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M&Aレポート

【製造業界M&A事例】挑戦しつづける会社になるために親子で考えたM&A

2019.9.5

  • 製造

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【譲渡企業様】
・企業名⇒市川ダイス株式会社
・業種⇒金型部品・ダイス製造
・売上(M&A当時)⇒約3億円
・オーナー様のご年齢⇒67歳

【譲受企業様】
・企業名⇒株式会社ゼノーテック
・業種⇒金型部品製造
・売上(M&A当時)⇒18億円

譲渡企業様の概要とM&Aの検討理由

当初は譲渡オーナーのご子息が継ぐつもりだった

譲渡企業の市川ダイス社は、1962年創立、千葉県多古町に工場を構える金型メーカーです。

M&A当時は2代目のオーナー社長である谷津博史様が経営者を務めておられました。経営承継を見据えてご子息である大幾様を3代目候補として社内に迎え、堅実に経営をされています。

大幾様は、「後を継いでくれ」といわれたことは一度もありませんでしたが、幸せな幼少期を過ごさせてもらって、父や母、家族を支える「市川ダイス」の存在の大きさを認識するようになり、「恩返しのつもりで会社を継ごう」という気持ちになっていたといいます。

海外展開への挑戦を考えたときにM&Aという選択肢を考え始めた

ほどなくリーマンショックが発生し、その後は今後の成長において特に海外展開が必要不可欠であることを強く認識することになります。ただ、独自資本で海外進出をしようとすると、どうしてもスピードと資金力が足りない、仮に失敗したときは立て直せない、という不安を抱えていました。

そこで親子で相談の上、「M&Aという手法で大手グループの傘下に入る」という選択肢を考え始め、岡山県の同業大手のゼノーテック社と出会い、同社との資本提携を決断するに至りました。

譲受企業様の概要とM&Aの検討理由

ゼノーテック社は岡山の金型メーカーで、粉末冶金金型を中心に、中国・マレーシア・インドネシアも海外展開をしてきました。

当時ゼノーテック社は、国内・海外での売上増加を目標としていました。冷間鍛造金型や引き抜きダイスなどで素晴らしい技術を持った市川ダイス社を譲り受けることで、お客様に提供できる金型メニューが増えるという明確な狙いがありました。

また事業シナジーだけではなく、TOP面談等を通じて、市川ダイス社の暖かい社風にも共感し、同じグループとして、以後共に成長していきたいと考えました。

本件M&Aで重要となったポイント

「事業承継」ではなく「新たなチャレンジをし続ける」ためのM&A

本件についてはやはり、譲渡企業において親子で決断したM&Aであることが大きなポイントかと思います。「跡継ぎがいない」という理由が、M&Aの主な動機であった一昔前と比べ、状況は変化しています。

あらゆる産業が大きな転換期を迎える中で、たとえ社内に後継者がいるケースであっても、大手と手を組んでいくという選択をするオーナー経営者が非常に増えています。

実際オーナーのご子息の大幾様は専務として、資金面・経営面において、親会社のバックアップを受けながら、今現在も市川ダイス社の経営に注力し続けています。

会社に対する家族それぞれの想い

「良いM&A」を考えるときには、当然、家族一人一人の想いも非常に重要になってきます。

関係者全てにとって納得のいく結果が得られなければ、本当に良いものとはいえません。

M&A後、大幾様は、姉妹からは「将来会社がどうなるのか不安だったので、安心した」と言われ、また、お母様からは「あなたのおかげでM&Aができた」と感謝の言葉をかけてもらいました。

またなにより良かったのは、大幾様が、お父様(博史様)から成約のすぐ後に東京駅で呼び止められ、「ありがとう、お前のおかげだ、会社を頼む」といわれたことです。

「会社が成長していくことに価値がある」

大幾様自身は、「自分としては“会社を継がない”という選択をしたつもりはない」とおっしゃいます。

「株主」としての立場は、信頼できる会社、経営者に託しながらも、会社を引っ張っていく運営においては、これからもずっと関わり続けたいという想いは非常に硬く、ゼノーテック社としても大幾様のこのような姿勢に強い安心感を持ちました。

もちろん、おじい様の代から代々受け継いできた家業を手放すことは並大抵の想いではなかったと思います。今後、「市川ダイスが成長しつづけていくことに価値がある」と決断された谷津様親子の想いを受け止められたゼノーテック様と共に、更なるチャレンジを重ねていくことでしょう。

京都大学経済学部を卒業後、キーエンスでセールスエンジニアの経験を経て、日本M&Aセンターに入社。ITソフトウェア業界を専門とし、地域問わず中堅・中小企業の事業承継及び成長戦略に関するコンサルティング業務に注力している。

上席課長
製造業界支援室 室長
太田 隼平