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M&Aレポート

調剤薬局業界再編のいま

2019.7.29

  • 調剤薬局

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業界再編とは

2019年6月、日本調剤が三津原博前社長から三津原庸介新社長に交代し、アイセイ薬局の創業者である岡村氏が薬局業界に復帰、ココカラファインに対しマツモトキヨシとスギが資本提携を仕掛け新聞を騒がせるなど、業界が大きく動き、更に一つ再編のフェーズが変わるのではといわれています。

三津原社長のように、世代交代という意味においては、阪神調剤は、岩崎裕昭氏が代表取締役(専務)に昇格、ファーマライズは、秋山氏が代表取締役に就任、クオールもご子息の中村敬社長に親族承継され、メディカルシステムネットワークも田中専務に管掌が移りつつあります。大手調剤が若く意欲的な2代目に移行することも、業界再編を進めるきっかけになるでしょう。

しかしながら、業界再編とはそもそも何でしょうか?再編が進むと何がかわるのでしょうか。その答えを持ち合わせている経営者は実は少ないのではと思っております。

本日は、この問いについて考えたいと思います。

日本M&Aセンターでは、過去28年間で4500件超の企業のM&Aをお手伝いしてきました。その中で、さまざまな業界のM&Aの件数がピークになっていくのをみてきました。

20年前であれば、医薬品卸、タクシー、スーパーマーケット、百貨店、駐車場業界、10年前であれば、ホームセンター、ドラッグストア業界、5年前から現在にかけては、調剤薬局、IT、建設、運送業界等です。

過去にピークに達した業界は、その後数年でM&Aの件数は少なくなり、その後増加に転じることはありません。しかし、ここで勘違いしてはいけないのは、件数が減る=再編が減速するということではないということです。

M&Aの件数が1番多い時期というのは、企業数の多い年商数億円のカテゴリーが売却しているタイミングのため、M&Aの件数が最も多くなります。

その次は、中堅が大手に売却するタイミングで、年商数億円のM&Aというのは少なくなり、M&Aの件数も減少します。

さらに再編が進み大手同士の統合になると、それらのM&Aは一切なくなりますので、件数としては減ります。ドラッグストア業界がその例です。

しかしながら、大手同士の統合により、業界構造がさらに大きく変わることになりますので、M&Aの件数は減るものの、再編そのものはむしろ加速します。そして再編が進むと、中小企業は売却したくても、できない時代になります。医薬品卸業界もそうですね。

いま、中小調剤薬局のM&Aは、5年後にはドラッグストアように件数が少なくなり、15年後には医薬品卸のように全くなくなるといわれています。

調剤薬局業界の15年後の姿?医薬品卸業界を解説。

15年後の調剤薬局業界はどのような姿なのでしょうか。それを考えるために、再編の進んだ医薬品卸業界を見てみたいと思います。

医薬品業界は、もともと350社あったところから4社に統合されました。これは、差別化ができなくなった卸同士の価額競争が激化し経営難に陥る会社がではじめてきたため、債権をもつメーカー側の意向に沿って再編が進みました。

ですので、武田系卸はメディパルに、エーザイ系卸はアルフレッサに、塩野義系卸はスズケンとアルフレッサに統合されました。

それらのメーカーは今も大株主として影響力を及ぼしています。逆に統合されなかった地域卸とは、メーカーは取引を停止しました。これは一般的に考えると信じられないことです。仕入れ元が売らないというのは、例えると、卸が薬局に薬を売らないというようなものです。

しかしここで一つ考えてみたいことがあります。

最近、医薬品卸が、薬局オーナーに医薬品を買ってくださいという営業をしなくなっています。

あるいは、去年までとれていた薬価差益が急にとれなくなったという薬局も少なくないでしょう。私も全国の薬局オーナーとお話している中で、多くの方からそのようなご相談をうけています。これは、メーカーと卸で起きた再編の構図が、今度は卸と薬局の関係の中で起きる前兆だといえるのではないでしょうか。

10年前、貴社とアルフレッサの統合が破談になりましたが、今はスズケンと東邦が合弁会社をつくって共同開発をしています。スズケンは東邦のシステムを販売しています。ここも大きく動く可能性があるといわれています。

5年後の薬局の姿 ドラッグストア業界を見る

調剤業界の5年後の姿といわれているドラッグストア業界を考えてみましょう。

2015年まで、マツモトキヨシは業界最大手でした。しかし、2016年に、10年以上前から積極的にM&Aを行ってきたウエルシア、ツルハに抜かれ、マツモトキヨシは業界4位に転落しました。その後、M&Aも行おうとしていましたが、苦戦しているように見えます。譲渡オーナーからすると、何度もM&Aを行い、うまくいっているウエルシアの方が、慣れていないマツモトキヨシよりも安心して従業員を任せられると考えるのは自然でしょう。

だからこそマツモトキヨシは、今後の生き残りをかけて上場しているココカラファインに資本提携を仕掛けています。これはスギ薬局も同様です。

再編がこのステージまで来ると、数店舗のドラッグストアを譲り受けるなら、隣に新規で出店して顧客を取ってしまったほうが早いということになります。そして、中小規模のM&Aというのはほとんどなくなります。

ただこれは、考えてみると非常に当たり前のことで、私たちは2015年11月に行われた調剤薬局のオーナー向けのセミナーでもドラッグストアの大型再編が進むとお伝えしていました。

業界再編は4社に統合の歴史

日本企業は、再編が進むと4社に統合される歴史があります。

それは、大手財閥がモノとお金の流れを握っているからです。

コンビニで言えば、三菱商事、三井物産、伊藤忠に色分けされ、ファミリーマートとサークルKサンクスは同じ伊藤忠系なので統合されることが最初から決まっていました。

調剤薬局で言えば、アインはセブン系、ウエルシアはイオン系、クオールは三菱商事(ローソン)系、総合メディカルは三井物産系、フロンティアは伊藤忠(ワタキュー)系となっています。

調剤薬局業界M&A動向

調剤薬局の動向について考えたいと思います。

調剤薬局は2018年の売上ベースで、大手10社で18%のシェアです。2009年にはこれは9%でした。私が最初にこのデータを見たときに考えたのは、9年でたった9%しか増えていないのか、ということです。

しかし、よく考えてみるとこれは「9年で2倍」になったということです。つまり、9年後の2028年には18%の2倍の36%、つまり3軒に1軒以上は大手の薬局になっているということです。しかも、再編のスピードは加速していくといわれていますので、実際にはこれ以上のシェアになるでしょう。

下記の表は、2013年から地域のトップクラスで譲渡した薬局の一覧で、日本地図は、それらが存在した県を赤に色付けしています。これを見るとたった7年間で日本地図の約半分が赤に染まっています。そう考えると次の7年後には、日本地図が真っ赤になっていることが想像できます。

これらの企業に共通するのは、譲渡した後も経営者が残ることです。当社が仲介したトータルメディカルサービス、至誠堂下山薬局本店、リーフ、鈴木薬局、アポテック、永冨調剤薬局はいずれも経営者が残って経営を続けています(アポテック青山会長は退任し、赤石社長が残っています)。

譲渡オーナーの平均年齢も2016年3月以前と2016年4月以降では約4歳若くなっており、若いオーナーが譲渡した後も経営を続けることが多くなっていることを示しています。

自己成長の限界

その裏には、独立して成長していくことへの限界があります。若い世代の経営者は、成長意欲も強く、新規出店やM&Aにより拡大をしたいと考えています。

しかし、薬剤師不足、出店情報不足、資金不足により、思うように成長できないという課題があります。その中で、最も大きな理由が薬剤師不足です。新卒薬剤師のうち70%が上位15社に入社するといわれており、残りの30%をおよそ2万2千社で獲得競争している状態です。

譲渡を決断するタイミング

オーナー自身の状況によって譲渡をきめるタイミングは異なります。しかしながら、一つ参考にするべきものとして、報酬改定があります。

2018年の報酬改定前に、9,000万円で売却できた薬局が、報酬改定後で6,000万円でしか売却できなかったということがありました。

この薬局は月間受付回数1,100回程度、集中率は85%、後発加算1と基準調剤加算を算定していました。これが報酬改定後大手調剤グループになると、後発加算がとれず、調剤基本料も下がり、地域支援体制加算もとれなくなり、利益が3割程度減少しました。

その結果、譲渡対価が、報酬改定で30%下がってしまったのです。さらにこのオーナーは大手調剤薬局のA社の理念が自社の理念に近く、安心して任せられると思っていましたが、報酬改定後にはA社からのオファーがなくなり、その次に良いと思っていたB社、C社からのオファーもなく、4番手のD社に譲渡をすることになりました。

このように、金額だけではなく、人生をかけて作り上げてきた企業を譲る先が、不本意な相手になりかねない、それこそがタイミングを逸する最大のデメリットだといえます。そのため、報酬改定の方針が出る前に譲渡する、ということが鉄則になります。

タイミングを逃さないために

タイミングを逃さないために最も重要なことは、情報収集を欠かさないということです。M&Aの手順、企業価値、譲り受け候補先、リスク・注意点等は早めに知っておいて損はありませんが、遅いと取り返しのつかないことになります。そのため当社では、必ず全ての企業に現時点の企業評価をお勧めしています。

M&Aの目的とは

そもそもM&Aの目的とは難でしょうか。それは企業の存続と発展、従業員の幸せ、地域医療への貢献ではないでしょうか。

これらは、M&Aに関わらず、企業の存在する目的そのものだといえます。それらが後継者不在、薬剤師不足などにより、実現できなくなりつつあるため、M&Aをつかって解決するのです。

当社では、その姿を実現するために、最大限のサポートをさせて頂きたいと思っております。困っていらっしゃるオーナーがいらっしゃいましたら、お気軽にお声がけください。そのために、365日いつでもご対応可能なメンバーをそろえております。

青山学院大学経済学部卒業後、大和証券株式会社を経て、日本M&Aセンターに入社。 入社以来、調剤薬局業界の担当として地域問わず、中堅中小企業のM&Aに取り組む。 2020年3月度全社年間最多成約数を記録。

ディールマネージャー
調剤薬局業界支援室
沖田 大紀