MENU
CLOSE

M&Aレポート

基礎・地盤改良工事業界のM&A動向

2022.7.19

  • 建設・不動産

Facebook Twitter LINE

本日は、近年M&Aが増加傾向にある基礎・地盤改良工事業界のM&A動向についてお伝えいたします。移動世帯数の減少や平均築年数の伸長によって国内の新設住宅着工戸数が減少し続けていることなど、市場環境が大きく変化しつつあります。本コラムでは、基礎・地盤改良工事業界の動向およびM&A動向について事例を交えて解説いたします。

基礎・地盤改良工事業界の動向

まずは基礎・地盤改良工事業界の需要について確認していきましょう。下記は国土交通省の統計で、元請け完成工事高に占める維持修繕工事の割合の推移です。新築工事から維持修繕工事の割合が大幅に増加していることが分かります。新築工事との関連性が高い基礎・地盤改良工事においては新築工事が減少することは大きな影響があると考えられます。

Sources:国土交通省「建設工事施工統計」を基に日本M&Aセンター作成 

また基礎・地盤改良工事と関連性が高い新設住宅着工戸数を確認していきましょう。下記は新設住宅着工戸数の推移です。ご覧の通り、2001年から消費税増税前の駆け込み需要や大規模災害の復旧需要の影響などで一部増加している時期もあるものの全体としては、右肩下がりに減少しています。今後も減少の流れは継続すると予測されています。背景としては移動世帯数の減少や平均築年数の伸長が挙げられます。このように新設住宅着工戸数の減少から、基礎・地盤改良工事業界を取り巻く市場環境はかなり厳しい状況になっていくことが予想されるのではないでしょうか。

Sources:「国土交通省 新設住宅着工戸数推移」を基に日本M&Aセンター作成 

基礎・地盤改良工事業界のM&A動向

基礎・地盤改良工事業界におけるM&Aは増加しています。下記は基礎・地盤改良工事業界の公開ベースのM&A件数の推移です。公表案件のみなので絶対数こそ少ないですが、着実に件数は増加しています。また非公表案件も含めるとその3倍程度となることが予想されます。

Sources:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成 

基礎・地盤改良工事業界の代表的なM&A事例

2022年4月
【売】オトワコーエイ×【買】ジェコス
⇒ジェコス(東京)は、特殊基礎工事等を手掛けるオトワコーエイ(静岡)の全株式を取得しました。仮設鋼材の供給や山留工事を主力とするジェコスは「地下工事一式受注」の体制構築の実現を目指しており、またジェコスグループの営業力とオトワコーエイの高い施工技術力の組み合わせによる事業拡大のシナジーが創出できることから、本件実行に至りました。

2022年2月
【売】東名×【買】サムシング
⇒ITbookホールディングスの子会社であるサムシング(東京)は、鉄道関連施工工事(地盤改良、基礎杭工事他)を手掛ける東名(東京)の発行済み株式の80%を取得しました。サムシングは戸建住宅や共同住宅、商業施設等の地盤調査改良等を手掛けており、従来積極的に展開をしていなかった施工領域へ進出していくことが狙いです。両社は地盤関連サービスの拡充と事業規模および営業・技術面等の融合によって、事業機会の拡大等を目指します。

2020年10月
【売】愛知ベース工業×【買】不動テトラ
⇒不動テトラ(東京)は、地盤改良工事を手掛ける愛知ベース工業(愛知)を中核とするグループ3社の全株式を取得しました。不動テトラはこれまで大規模な土木や建築構造物基礎の工事を手掛けてきましたが、戸建住宅の地盤改良工事が強みである愛知ベース工業グループを技術力や資金面で支援することで、グループとして戸建住宅から大規模構造物まで施工できる体制を整えます。

Sources:レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンター作成 

ここまで見てきた通り、譲受け側は「自社の施工範囲を広げること・工法を獲得していくこと」が主な狙いと考えられます。
その背景としては、そもそもの全体需要が減少している中で、自社で受注できる領域を広げて、自社のシェアを高めていく必要があるからです。また求められる工法が多種多様化しており、あらゆるニーズに応えるために自社にノウハウがない工法をゼロから研究開発することや施工体制を整えていくためには、莫大な費用と時間がかかります。

一方、譲渡する側の背景は譲受け側と同じく、需要が減退する市場環境に対応すべく、大手企業にグループ入りすることによって得られる「資本力」や「人材確保・採用強化」、「営業力の補完」などが挙げられます。加えて、「事業承継・後継者不在」も背景として挙げることができます。

基礎・地盤改良工事業界においてM&Aが増加しているのは、「業界全体の需要の減少」や「事業承継・後継者不在」などの課題が深刻化してきているからだと考えられます。特に戸建建築のような小規模物件から工場や大型施設等の大規模物件まで幅広く施工可能である体制を構築していく流れが加速していくことが予想されます。譲受け側・譲渡側いずれにおいても業界を取り巻く課題を解決し成長を目指す企業がM&A戦略を模索しています。

具体的なアクション

まずはM&Aについて正しく知ることが大切です。今回は事業承継や成長戦略を目的とした、会社を戦略的に譲渡するM&A戦略について解説いたします。

会社を譲渡するM&A戦略には、準備と実行の2つのフェーズが存在します。

①準備:「現状認識」と「選択肢の具体化」
・第三者目線で自社の強みや課題を認識する。
・株価評価手法や自社の株式価値を知る。
・どんな相手を希望するのかを考える。どんな相手が関心を持つのかを知る。

②実行:「M&Aの遂行」
・具体的な候補先との条件交渉を行う。
・リスク(財務、労務面)を洗い出す。
・契約締結を行う。

M&Aを成功させるには、準備が何よりも重要です。なぜなら早い段階から準備することで、適切なタイミングで実行のフェーズに進めるからです。しっかりと準備をしておくことで、満足のいく条件や希望のお相手を見つけることに繋がります。下記はM&Aにおけるよくある失敗例です。いずれも準備を始めるのが遅かったことが原因として集約されます。

(失敗例1)これまで業績は良くタイミングが来た際に相談しようと思っていた。会社の業績悪化といった外的要因からM&Aを検討し始めたが、満足のいく株価でのお相手が見つからなかった。
(失敗例2)社長自身の体調の悪化や後継者が突然継がないことになり、M&Aをせざるを得ない状況となった。候補先は見つかったが、時間が決まっているため、条件やお相手先を妥協しなければならなかった。
(失敗例3)社長自身が65歳で引退したいと思い、その直前からお相手探しを始めた。お相手を探し始めた際には業界のM&A市場は成熟しており、お相手探しが難航した。

M&A戦略が成功するかどうかは会社の業績やM&A市場の動向などによって大きく左右されます。そのため、M&A戦略を成功させるには、早い時期からの準備が非常に重要なのです。

終わりに

ここまで見てきた通り、基礎・地盤改良工事業界を取り巻く市場環境は大きく変化してきています。さらに加えて、昨今は建設資材や機械装置の高騰などで各事業者に大きな影響が出てきています。そのような市場環境の変化に対応するべく、譲受け・譲渡いずれも経営戦略の一つとしてM&A戦略を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

本コラムや建設業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。また買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。


コンサルタント紹介



業界再編部 建設専門グループ 清水 貴章 
新潟県出身。青山学院大学経済学部卒業後、損害保険ジャパン株式会社にて保険代理店向けのコンサルティング営業に従事し、日本M&Aセンターに入社。現在、建設業界専門グループに所属し、建設業界の中堅・中小企業のM&Aを支援している。