MENU
CLOSE

M&Aレポート

『ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏』M&Aコンサルタントが経営者に推薦する1冊 著者: 服部 暢達

2019.10.7

  • M&A全般

Facebook Tiwter LINE

『ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏』の概要

「書籍の概要について」

この書籍は、1989年にゴールドマン・サックスに入社し、日本のM&Aが本格化した1990年代から2000年代半ばにかけて、M&Aをリードしたゴールドマン・サックスにおいて日本のM&Aアドバイザリー事業の責任者を務めた著者が、自らが手がけた多くのM&A案件の内実を臨場感とともに記した、貴重なノンフィクションです。

携わってきたM&A案件、投資銀行とは、会社との向き合い方、などについて克明に記されており、当時のサラリーマン観とは全く異なったプロフェッショナルとしての生き方を知るうえで貴重な内容となっております。

「インベストメントバンカーへの第一歩~ゴールドマン・サックスNY本社」

著者は、1981年東京大学工学部卒業後、日産自動車に技術者として就職。その後、87年に社費留学生としてマサチューセッツ工科大学(MIT)の経営学大学院に進んだものの、大学院在学中に日産を退職し自費留学生となりました。

そして卒業して1989年ゴールドマン・サックスへMBAの新卒として入社することになります。ゴールドマン・サックスに入社したものの、当時、日本では投資銀行のことはほとんど理解されていませんでした。

同じ投資銀行の中でも、ソロモン・ブラザースやメリル・リンチがブローカレッジ(株や債券の売買仲介)から出発した会社だったのに対し、ゴールドマン・サックスはモルガン・スタンレーとともにプライマリー(株や債券の引き受け)から発展した会社だったので、もともとM&A関係の業務に強みがありました。

配属先は投資銀行部門。主として大企業の社債や新株発行による資金用達を行う部署でした。年間約4000時間~約5000時間労働をこなしながら、東京都のヤンキー・ボンド発行引き受け、ハリウッドの映画ファイナンス、住友銀行5億ドル劣後債の発行引き受けなどに携わることとなります。

「M&A部の部長へ、そして~ゴールドマン・サックス東京支店」

ニューヨークでの勤務を終え、東京転勤となりました。東京において着実に成果を挙げ、最終的にはマネージングディレクターとして、日本のM&Aアドバイザリー業務を統括する部長となりました。

著者が手がけた大型案件の代表的なものは以下の通り。

DDI・IDO・KDD3社合併、ロッシュによる中外製薬買収、NKK・川崎製鉄経営統合、GEキャピタルの日本リースのリース事業買収、ダイムラー・クライスラーの三菱自動車への資本参加、日立製作所によるIBMのHDD事業買収、三菱商事のローソンへの資本参加など、日本の企業史に残るM&Aで数多くの実績をあげました。

『ゴールドマン・サックスN&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏』を推薦する3つの理由

「当時を代表するM&Aの内実を語る」

著者はゴールドマン・サックスにおいて、ニューヨーク本社での1年間と東京での勤務を合わせて14年半を過ごしました。

当時を代表する大型M&A案件の内実を知る貴重な経験をされており、当時の30代~40代の日本人ビジネスマンがまず経験することのない濃密なものだと言えます。

また、ゴールドマン・サックスで出会ったの大物たち(ワインバーグ、ルービン、ポールソン)や日本人経営者たち(稲盛和夫、永山治)とのエピソードも非常に面白いと思います。

「内外を知るM&Aアドバイザリーとしてみる日本人経営者論」

海外と日本を比較し、日本人経営者の劣った点を挙げるコラムニストは多いが、著者は日本人経営者を欧米に比して全く引けを取らないと語っています。

また日本の経営文化を世界に誇るべきものと語っています。

欧米の経営者と異なり、日本の経営者の圧倒的多数は30年、40年と長年一つの会社で働き、上からも下からも外からも評価されて選ばれています。

インテリジェンス(知性)、人柄、胆力、頭脳、ユーモアのセンス…。日本の経営者は欧米に比してまったく引けを取っていません。

しかも、特に大企業の経営者はある時点から自社のことより、天下国家、社会全体のことに自然と思いを持つ場合が少なくない。こんなメンタリティーで経営しているのは日本だけで、世界に誇るべき経営文化を持っています。

欧米の経営者はCSR(企業の社会的責任)を口にするが、日本にはあまり輸入する必要がない概念といえると語っています。この日本経営文化への高い評価は、内外多くの経営者と議論しないと感じることのできない考え方でもあると考えます。

「これからのビジネスマンを考える」

最後に「自立のススメ―若いビジネスマンへ」という1章を設けて、留学から転職に至る経緯を振り返っており、メッセージ性の強いものとなっています。

その中で「会社というものは自分の味方ではない。敵とまでは言えないが、少なくとも黙っていても会社が自分のために何かを施してくれるというものでは絶対にない。

会社で自分の思いを通すためには、会社と個人は常に対等の関係になければならないし、さらに対等なうえで日々これ勝負であり、これにある程度勝たなければ、自分の思いを遂げることは出来ない。」と語っています。

若いビジネスパーソンやこれから就職してビジネスの世界に飛び込もうという人は、終身雇用が望めないなか、プロフェッショナル志向が非常に強い印象を受けます。雇用主として、これからの従業員の働き方を考える上で、示唆のある内容だと思います。

慶應義塾大学商学部、米国コロラド大学ビジネススクールを経て日本M&Aセンター入社。
業界特化事業部の立ち上げに参画。以来、業界再編業種を中心に、幅広い業界でM&Aを支援。

上席課長
調剤薬局業界支援室 室長
山田 紘己