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M&Aレポート

ドラッグストア業界再編M&Aの歴史

2019.7.24

  • 調剤薬局

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ドラッグストア業界とは

「ドラッグストア業界」とは、医療品などの最寄品を扱う小売事業全般を指す。医療品のみならず、化粧品、健康・美容に関する商品、そして食品まで生活に根差した商材を幅広く取り扱う。なお、中心となる医療品、化粧品、家庭用雑貨、食品のいずれも分野における売上は各社ともに上昇傾向にある。

業界大手にはツルハホールディングス、ウエルシアホールディングス、マツモトキヨシホールディングス、コスモス薬品などが名を連ねている。

ドラッグストア業界の商流

ドラッグストアは卸売業者から商品を仕入れ、一般消費者へ小売販売する。調剤薬局を兼ねた店舗運営を行っている場合は、審査支払機関からも代金を受け取る。以上の2軸が主となる。

医薬品は「市販薬」「一般医薬品」という法律上の分類が存在する。一般医薬品はさらに細分化されており、「第一類」「第二類」「第三類」といった区分がある。第二類、第三類は登録販売者にしか販売が許可されておらず、第一類医薬品の販売には薬剤師の常駐が必須だ。

先述のような医薬品は業界でOTC医薬品とも呼称される。OTCとは「Over The Counter:オーバー・ザ・カウンター」の略であり、カウンターの向こうにある薬品、というのが原義。薬剤師や登録販売者の許諾が無いと入手できないが一方で処方箋は不要という手軽さがある。このOTCの需要は近年増加傾向。薬剤師を常駐させるドラッグストアの店舗数も上昇しており、メーカーも新規開発に注力している。抑えきれない少子高齢化や、2017年から開始したセルフメディケーション税制の導入もこれらの一因のひとつだろう。

ドラッグストア業界の事業特性

食料品や生活雑貨で集客

ドラッグストアの鍵は医薬品、化粧品だけではない。食料品や生活雑貨といったナショナルブランドを非常に安価に販売することで集客を行う。まずはここで集客をして、医薬品の販売で利益を獲得するというのが基本のモデルである。

「規制産業」であること

柱の商材である医薬品をいかにして扱うかは薬機法(旧薬事法)の規定に左右される。法改正のたびに店舗の運営戦略を見直す必要がある。

ドミナントの形成による成長

ドミナントの形成、つまり多店舗経営が定石となる戦略だ。特定のエリア1点に経営資源を集中させて、市場の独占を狙う。この戦略は、広告の効率化、商品配送の効率化など、さまざまな効果がある。

立地条件や商圏が売上の大きな要因となる業界であるからこそドミナント形成戦略は重要な取り組みだ。

規模が規模を呼ぶ

多くの店舗数を抱えるドラッグストアは、仕入れ先との交渉力を大きく有することとなる。取り扱う点数に比例して金額がかさむため、これを武器に好条件の仕入れを成し遂げることができる。規模が大きければ自社プライベートブランド商品の開発も可能になり、粗利率はさらに伸びる傾向にある。

ドラッグストア業界の市場環境

2019年の市場規模は推定7.6兆円。

ドラッグストアの誕生とそのブーム、そしてM&A による企業の成長。ドラッグストアは短スパンの間に市場規模を拡大し店舗数を伸ばし続けた。売上は継続して増加傾向にあるが、その成長率は次第に鈍化しつつある、というのが業界の現状だ。短期間に急成長、成熟に至った業界の着地点である。

M&A を通じた大手チェーンの台頭により中小事業者は立ちいかず、店舗数は増加する一方で企業の数は減少していく。

しかし大手も決して余裕があるわけではない。各社の統合により競争は先鋭化するほか、2009年の薬事法改正による規制緩和。特に後者は従来のビジネスモデルを大きく揺るがすものとなった。プライベートブランドの生活必需品を安価に販売することで集客し、医薬品で利益を出すというモデルの切れ味が落ちてしまうからだ。

大手チェーンに統合または参加することでプライベートブランドを強化させ、プライベートブランド商品での利益を確保しながら出店数を伸ばす戦略が近年では散見される。

今後も社会の変容や規制される内容に応じた柔軟な立ち回りが必要とされる業界である。

ドラッグストア業界再編M&Aの歴史

競争の時代へ

1990年代になるとテレビCMを打ち出す店舗も登場し、女性を中心にドラッグストアブームが巻き起こるなど、日常生活におけるドラッグストアの役割が確立された。

価格重視のスタイルのみならず専門性に力を入れる店舗や、株式上場するチェーン店も増加。店舗同士・企業同士での激しい競争が始まったのはこの90年代からである。

成長戦略としてのM&A確立

2000年前半からは、小規模のM&Aがスタートしはじめる。00年度に579社あった企業数は、04年度に671社と最多になったが、それ以降は現在まで企業数は減少傾向が続く。

企業数が最多となった2004年、当時の売上高トップのマツモトキヨシ(現:マツモトキヨシホールディングス)は健康家族(長野県)、トウブドラッグ(埼玉県)を皮切りに、相次いで地方の有力企業を子会社化していった。

こうした子会社化の流れは同社に限らない。ウエルシアホールディングス、ツルハホールディングス、サンドラッグなどの大手もM&Aにより規模を拡大。(ウエルシアホールディングスはそもそも、1997年にグリーンクロスとコアが合併し株式上場したというM&Aがルーツにある)

上位10社の売上シェアも04年の25%から09年には44%まで進み、この時期からドラッグストア業界の再編が本格的に始まった。

業界再編が加速

大手チェーンは、エリアを広げるため全国各エリアで高いシェアを持つ有力中堅チェーンを買収することで勢力を拡大する。この動きが特に加速したのが2012年頃である。

2012年以降、大手チェーンと50店舗以上の有力中堅チェーンを傘下に入れることで大幅に売上・店舗数を増やし、展開エリアを着々と拡大する。

22年ぶりにドラッグストア業界の首位交代

1995年3月期から売上高トップを走るマツモトキヨシホールディングスだったが、2016年度の連結売上高でイオン系のウエルシアホールディングス、ツルハホールディングスに抜かれ、3位にまで転落する。18年度の売上ではサンドラッグにも抜かれ4位へ。

しかしマツモトキヨシの業績が悪化したと読むのは早計だ。売上自体はむしろ増加傾向。訪日外国人観光客の消費が好調で、3期連続で最高益を更新している。

ただし、マツモトキヨシは競合他社のようなM&A路線を採っていないため、売り上げで追い越され差をつけられたのだ。

対照的なのはウエルシアホールディングス。同社は15年3月にタキヤ(兵庫県尼崎市)とシミズ薬品(京都市)を子会社化、同年9月にはCFSコーポレーションを完全子会社化した。ツルハホールディングスも15年10月にジャスダック上場のレデイ薬局を子会社化するなどしてM&A路線を通じて爆発的に売上を伸ばしている。

ウエルシアホールディングスとツルハホールディングスの2強時代へ突入

2017年度以降も、ウエルシアホールディングスとツルハホールディングスの2社は相次いでM&Aを敢行。その勢力を拡大してゆく。

ウエルシアは青森県の丸大サクラヰ薬局、東京都を中心とした一本堂、そして今まで店舗のなかった中国地方において、地元の有力企業であるジュンテンドーからドラッグストア店舗の譲り受けを実施。

ツルハホールディングスは、静岡県中西部に強い杏林(きょうりん)堂(浜松市)、愛知県内に六十七店を展開するB&D(愛知県春日井市)を相次いで買収し、東海地方への進出を強めていく。

ウエルシアホールディングスとツルハホールディングスの2強時代の突入である。

成熟期へと突入したドラッグストア業界

上位10社で売上シェアを見てみると、09年は44%であったが、18年には遂に70%を超えるようになる。また上位5社(ウエルシア、ツルハ、サンドラッグ、マツモトキヨシ、コスモス薬品)のシェアは45%を超え、ドラッグストア業界は遂に成熟期に突入したと言えるだろう。

成熟期を迎えたドラッグストア業界は、今後コンビニや医薬品卸業界のように上位4社程度に集約されていくことが予想される。

ドラッグストア業界が大きく動くM&A

一気に業界順位が入れ替わる

ココカラファインは業界7位で売上高4,005億円(2019年3月期)、マツモトキヨシホールディングスは業界5位で5,759億円(2019年3月期)である。この2社が2021年10月1日めどに経営統合することを発表した。

これが現実となれば、同グループの売上高は9,764億円となり、現在業界1位であるウエルシアホールディングスの売上高7,791億円(2019年2月期)を一気に抜くことになる。

また、ココカラファインと業界6位で売上高4,884億円(2019年2月期)のスギホールディングスの2社での合算でも8,889億円となり業界1位となる。このような統合が起これば業界の大局構図はまたも大きく変わることになるだろう。

調剤薬局業界にも大きな影響

調剤薬局の店舗数・売上高をみると、ココカラファインの調剤薬局取り扱い店舗は292店舗、売上高587億円である。マツモトキヨシホールディングスの調剤薬局取り扱い店舗は289店舗、売上高457億円である。単純合算で581店舗・1,077億円となる。

またスギホールディングスの調剤薬局取り扱い店舗は833店舗、売上高911億円であり、ココカラファインと合算すると1,125店舗となり、調剤薬局最大手のアインホールディングスの店舗数に迫る。

このようにドラッグストア業界の再編は同業だけでなく、調剤薬局業界へ大きな影響を与える可能性があるのだ。

今後の大再編のきっかけとなるか

ドラッグストア業界はこれまで、大手チェーンが中小のドラッグストアを買収しながら店舗を拡大し、医薬品から日用品まで販売することで、ここ数年大きく業界全体も成長をし、市場規模は7兆円を超えている。

特に現在首位のウエルシアホールディングスは、多くの各地方地場No.1ドラッグストアをM&Aをすることで拡大をしてきた企業である。

しかし、そうした中で競争は激化し出店余地も限られてくる。市場成長率は自ずと鈍化してきている。

そんなさなかの今回の統合のニュースである。今回の3社以外にも、本件の提携によって、首位の座を奪われることになるウエルシアホールディングスをはじめとした大手ドラッグストアの統合のきっかけになるのではないか。

中堅ドラッグストアはますます厳しい環境に

前述したように、首位のウエルシアホールディングスをはじめドラッグストア大手は地域の地場企業をM&Aによってグループに入れることによって成長をしてきた。これにより大手10社の業界シェアは高まる一方だ。ここ数年のドラッグストア業界のM&Aは各地域で数十店舗を経営しているようなNo.1クラスの企業に限られてきている。

そうした状況下で現在、各地域の独立系で経営をしているドラッグストアチェーンは今後、より一層過酷になる競争の渦中での経営を強いられる。大手のグループ入りは今後も出てくるのではないだろうか。

昨今のドラッグストアの主要なM&A

青山学院大学経済学部卒業後、大和証券株式会社を経て、日本M&Aセンターに入社。 入社以来、調剤薬局業界の担当として地域問わず、中堅中小企業のM&Aに取り組む。 2020年3月度全社年間最多成約数を記録。

課長
調剤薬局業界支援室
沖田 大紀