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M&Aレポート

【年別M&A】2017年・建設・不動産業界のM&A

2019.11.5

  • 建設・不動産

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2017年の建設・不動産業界M&A一覧

建設・不動産業のM&Aの成約件数(公表事例に限る)は、リーマンショックを契機に低迷していましたが、その後は5年連続で増加しています。

2011年といえば、「東日本大震災の復旧」のために公共工事が増加した年でしたが、この頃から業界の潮目が変わるとともに、M&Aの成約件数が増加しました。

2017年は78件の成約が公表されており、リーマンショック前の水準まで回復しているといえます。

業界として大きな問題を抱える中、注目されているのが、維持修繕工事です。

建設投資額が2015年は51兆円で、1992年の84兆円から約22%減少したが、減少したのは新設工事であり、維持修繕工事は23年の間に約27%増加。全体における維持修繕工事の割合は14.5%から28%へと倍増しています。

特に、めぼしい新設工事が見込めない地方においては、建築物、道路・橋梁・トンネルのインフラの維持・補修工事などの重要性が増すことが想定され、各企業はこの変化についていくことが今後の経営において不可欠となります。

この市場はフロー型である新設工事と比べると、今後も市場の拡大が見込めること、ストック型のビジネスにつながりやすいことからも、この市場に展開したい企業は多く存在します。

一方、ストック型のビジネスをしている企業にとっては、フロー型の工事会社をグループ化することで、内製化による利益率の向上、単価の高い受注の実現というメリットがあり、新設&維持修繕の企業間のM&Aが目立っています。

また、労働集約型である建設業のM&Aは、「人材」の要素が非常に強い。人材獲得競争が激化している中、M&Aを活用するメリットは非常に大きいのです。

【M&Aのメリット(人材面)】
○譲り受け企業
・複数の人材を一度でグループに迎え入れることができる
・異なる業種・専門性の人材の獲得が可能となる

○譲渡企業
・会社の信用力が高まり、採用力を強化することができる
・従業員の処遇・福利厚生などが高まり、従業員の雇用を安定させることができる
・従業員の活躍の場が広がり、より広いビジョンを持つことができる

建設業とメーカー
  【譲受】コニシ &【譲渡】角丸建設
設備工事業とビルメンテナンス
  【譲受】高砂熱学工業 &【譲渡】丸誠
警備業と設備工事業
  【譲受】セコム &【譲渡】イートラスト
建築用製品と大規模修繕工事
  【譲受】YKK AP &【譲渡】ラクシー

このように、建設業では再編が起こらないというのは過去の話であり、この好環境が続く間は、再編は進んでいくと考えられます。

現在起こっている再編は「企業の淘汰」「再生」というネガティブなイメージのものではなく、「合従連衡」「成長戦略の実現」というポジティブなものです。

建設業は受注産業であり、発注者の動向に業績が大きく影響されるという課題を多くの企業が抱えています。

今後は、一部の発注者の動向に影響されない安定した経営が求められており、再編が進行した結果、特定の顧客や公共工事に依存しない、総合的なサービスを提供できる企業グループが形成されていくでしょう。

※国内企業同士のM&A成約件数(グループ内M&Aを除く)※公表事例に限る

設備業界では総合エンジニアリングとしての統合が進む

設備工事業界は電気工事、電気通信工事、ガス工事など明確に業種が分かれていますが、業界再編により統合が進んでいます。

この5年間の設備工事業界のM&Aで特徴的な企業は、通信工事業界最大手のコムシスホールディングスでしょう。

2014年に当時発行済み株式の約19%にあたる自社株(当時の価額で約492億円)の全株をM&Aに活用すると発表し、継続してM&Aを実施しています。これはNTTへの依存度が高いという経営課題を解決するために、その他分野の拡大を図るものです。

また、近年のエネルギーシステム改革により、電力系電気工事会社やガス工事会社のM&Aの動きも活発化しています。以前、電力系電気工事会社はM&Aに動くことは少なかったのですが、M&Aの活用による他地域・他業種への展開が目立ってきています。

不動産管理業界では

実現はしなかったものの日本郵政と野村不動産のM&Aのような大型案件の話も出てきていますが、不動産賃貸管理業については、いわゆる“町の不動産屋”が大手企業と一緒になるケースが目立っています。

当社の成約実績でいうと、年商1億円の不動産仲介・管理会社が上場大手企業に売却する事例や、地方で債務超過の小規模管理会社が、全国展開する大手企業の傘下に入る事例等も見受けられます。その背景には、本業界の上位寡占率が低いことが挙げられます。(図2)

最大手の大東建託はひとつ抜けているものの、管理戸数ベースでは、シェアの約8%にとどまるため、覇権争いの余地は残ります。

また、管理業務は安定収入を取れる点で魅力的であることや、顧客ニーズへの対応からIOT等の設備投資が求められてくることは、再編の圧力になります。これらの理由から、業界再編は着実に進んでいくと思われます。

慶應義塾大学商学部、米国コロラド大学ビジネススクールを経て日本M&Aセンター入社。
業界特化事業部の立ち上げに参画。以来、業界再編業種を中心に、幅広い業界でM&Aを支援。

課長
調剤薬局業界支援室 室長
山田 紘己