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M&Aレポート

【経営者向け】『年輪経営』M&Aコンサルタントが経営者に推薦する1冊

2019.9.26

  • M&A全般

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出版社:光文社
発行年月:2009.2

リストラなしの「年輪経営」いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長

書籍概要

著者の塚越寛氏が会長を務めた長野県の寒天製造メーカーの伊那食品工業のお話です。社是は「いい会社をつくりましょう ~たくましく、そして、やさしく」とし、非上場でありながら48年間連続で増収増益を続ける優良企業のお話です。

いい会社とは何か、塚越氏なりの視点で経営理念を分かりやすい言葉でつづっている一冊です。タイトルにもある“年輪経営”とは、企業の経営を木の年輪に例えて言っており、木は寒さや暑さ、環境の変化によらず、必ず前年よりも少しだけ成長をし、一輪ずつ増やして成長を止めません。これこそが企業の自然体であり、あるべき姿なのであると記しています。

一時的な数字にとらわれて売上増だけを狙うと、他の要素(従業員やシステム、組織化等)が売上に追いつけず、内部に空洞が生じてしまい、自己を破壊する結果となってしまいます。

そのため、伊那食品工業は会社で数値目標は掲げず、自然体の運営を続け、利益はあくまでその結果であるという考え方をもってきたと記している。いい会社とは何なのか、いい会社とは社員を幸せにし続ける会社であり、そのためには“遠きをはかること”と“ファンづくり“が大事であると言われています。

遠きをはかるとは二宮尊徳の「遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」からきており、具体的には研究開発に力をいれ、目先の利益ではなく将来的な様々な変化に即した価値を生み出せるように種蒔きを怠らないことであるとのことでした。

ファンとは、会社のことを好きになってくれている人、尊敬してくれている人のことをいいます。顧客であれ取引先であれ、ファンになってもらうことで、お互いに繁栄できる関係性を作ることが大切であり、働く社員達もその方々からファンになってもらうことで、やりがいを感じて仕事に打ち込める、とされていました。

本書では具体的な取り組みを含め、多くの塚越氏の経営メソッドが収録されており、後にも先にも経営者として大切にすべき考え方などが記されています。

“いい会社”とは

この書籍を紹介させていただくにあたり、なにも伊那食品工業のようにゆっくり成長し、自然に任せてすることがいいということを言いたいわけではありません。本書の中にもでてくる“いい会社とはどのような会社なのか”ということを改めて考えさせられました。

もちろん、経営者の方々によってそれぞれの答えは違うとは思いますが、しっかり定義をし、それを社是として社員に周知することが非常に大切であろうと考えます。

M&A仲介をしている際に、必然的に数多くの企業とお会いすることがありますが、成長している企業やM&Aで相手を選べる立場にある素晴らしい評価のつく企業には、いくつかの共通点があります。

M&Aで成功する企業の共通点

まず、明確なビジョンがあります。それも漠然とした目標等ではなく具体性があるものを、しっかり目に見えるかたちで社員と共有しています。そうすると会社全体で全員が同じ方向を向いており、一体感が生まれます。

そのような会社は、社員一人ひとりがオーナーシップをもち、組織として素晴らしい力を発揮していることが多いように思います。
伊那食品工業は48年間の間、バブル崩壊やリーマンショックを経験しているにもかかわらず増収増益を続けており、少なくとも間違ってはいない戦略なのでしょう。

また、遠きをはかるということも非常に大切だと思います。M&Aに関しても企業を譲受ける際に、譲渡案件が安いか高いかで判断する企業は失敗が多く、“長く経営できるか、長く発展させられるか”という視点で譲受を判断する企業は成功しているように思います。

短期的な目線で考え、そのときは安い買い物だと考えたとしても、たちまち時代が変化し、その変化についていけなければ、後になると高い買い物になってしまうこともあります。

そのため、M&Aという視点においても長期目線は必ず必要となってきます。M&Aはもちろん経営戦略の一つの手法に過ぎませんが、経営判断を下していく上で大切な考え方の原点回帰ができる、そんな書籍です。

外資系金融機関を経て日本M&Aセンターに入社。業界再編部の立ち上げのメンバーであり、現在はIT業界の責任者として、中小零細企業から、上場企業まで数多くの友好的なM&A、事業承継を実現している。これまで主担当として50件以上を成約に導いており、国内有数のM&Aプレイヤーの1人である。東芝情報システムとデンソーとの資本提携等を手掛ける。

業界再編第1部 部長
瀬谷 祐介