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M&Aレポート

薬剤師採用と調剤薬局のM&A

2014.9.9

  • 調剤薬局

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目次

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薬剤師採用と調剤薬局のM&A

平成16年に開始された薬学教育6年制の影響により、それまで安定していた労働者市場が、調剤薬局業界の企業経営者から外部リスク要因の一つとして強く認識されるようになった。特に象徴的なのが、平成26年度の薬剤師試験が過去に類を見ない程の低合格率であり、内定者の半数が不合格となり、人事採用計画が大きく狂ってしまった企業も少なくない。

大手調剤チェーン、地場中堅企業、中小企業に対して薬剤師の採用問題についてヒアリングを行う中で、今年度の低合格率の影響を最も受けているのは大手調剤チェーンであり、採用人数も多い(100名規模)ため、内定者の半数以上が不合格であるという話をよく聞く。地場中堅企業については、合格率60~70%程度という企業が多くあまり深刻な状況ではないようである。このような環境下でも、大手調剤チェーンは売上を拡大しており、今年度も増収計画を打ち出している。

但し、注目すべきは『大手調剤チェーンの新規出店の半数はM&Aによるもの』ということである。

新規出店は薬剤師の確保が必要であり、年間で10店出店しようとすると、少なくとも20名の薬剤師の新規確保が必要である。しかしながら、大手調剤チェーンはM&Aによって、薬局だけではなく、そこで働く薬剤師の確保も同時に実現している。例えば、大手調剤チェーンが地域戦略として福岡県で10店舗新規出店する必要がある場合、既存で営業している薬局店舗をM&Aにより譲りうけることが出来れば、新たに多くの薬剤師を確保する必要がない。M&Aにより買収された企業の従業員はリストラにあうというイメージを持たれる中小企業経営者が少なくないが、買い手としてはM&Aに伴って薬剤師も同時に確保することが必要不可欠であり、従業員の雇用は維持される。このような労働市場の不安定化が現在の調剤薬局のM&Aを活発化させている一つの要因となっている。

また最近の調剤薬局のM&Aの傾向として、譲渡企業のオーナーがM&A後も引き続き大手調剤チェーンの関連会社の幹部役員として働き続けることが増えている。この業界では譲渡企業のオーナー経営者も薬剤師として現場で働いていることが多く、また経営・計数管理能力もあるので、買い手企業から重宝される。そのため、M&Aで企業を譲渡するオーナーの年齢も様々で、非常に若くして大手調剤チェーンと資本提携をし、大手調剤チェーンの資本力を活かした経営を行っている元オーナー雇われ社長も多い。

平成27年度の薬剤師試験は本年度の不合格者が再受験するため、受験者数が例年に比べて増大し、合格率が更に悪化することが予測される。しかしながら、企業側は新卒予定者に対する内定により人材の囲い込みをする必要がある。今後も新卒薬剤師採用の不安定化が解消されない中で、M&Aは活発に行われて行くと考えられる。

青山学院大学経済学部卒業後、大和証券株式会社を経て、日本M&Aセンターに入社。 入社以来、調剤薬局業界の担当として地域問わず、中堅中小企業のM&Aに取り組む。 2020年3月度全社年間最多成約数を記録。

課長
調剤薬局業界支援室
沖田 大紀