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M&Aレポート

M&Aのベストタイミングを逃さないためには?~事例:株式会社高階誠心堂(2)

2019.2.4

  • 調剤薬局

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熊本県の調剤薬局 株式会社高階誠心堂のM&A相手の最終候補として挙がったのは、大手調剤薬局グループ 阪神調剤ホールディング株式会社でした。
じつは高階さん、このときはまだ不信感のほうが強かったそうです。「こんな大手が…しかも、かなりいい金額を提示してくれた。一体、何が目的なのか?」と訝しく思ったからでした。

しかし、単純な株価の算定額からでは考えられない条件が提示されるのが業界再編時代のM&Aなのです。

自分自身の「直感」に従う勇気を持つ

両社の条件が合えば売り手と買い手の企業のトップ面談をします。ここで初めてお互いが顔合わせをするのです。このとき、高階さんは阪神調剤薬局の岩崎裕昭専務にお会いし、「この人たちとならうまくやっていける」と感じたといいます。

こうした経営者としての直感は、会社を経営している方なら皆さん経験があるのではないでしょうか。

かの有名なアップル社の共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏も、「一番大事なのは、自分自身の心の直感に従う勇気を持つこと。不思議なことに自分の心と直感というものは、自分が本当になりたい姿をわかっているものだ」と言っています。

確かに、私の今までの経験でも、トップ面談でお互いにいい印象を持ったM&Aは、ほとんどが上手くいくものです。

他業界で起きた業界再編が、調剤薬局業界で起きないのは不自然

ところで、高階さんが最終的に決断したのは2つの理由からでした。

ひとつは私のセミナーで紹介しているM&Aの成功事例集の中に、高階さんの同級生の会社が掲載されていたこと。高階さんの会社よりはるかに大きい会社がなぜ売却に至ったのか、その理由を直接本人に聞いて納得したそうです。それは、大手グループの一員となり強者連合をして、さらに会社を成長させたいという理由から会社を売却したというものでした。

もうひとつは「これから調剤薬局は寡占化で経営が厳しくなっていく。コンビニやドラッグストアで起きた業界再編が、調剤薬局業界でも起きないのは不自然だ」と感じたからでした。これについては、のちほど解説しますが、私がセミナーなどを通して必ずお話しすることです。高階さんの決断は、まさに業界再編の渦中でベストタイミングをとらえたものでした。

その後、交渉や手続きは順調に進み、最終契約の調印式を終え、高階さんは阪神調剤薬局の仲間入りをすることになりました。2013年の6月に相談してから12月の調印式まで、およそ半年間という短期間での成約でした。

あまりのスピードの速さに、現実感のないまま最終契約に至った、というのが高階さんの感想です。

調印式を終え、決済の日の午前中には口座に資金が振り込まれ、その日は奥様と大阪の寿司屋でお祝いをされたようです。奥様のおかげで会社を続けることができたし、M&Aを進めるときも常に応援してくれたのは奥様だったとのこと。

多くの経営者にとって奥様は会社を経営するうえでもかけがえのない存在です。

こうして高階さんは会社の株式を手放し、代わりに一流企業のサラリーマンや経営者でも生涯手に入れることができないような創業者利益を手に入れました。

オーナー経営者ではなくなりましたが、大手グループの傘下に入ることで子会社の社長になったのです。


(次回へ続く)

青山学院大学経済学部卒業後、大和証券株式会社を経て、日本M&Aセンターに入社。 入社以来、調剤薬局業界の担当として地域問わず、中堅中小企業のM&Aに取り組む。 2020年3月度全社年間最多成約数を記録。

ディールマネージャー
調剤薬局業界支援室
沖田 大紀