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M&Aレポート

調剤薬局業界の現状、課題、そして未来を1冊にまとめたThe Story(調剤薬局編)を出版致しました!

2022.8.1

  • 調剤薬局

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2022年6月28日、当社調剤薬局専門グループの田島、沖田、原による共著である調剤薬局業界×M&Aの専門書、「The Story[調剤薬局業界編] 業界を勝ち抜くために知っておきたい秘密 業界動向・業界再編・M&A」が出版されました。本日は書籍の内容の一部を紹介するとともに、近年業界再編が急速に進みつつある調剤薬局業界の動向についてお伝えさせて頂きます。

調剤薬局に求められている変化

<変わりゆく薬剤師の役割>

本書では、まずは調剤薬局に求められているこれからの姿について解説されています。過去を振り返ると、この業界を取り巻く環境は、驚くような勢いで変化してきました。日本で薬剤師が医薬品の調剤権を与えられたのは明治時代に遡ります。医療分業が加速し、現在日本にはコンビニエンスストアよりも多い6万店舗を超える調剤薬局が存在します。そこから時代は変わり、現在の薬剤師に求められているのは「地域住民の健康を守ること」であり、求められている役割が「正しく薬を出す役割」から「地域住民の健康をコンサルティングする役割」に深化しています。調剤薬局は今後、医療機関・介護施設・行政の間を取り持ち、地域住民の健康に関するすべてを司るコンサルティング会社の姿へと変わっていくと考えられます。

<ビジネスモデルの変化に対応すべきか否か>

しかし、現実を見ると、このような深化になかなかついていけない現状があるのではないでしょうか。
門前薬局でも利益が出ているので変える必要がないと考えられる方もいらっしゃると思います。ただ、調剤薬局、薬剤師の社会的地位をより高めていくためには、地域住民はもちろん、国、自治体、医師、ケアマネージャーなどすべての関係者から頼りにされる存在とならなければなりません。調剤薬局が地域包括ケアシステムを構築するうえで欠かすことができない存在となるために、ビジネスモデルの変革を推進していく必要があります。

<薬剤師のあるべき姿>

出典:厚生労働省「薬剤師の需給推計」

出典:厚生労働省「平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

日本は世界各国と比較して薬剤師免許を持つ人が非常に多い国です。薬剤師の人数も約40年間増加を続けており、2045年には約12万人の薬剤師が過剰になるというデータも厚生労働省から出ています。

薬剤師という資格が人気に陰りを見せない一方で、薬剤師を取り巻く環境は大きく変わっています。
医薬分業が進む中では、調剤業務を効率的に捌けるか否かに焦点があてられ、1店舗で何人分の調剤をできるかといった、「対物業務の効率性」が重要な時代でした。

昨今では、「患者のための薬局ビジョン」にもある通り、企業や患者から求められるスキルは、調剤業務だけではなく、「対人業務」と変化してきています。今後調剤報酬は減少していき、対物業務に対する需要が減少していくなかで、これまでの薬剤師業務のみでは付加価値が下がっていくのが明確です。

調剤業務に留まらず、目の前の患者のために専門知識を発揮できるように、「効率化」「人員体制」「教育プログラム」「医師や地域包括等とのコネクション」といった、これまで以上の経営努力をしていく必要があると考えられ、今後は薬剤師としての職域を広め深めていくことが、薬剤師としてのキャリア、ひいては企業経営としても重要な時代となっていきます。

調剤薬局業界におけるM&Aの動向

<激化する競争環境>

出典:調剤薬局/厚生労働省「衛生行政報告例(薬事関係)」、コンビニ/日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計調査月報」、ドラッグストア/日本チェーンドラッグストア協会「業界推計 日本のドラッグストア実態調査」、ガソリンスタンド/経済産業省資源エネルギー庁「揮発油販売業者数及び給油所数の推移」をもとに日本M&Aセンター作成

調剤薬局業界で起こっているM&Aについても、業界が抱える課題を交えながら解説しています。店舗数の見地から業界を見ていくと、調剤薬局市場が成熟化していくなかで店舗数は増加を続け、競争は激しさを増しています。2020年末の調剤薬局数は6万951施設となっており、前年度に比べ780施設も増加しています。

コンビニが約5万6000店舗、ドラッグストアが約2万1000店舗、ガソリンスタンドが約2万9000拠点となっていることと比較すると、調剤薬局の店舗数の多さが際立ちます。100万人当たりの薬局数でみても、アメリカの2・3倍、ドイツの2倍と、世界的に見ても日本の薬局数が多いことがわかるかと思います。

出典:厚生労働省「医療費の動向」をもとに日本M&Aセンター作成

日本の社会保障費約36兆円のうち7・5兆円が調剤報酬となっています。調剤報酬は過去15年で約3倍にまで増加しており、その背景には、医薬分業率の上昇があります。
医薬分業率は、2021年度には約77%にまで達しています。ただし近年は、処方箋枚数の増勢は鈍化し、投薬患者数は減少傾向にあります。処方箋発行枚数も頭打ちとなっているなか、調剤薬局の新規出店によって得られる増収機会は今後少なくなっていくでしょう。

また、調剤薬局業界では2016年度以降、調剤報酬改定および薬価改定の影響が顕著であり、全般的に業績の伸び悩み、悪化傾向が鮮明となっています。
それに加え少子高齢化が進む日本では、社会保障費の増大に歯止めをかけるため調剤報酬の改定や法改正・規制緩和など、今後も国は厳しい施策を取ることが予測されます。
そのため調剤薬局は、従来以上に「かかりつけ機能」を強化し、既存店売上高の伸長を図ることで、地域における優位性を確立していくことが今後のカギになってきます。

< M&Aの活用が経営戦略の柱に >

このような社会背景の中で、調剤薬局はどう歩んでいくべきなのでしょうか。
日本政府は社会保障費がこれまで以上に増えないよう、多くの施策を打ち出しています。薬価改定、リフィル処方や敷地内薬局の推進などの取り組みにより、1枚当たりの処方箋単価は下落していくことが予想されます。
そうなると、調剤薬局を運営する企業にとっては、今までと同じことをやっていても、売上や粗利が下がっていくため、人件費や家賃を下げなければ利益水準が維持できなくなります。しかしながら、今の政府の方針に従い、在宅の推進やかかりつけ薬局としての機能を付与していけば、当然ながら人件費は上昇するという厳しい現状を突き付けられています。
こういった状況に対応し、規模の経済性を獲得するために、調剤薬局グループ各社はM&Aにより事業規模を拡大しています。

調剤薬局業界の未来

そして本書では、調剤薬局業界のこれからについても解説されています。
これからの調剤薬局業界におけるキーワードは「ICTの活用」と「ネットワーク化」です。調剤業務が複雑化・多様化するなか、業務効率や顧客利便性の向上につながるデジタル技術の活用が、調剤業界でも進み始めています。2019年度の薬機法の改正によるオンライン服薬指導の解禁、そして2023年に控えている電子処方箋の運用です。
患者の健康・安全性の向上が役割とされる薬剤師。とくに高齢者など、多剤を併用している患者に対しては、「患者の薬の服用状況をより把握している薬剤師の存在」がかかりつけ医との連携で重要であり、薬剤師の説明責任や受診勧奨などが大きく求められるようになっていくでしょう。

<新規参入との争い>

そして異業種の参入障壁も今後垣根が低くなっていくと考えられます。患者の服薬情報を一元的に管理する「かかりつけ薬局」を国が推進していることを追い風に、大手ドラッグストア、スーパーマーケットなどが調剤薬局を併設し、地域になくてはならない存在になることで消費者の支持獲得に動いています。ドラッグストアやスーパーマーケットは、人口が密集する利便性の高いエリア内に店舗を構えているため、かかりつけ薬局への親和性が高く、ワンストップショッピングの利便性がより重視されるこのコロナ禍も相まって、急速にシェアを伸ばし始めています。

<オンラインが将来のスタンダードへ>

さらには薬局のオンライン化を見据えた参入の動きもあります。2021年、NTTドコモは、オンライン薬局を展開するミナカラの株式を取得しました。
NTTドコモは、オンライン診療システム、オンライン服薬指導システムに参入しており、患者の医療におけるオンライン活用に向けて取り組みを強化しています。
このように、業界を取り囲む垣根は低くなり、調剤薬局業界は競争激化の一途をたどっています。調剤薬局の中には生き残りをかけ、専門性を高める薬局もあれば、OTC医薬品(一般用医薬品)や健康食品などの販売へと業容を広げる薬局もあります。こうしたボーダレスな競争を勝ち抜くために、既存の業務やビジネスモデルを変革することが今後の調剤薬局には求められています。
このような近未来に対して、調剤薬局は何かしらの打ち手を講じないと状況は悪くなる一方です。

<いま、なぜM&Aなのか>

ではなぜM&Aが打開策として調剤薬局業界で盛んに行われているのでしょうか。
前述の通り、今まで通りのやり方をやっているだけでは経営が成り立たなくなっています。シビアにコスト管理を行いつつも、今まで以上にサービスの質を追求していかなければ、時代に取り残されてしまいます。
こうした環境の変化を踏まえ、自社の調剤薬局の存在意義と向き合いながら、経営のフェーズを引き上げていかなければなりません。それには、もう一度創業するのに匹敵するような、いわゆる「第二創業」レベルの大きな変革が必要になってきます。

このような大きな変革を求める時に、自社だけでどうにかしようと考えず、他社と手を組むことが打開策となることもあります。実際に、同じ志を持つ企業同士が手を組んで、理想の医療の提供を実現していくM&Aが増加しているのです。M&Aで譲渡した後も経営者として会社に残るケースも増えており、社員の生活、家族を守るためにも有効な手段として認知されてきています。

M&Aを成功させるには、準備が何よりも重要です。なぜなら早い段階から準備することで、適切なタイミングで実行のフェーズに進めるからです。しっかりと準備をしておくことで、満足のいく条件や希望のお相手を見つけることに繋がります。
ここまで見てきた通り、M&A戦略が成功するかどうかは会社の業績やM&A市場の動向などによって大きく左右されます。そのため、M&A戦略を成功させるには、早い時期からの準備が非常に重要となってくるのは間違いないのではないでしょうか。

終わりに

<検討をすることの重要性>

本書をご覧頂くと、調剤薬局業界を取り巻く環境は大きく変化してきていることがよく分かると思います。
そのような市場環境の変化に対応するべく、譲渡・譲受けいずれにおいても経営戦略の一つとしてM&A戦略を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

本コラムや調剤薬局業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。また買収のための譲渡案件のご紹介や、株式譲渡の無料相談を行います。お気軽にご相談ください。

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コンサルタント紹介



株式会社日本M&Aセンター 
業界再編部 調剤薬局業界専門グループ 金島 悠人

岡山県出身。千葉大学大学院にて工学修士(化学)を取得。同課程修了後、専門商社にて大手メーカーに対するコンサルティング営業に従事し、日本M&Aセンターへ入社。調剤薬局業界を中心に、M&Aを用いた企業の発展・存続のための支援を行っている。