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M&Aレポート

物流M&Aは売り手市場!?業界動向と成功のポイントとは

2022.8.5

  • 物流

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物流業界はまさに今、業界再編の真っ只中にいます。
その中でも現在は買収企業が見つかりやすい環境下にあり、売り手市場ともいわれています。
その理由や業界の傾向などを業界再編というキーワードから紐解いてみたいと思います。

業界のライフサイクルとは

様々な業界で、業界再編は必ずと言っていいほど起きています。
下記のグラフを参照いただくと、左から右へ様々な業界の名前が記載されておりますが、これは業界再編のどのフェーズに業界が位置しているかを示しています。

例えば、医薬品卸業界や百貨店業界、家電量販店業界などは再編が完了している業界といえます。逆に左側に位置する業界はこれから再編が起こる業種が記載されております。それぞれ業界は違えど、再編は同じ道をたどっている業界がほとんどであり、これから自分の業界がどのような動きになるのかを予測するのにとても役立つものとなっております。

大きく分けて業界再編は4つのステージに分かれています。
その業界のトップ企業10社のシェアが10%、50%、70%、90%を機に導入期、成長期、成熟期、衰退期に分かれています。それぞれのフェーズで、M&Aの特徴があり、業界構造や動きが全く異なっています。

成長期にある物流業界

その中でも物流業界は今、成長期に位置しています。
成長期の特徴としては中堅・中小企業が活発にM&Aに取組み、大きく業界構造が変革しようとしている時期となります。ここでどのようなポジションに自社を置くのかで、その後の業界内での立ち位置が変わってしまうフェーズです。
この時期がM&Aが増え始めるまさにそのタイミングであり、売り手が買い手側の企業を“選べる”フェーズなのです。ただし、そのフェーズもずっと続くわけではありません。成長期から成熟期に差し掛かるにあたり、その環境は一変する可能性があります。

そのキーとなるのはM&A案件の数の原理です。
業界再編が進むにつれ、物流企業で譲渡をしたいという案件は年々増えていきます。そうしますと、買収を検討している企業に持ち込まれる案件の数が増えてきます。「これまでは常時5件くらいの譲渡案件を検討していたのが、今となっては10件くらい検討できるくらいに持ち込まれる」という状態になっているのです。
さらには今後より一層案件数は増していくことが予想されます。当然、検討できる譲渡案件が増えれば増えるほど、買い手企業はえり好みをできてしまいます。案件を比べて、良いと思える案件から着手をしていくことになるでしょう。そうなれば当然ですが、買い手側の意見の方が強くなってきてしまいます。

えり好みに関しては別の見方もあり、規模に徐々に魅力を感じなくなってしまうという面があります。
再編が進んでいくにつれ、その譲渡企業の規模感も大きくなっていくのが常です。これまでは売上2~5億程度の企業の案件が多かったですが、昨今では既に10億、20億企業も積極的に譲渡に動いていますし、福岡県のM・Kロジ(2022年7月丸和運輸機関が譲受け)は100億を超える企業であっても大手企業と手を組む選択をしています。
買い手側の企業としてはこれまでは小規模の企業の案件しかなかったので、そちらだけで検討するしかなかったのですが、規模が大きな案件が出てくるようになれば当然「2億の会社を10件買収するより、20億の会社を1件買収したい」という考えが浮かぶようになり、中堅以上のクラスのM&Aが多くなります。これが成熟期の初期の段階となります。このフェーズに入ってしまうと、譲渡側が徐々に相手を選ぶことができなくなってしまいます。

そういった意味で、成長期の中堅・中小企業の振る舞いはその後を大きく左右することになります。成長期は買い手側も案件を欲しがっているステージになるため、譲渡企業はまさに今、さまざまな可能性について検討するべきと考えます。

これら業界再編の話に加えて、物流業界は2024年問題も譲渡企業には追い風になっています。
2024年問題への対応は買収側の企業も喫緊の課題であり、それまで何かしら手を打って体制を整えなければいけません。そういった意味でも現在は非常に買収意欲が旺盛であり、譲渡を検討している企業にとってはまたとないチャンスとなります。

譲渡を考える企業がすべきこと①

では譲渡を検討してみたいと思う方が次に何をすべきか、何が成功のポイントになるのかを解説していきたいと思います。

まず第一にやるべきことは“健康診断”です。自社が客観的に見られた場合、どのような評価を受けるのかを知っておくことが何より大切となります。
“健康診断”を踏まえたうえで、自身のやりたいこと、叶えたいことをしっかりと吟味をして譲渡をするかどうかの決断をするとよいでしょう。

“健康診断”とは主に①企業評価、と②リスクの洗い出しの2つとなります。
企業評価はその名の通り株価の価値を把握するための作業となります。普段顧問の先生などに算出してもらっている株価は税金等を計算するための意味合いが強い算出方法であり、M&Aの株価評価とは考え方も計算の仕方も全く違います。M&Aでの株価は将来性を加味して、それらを現在の価値に織り込むという算出方法となりますので、簿価上の今の数字だけで算出する評価方法に比べ、将来性を加味している分評価は高くなることがほとんどです。

また、譲渡を数年先と考えている方にとっても企業評価は非常に有用です。M&Aの観点で何が評価されて、何が評価されない事項なのか等を知ることができるからです。「ここを強化すれば企業価値があがるんだね!」「ここはあまり評価に値しないから注力しなくてもいいんだね!」という将来の経営の指針ができます。数年後を見据えて計画的にM&Aを検討されている企業は上記の理由で企業評価を受けています。

譲渡を考える企業がすべきこと②

もう一つ大事なことはリスクの洗い出しです。
M&Aはやろうと思ってすぐに実行できるわけではありません。調べていけばいくほど、事前に対処しておかなければいけない事項が出てくることもあります。事前にそれを知って、対処しておかないと、いざ本当にM&Aでの事業承継に動きたいと思ったときに、すぐに動けないという結果になってしまうこともあります。
物流業界は残念ながらコンプライアンスや労務管理等について100点をとれる企業の方が少ないのが現状です。そのためM&Aでは多くの論点を抱えることが多く、一つ一つの対処をしていったり、取り決めをしていって、のちのちのトラブルをなくす必要があります。

また、その論点が対処可能な範囲なのか、難しいのか、そういったことも知っておくことが大切です。物流業界特有の論点としては、点呼の状況、車庫飛ばし、未払い残業代、未払い保険料、名義貸し、などこれら以外にもたくさんの論点が存在します。それらに加えて、一般的な論点、例えば株の変遷であったり、未登記の取締役の存在であったり、簿外負債の存在など、多くのことを知っておく必要があります。
逆にこれらを事前に知っておくことで、あとは何も怖くなくなります。成功するポイントはまさにここにあり、現状何かがあるからいけないか、ということではなく、現状を踏まえた対策や戦略がしっかりと計画されているか、ということが大切になってきます。買い手側の企業も大きなお金を動かして決断をするにあたり、一つでも多くグレーな部分(対策方法が明確になっていない部分)をなくすことが安心感を与える材料となります。

これらの論点は物流企業のM&Aを数多く経験し、ノウハウと実績を備えた企業でなければなかなか抽出することはできません。しっかりとそれらを備えたコンサルタントに健康診断を依頼することをお勧めします。

以上をまとめますと、譲渡を考えるときに重要なことは、まずは業界の動向を正しく理解し、タイミング等をしっかりと学ぶ。それと同時に自社の健康診断を実施して、将来のための対策などを事前に進めておく、これらをしっかりと抑えていくことができれば、必ずや成功に導かれるでしょう。上記データやノウハウ等をお知りになりたい方はお気軽にお問い合わせを頂けましたら幸いです。



東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。2019年度全社MVP・全社最高売上を記録。

業界再編部 部長
物流業界専門グループ
山本 夢人