締結すると、最終契約時に交渉が逆に難航するケースが多いです。「急がば回れ」の精神で、正しい手順と内容で進めることが重要です。

まとめ

以上、今回は、基本合意についてみてきましたが、「問題の先送り」をしないことがM&Aを成功させる秘訣です。個別論点についての、文言での落とし込みの仕方などは、更に細かく注意をするべき事項です。
日本M&Aセンター物流業界専門グループでは、専門性をもって、このあたりの最適解をご案内しています。これらのことや、その他にもM&Aへのご関心、ご質問、ご相談等ございましたら、下記のお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。


コンサルタント紹介



株式会社日本M&Aセンター 
業界再編部 物流業界専門グループ チーフ 宮川 智安

群馬県出身。実家は七代続く水産業の卸売。早稲田大学卒業。2020年新卒で日本M&Aセンターに入社し、全国の物流業界を専門にM&A業務に取り組む。2021年度同社で最も多くの物流業界M&Aを成約へと導いた。同年度新人賞。運行管理者資格保有。