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M&Aレポート

物流業界M&Aの買収監査・最終契約とは?基本合意との違いも解説

2022.7.11

  • 物流

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基本合意書を締結し、人間の結婚で言えば結納を交わした後にくるステップが買収監査です。買収監査は譲受け企業が譲渡企業を自分の目で見て、確認し、今まで見聞きしていた事実と相違が無いかを確認する最終フェーズです。M&Aの手順のコラム(https://reorganization.nihon-ma.co.jp/report/2535/)で説明をさせていただいた通り、このフェーズを飛ばすことは絶対に許されません。買収監査をしないと最終契約書に記載する責任の所在等がはっきりせず、のちのちのトラブルに必ず発展します。

買収監査の重要性

「よく知っているから労務だけ確認できればいいよ」
「売掛金等の確認や現預金の残高の数字が合っていればいいよ」
様々なご意向で買収監査を簡素化しようとするケースも聞かれますが、これも非常に危険です。
しっかりとM&Aに慣れた監査人に頼み、抑えるべきところを譲受け企業の責任のもと確認しましょう。

また、勘違いしてほしくないところは、買収監査はあくまで今まで見聞きしたことを確認する作業であり、決してあら捜しをすることが目的ではありません。買収監査もある意味両社の対話の一環ですので、あら捜しのようなインタビューは避けるべきであり、あくまでM&A後のPMIをスムーズに進めるための確認という意味合いで対話をしていくべきです。

物流業界の買収監査で気を付けるポイント!

物流業界では買収監査時に確認する主なポイントとしては下記のようなものがあります。

・労務時間が法定通りになっているか
・車庫飛ばし、名義貸し等物流業界特有の違反がないか
・未払い残業代はないか
・点呼等が正しくできているか
・現預金等が通帳残高と一致しているか

最後の現預金について実際にあった事例で、現金として数百万の金額が帳簿上に載っていましたが、実際は金庫等にはその現金がなく、純資産を下げざるを得ない事態となりました。中小企業ではオーナーの財布と法人の財布がきれいに分けられていないケースも少なくありません。そのためこのように現金残高が一致していないケースがあります。
その他、細かい点を挙げるときりがありませんが、売掛金の回収できないものがないかどうかや、出資金やゴルフ会員権、土地の価値等が時価に直っているかどうかが見られることが良くあります。

また、譲渡側の企業にとって、買収監査は譲受け企業側に対して信頼をさらに得るチャンスの場でもあります。資料の準備や質疑での回答などが正しく不備なく行われていれば、信頼度が増し相手に対してとても安心感を与えることができます。万が一このタイミングで疑問符がついたり、疑わしき振る舞いが出てしまうと、それ以降のあらゆる個所についても疑念を抱きながらインタビューをしなければいけなくなることもあり、買収監査がより複雑化してしまう可能性もあります。そのため、日ごろの書類の整理整頓はしっかりしておくことをお勧めします。

買収監査は譲渡企業のオーナーにおいては非常にストレスを感じるところでもあり、とても労力のかかるフェーズです。場合によっては自分一人で多くの書類を収集しなければならず、さらには社員等に知られないように1,2日程度のインタビューを顧問の先生とずっと対応しなければいけません。譲受け企業はこのような譲渡側オーナーの精神的、体力的な苦労に配慮しながら応対しなければなりません。

買収監査を終えると、譲受け企業は監査レポートを提出しなければなりません。レポートには買収監査で把握できた事実を記載するとともに、基本合意時に約束した事項と違っていた部分等を照合し、事前に両社で約束していたルールで条件調整を行っていくことになります。基本合意時のコラム(https://reorganization.nihon-ma.co.jp/report/2778/)でも記載しましたが、しっかりそのフェーズで条件調整のルールを決めておかないと、この時点でトラブルになることがあります。

また、基本合意時に決めていない論理を持ち出して条件調整をすることは認められません。価格にかかわる条件を調整し、付帯条件(例えば非事業用不動産のオーナー買取、オーナー所有の不動産との賃貸借契約条件、役員やオーナー自身のその後の処遇など)を最終的に決定します。基本合意時から変更があった事項については譲渡側にもしっかりと理論立てて説明をし、理解をいただく必要があるため、書面にして説明を行うことが大切です。

物流業界の最終契約書について

買収監査も終わり、いよいよ最終契約書の内容を詰めるとき、オーナーには様々な想いがあることでしょう。
この内容を決めれば晴れてM&Aが成立します。もちろんその後の従業員開示、取引先開示等いろいろなことに不安がありながら迎える最終局面です。ここからは最終契約書について解説していきたいと思います。

最終契約書はM&Aのすべての決め事を記す重要な書類となります。のちのちのトラブルが起きるかどうかもすべてこの契約書の内容次第です。基本合意書では大枠の絶対条件を決めましたが、最終契約書はあらゆる事態に対してどのように対処するか、どのように責任の所在を決めるかをしっかりと記していきます。この内容をおろそかにすると必ずトラブルが起き、せっかくの良い縁組が後味の悪いものとなってしまいます。M&A後にトラブルが起きている例の大半は、ここでの取り決めをしっかりとせずに進めてしまったことに起因することがほとんどです。

大枠の内容としては
・条件の設定
・クロージング条件
・譲渡日前後の両社の義務
・重要物品の確認
・表明保証
・その他付帯合意事項

ここで基本合意時にはなかった“表明保証”という項目がでてきました。これは株主が様々なことに対して表明をし、それを株主が保証するというものになります。保証する対象は主に2種類あり、譲渡する法人がこうであるということを表明する項目と、株主自身がこうであるということを表明する項目に分かれています。

正確な文言は割愛しますが、例えば、

対象法人が過去七年間において適法にかつ適正に税務申告等ができていることを表明し、保証します。
対象法人が現時点で抱えている訴訟等がないことを表明し、保証します。
株主が反社会勢力とは関係のない存在であることを表明し、保証します。
株主が対象株式を適法かつ有効に取得していることを表明し、保証します。

など、記してみると当たり前のことが並んでいます。
この項目をしっかりと記すことで何かが起きた際の責任の所在がはっきりし、両社安心して前に進めることとなります。
もちろん、その時点で保証できないことなどもあるかと思いますので、その際は保証できないことの表明にもなり、その点についても両社で共通認識を持つことができます。

最終契約書を確認する上で大切なこと

最終契約書を確認するうえで大切なことは、M&Aに慣れた専門家にチェックをいただくことです。
中堅・中小企業はM&Aに慣れておらず、大企業のM&A等のFA(ファイナンシャルアドバイザー)かのように一方のみの利益を優先した交渉を試みる方がいるのも事実です。当然、依頼されたクライアントファーストの交渉を進めることはミッションとして当たり前ではありますが、それまでの交渉経緯やお互いの会話の経緯を知らず杓子定規に契約書文言の交渉を行ってしまうケースがあります。
せっかく築き上げてきた両者の信頼関係がそこで傷つくこともありますので、慎重に依頼者を選ばなければなりません。
依頼する際もこれまでの経緯等を十分説明をし、契約書の文言の裏にある意図を理解していただいたうえでチェックを依頼するようにしましょう。

まとめ

以上買収監査と最終契約書について解説をしました。本コラムに書いてあることはほんの一部に過ぎず、すべての案件ごとにそれぞれの確認事項や注意事項などがあります。その都度対応が必要となりますが、経験豊富でノウハウをもった専門家に依頼をして進めていくことをお勧めします。

私たちも物流業界のM&Aがもっと身近に、もっと安心して取り組めるものとなるよう、尽力していきたいと思います。M&Aへのご関心、ご質問、ご相談等ございましたら、下記のお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。2019年度全社MVP・全社最高売上を記録。

業界再編部 部長
物流業界専門グループ
山本 夢人