コラム

『調剤薬局業界再編M&Aの先頭を走り抜ける』アインホールディングス

業界別M&A
更新日:

⽬次

[表示]

業界再編の先頭を走り続ける

どんな企業も最初は1店舗

アインホールディングスの創業は1980年、大谷社長は28歳でした。当初はドラッグストアの経営から始まり、医薬分業の流れとともに調剤薬局事業へ進出していった当社でありますが、大谷社長はドラッグストア3店舗を運営しているときから全国展開を視野にいれていました。

自力出店からM&Aでの出店へ

調剤薬局業界で医薬分業の促進が推進されていた2000年頃までは、ドクターへ直接院外処方の提案を行い順調に店舗数を増やしていくことができていました。

しかし、全国各地に同様のことを考えている調剤薬局チェーンが、似たようなスピードで似たようなやり方で拡大している状況の中、このままでは自分たちが得意としているエリア以外での出店は困難になっていくということで、スピーディーな全国展開を目指し、2001年頃M&Aに積極的に取り組む方針を打ち立てました。

業界トップ企業へ

M&Aに積極的に取り組んでいく方針を立てた約1年後、アインホールディングスにとって大きな転機となるM&Aが実行されました。

今川薬品との合併です。
今川薬品の44店舗が加わったことで、2003年3月期には合計130店舗の調剤薬局業界のトップ企業となりました。

それまでのM&Aは「業績不振の小さな企業を大手の企業が買収する」といったイメージがどうしても強かったのですが、今川薬品とのM&Aは「業界大手同士」「M&A後も看板はそのまま(約15年かけてようやく看板を変えた。)」「なにかを強制するのではなく、一緒に経営していく」ということで、調剤薬局業界の友好的M&Aの先駆けとなり、また、現在でも語り継がれている代表的な事例となっております。

今でも続く譲渡企業を大事にする社風

前述した今川薬品のM&Aの事例でもうひとつ当時としては珍しく特徴的なことがありました。譲渡企業である今川薬品の社長であった今川社長をアインファーマシーズの代表取締役会長に起用したことです。しかも、合併後の2002年から2010年までの8年間です。

今であれば、そういったスキームでの譲渡も珍しくなく、PMI(M&A実行後の統合業務。こちらについては近年のM&A業界の最重要ワードとなっておりますので別記事にて詳細ご説明したいと思います。)の観点からも有効性が多くの企業で認められています。

しかし、当時はM&Aで買収された企業の社長が譲受企業の会社の代表取締役会長に就任するということで大きな話題になりました。譲渡企業の社長、従業員を大切にすることがグループ全体の利益につながるということを、大谷社長は当時からわかっていたのでしょう。

そういったお考えが全社員にしっかり浸透しているようで、譲渡をお手伝いした企業の社長に譲渡後の状況についてお話をお伺いすると、みなさまから「本当にアインさんと一緒になってよかった。ありがとう。」とおっしゃいます。

また、2007年にM&Aにて株式を譲り受けた新潟地場のダイチク出身の大石美也氏を2015年にアインファーマシーズの代表取締役に起用するなど、出身企業にとらわれない人事評価制度を構築しているのも、M&A成功の秘訣であるように思います。

業界のトップ企業として

土屋薬品との提携

みなさま記憶に新しいことかと思いますが、2019年2月25日、アインホールディングスは長野県内36店舗、県下で強力なドミナントを形成している土屋薬品の全株式を譲受けることを発表しました。

売上は88億円と公表されていましたので、単純計算で1店舗あたりの売上は2.4億円の超優良調剤薬局チェーンです。おそらくですが、本件も土屋社長はそのまま子会社の社長として残るのではないでしょうか。

未来への戦略

前述のような各県のNo.1、もしくはそれに準ずる企業とのM&Aが今、増えています。当然、業界最大手のアインホールディングスは譲受候補先の筆頭となっていくでしょう。

アインホールディングスのグループステートメントは【まず、社員が幸せを感じられる会社でありたい。】という一文から始まります。もちろん、この「社員」にはM&Aで譲り受けた企業の社員の方も含まれます。こういった「人」を大事にする企業はM&A戦略も成功する傾向にありますので、アインホールディングスはM&A業界トップ企業へなれたのではないでしょうか。

今後10年間の調剤薬局業界は、大規模M&Aによって業界順位がどんどん入れ替わる、まさに戦国時代です。そんな中、「M&A巧者」であるアインホールディングスがどういった戦略で業界トップを守り続けていくのか、これからも情報を発信し続けていきたいと思います。

著者

日本M&Aセンター 業種特化事業部コラム制作担当

日本M&Aセンター  業種特化事業部コラム制作担当 

業種特化事業部はIT、建設・設備工事、住宅・不動産、食品、調剤薬局、物流、製造、医療・介護といった各業界に特化し、日々新たな案件に取り組んでいます。各コンサルタントのノウハウや知見を集め、有益な情報発信に努めてまいります。

この記事に関連するタグ

「調剤薬局」に関連するコラム

調剤薬局における親族継承のメリットとデメリット

業界別M&A
調剤薬局における親族継承のメリットとデメリット

日本M&Aセンター業界再編部調剤薬局業界専門グループの伊東勇一と申します。経営者として事業を長く続けていくこと。これは地域医療の一端を担う調剤薬局としても長く地域に貢献し続けることであり、多くの経営者が望まれていることかと思います。@cv_buttonただし、様々な苦境を乗り越えてきた経営者であっても、年齢の壁は乗り越えることはできず、いずれ事業承継が必要になります。事業承継は一般的に、親族承継・

薬価制度と日本の財政について

業界別M&A
薬価制度と日本の財政について

改定によって見直しが続く薬価薬局を経営していく中で重要な経営指標の一つに「薬価」があります。薬価、すなわち薬価基準制度とは、保険医療機関等の扱う医薬品の価格を公的に定めているシステムです。厚生労働大臣を通じて国が決定する薬価ですが、最近の薬価改定では医療費抑制のため薬価の引き下げが顕著となっています。さらに二年に一回であった薬価改定が2021年度から中間年も薬価の見直しを行うようになり、毎年改定に

日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き

業界別M&A
日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き

いつもコラムをご愛読いただきありがとうございます。日本M&Aセンター業種特化事業部の岡田拓海です。今回は「日医工の上場廃止から考えるジェネリック医薬品卸業界の先行き」についてお伝えします。@cv_button日医工の上場廃止が及ぼす医薬品卸業界への影響2022年12月28日、日医工株式会社は業績不振を理由に申請していた事業再生ADRが成立したことを発表しました。事業再生案として、国内投資ファンドの

2022年調剤薬局業界M&Aの振り返りと2023年の市場展望

業界別M&A
2022年調剤薬局業界M&Aの振り返りと2023年の市場展望

日本M&Aセンターの田島聡士と申します。2022年は、一部メーカーの製造不正を発端に生じたジェネリック医薬品の供給不足が、先発品も含めた医薬品の供給不足にまで発展し、地域に関わらず全国の薬局に大きな影響を与えました。この未曾有の医薬品不足に加え、毎年の薬価改定と2年に1度の報酬改定、近隣での競合店舗の出現など多種多様な問題に頭を抱える薬局経営者も増えています。ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源

Amazonが日本市場へ上陸する!?電子処方箋が引き起こす、調剤薬局の参入障壁の崩壊

業界別M&A
Amazonが日本市場へ上陸する!?電子処方箋が引き起こす、調剤薬局の参入障壁の崩壊

電子処方箋の導入で変わる、薬局のビジネスモデルいつもコラムをご愛読頂きありがとうございます。日本M&Aセンターの調剤薬局専門グループです。先日ニュースをみて衝撃を受けた方も多いかと思われますが、2023年Amazonが日本の処方薬販売への進出を検討しているとの報道がありました。確定した情報ではないにも関わらず、同業界の上場企業株価は急落し、競争激化への懸念が強まる形となっています。@cv_butt

ファーマシィとの資本提携で注目されるアインホールディングスの歴史と挑戦

業界別M&A
ファーマシィとの資本提携で注目されるアインホールディングスの歴史と挑戦

はじめに2022年5月9日、多くの調剤薬局業界関係者が驚いたのではないでしょうか。業界最大手のアインホールディングスが、中国地方を中心に100店の調剤薬局を持つファーマシィホールディングスの全株式を取得し、完全子会社化することを発表したのです。@cv_button取得額は非公表ですが、ファーマシィホールディングスの2021年3月期の売上高は約215億円で、アインホールディングスのM&Aとしても、過

「調剤薬局」に関連するM&Aニュース

地域ヘルスケア連携基盤、調剤薬局運営のエムエム薬局・エムアペックス・ももたろう薬局の株式取得

株式会社地域ヘルスケア連携基盤(東京都千代田区、以下「CHCP」)は、グループ会社を通じて、調剤薬局4店舗を運営する有限会社エムエム薬局、有限会社エムアペックス、有限会社ももたろう薬局(岡山県岡山市)の株式を取得した。株式取得の背景現在、日本の医療・介護費は約55兆円と日本のGDPの10%の規模に達しており、今後も高齢化の進展に伴い増加が見込まれている。社会保障費の抑制はわが国喫緊の課題であり、医

地域ヘルスケア連携基盤、調剤薬局運営のメディカルケミストの株式を取得

株式会社地域ヘルスケア連携基盤(東京都千代田区、以下「CHCP」)は、グループ会社を通じて、調剤薬局10店舗を運営する株式会社メディカルケミスト(東京都大田区)の株式を取得した。株式取得の背景現在、日本の医療・介護費は約55兆円と日本のGDPの10%の規模に達しており、今後も高齢化の進展に伴い増加が見込まれている。社会保障費の抑制はわが国喫緊の課題であり、医療機関・調剤薬局・在宅系サービスの各領域

イオン、ツルハHD、ウエルシアHDと経営統合を目指し協議開始

株式会社ツルハホールディングス(3391)、イオン株式会社(8267)及びウエルシアホールディングス株式会社(3141)は、経営統合の協議を開始することに合意し、資本業務提携契約を締結することを決定した。ツルハグループ(ツルハHD並びにその連結子会社14社及び非連結子会社1社(2023年11月15日現在)で構成される企業グループを)は、医薬品や化粧品だけでなく、食品や日用雑貨等の多種多彩な商品を取

M&Aで失敗したくないなら、まずは日本M&Aセンターへ無料相談

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース