MENU
CLOSE

M&Aレポート

2017年の調剤薬局M&A振り返り②

2018.12.12

  • 調剤薬局

Facebook Tiwter LINE

目次

[ 閉じる ][ 開く ]

2017年の調剤薬局M&A振り返り②

ただし、大手企業による買収も引き続き見られており、2017年9月に阪神調剤薬局が埼玉県を地盤とする鈴木薬局を、12月にメディカルシステムネットワークが青森県を地盤とするアポテックを買収するなど、地域のトップクラスの企業が買収されるケースが目立つ。シェア上位10社で業界の売上全体の50%を占めるようになると、それまで地場で経営を続けてきたトップクラスが立て続けに売却していくフェーズに入るといわれている。

ドラッグストアを例に挙げれば、2012年頃からその傾向が顕著になり、約3年の間に県でトップの企業が10社以上売却された。

調剤薬局業界のシェアを見ると、上位10社で15%という状況でまだまだ個人経営や中小企業が非常に多い状況である。上位10社のシェアが50%になるにはあと5年程度はかかるのではないかと思うが、既にこのような動きが出てきているということは業界再編に向けた動きが加速していることを伺わせる。

また上位10社のシェアが10数%程度という状況下では、大手企業であっても得意不得意なエリアがあり、競合他社としのぎを削る争いをするということはあまりなかった。しかし、50%を占めるような状況になると各地域で大手同士がそれぞれ差別化できる戦略を考えていかなければならない。そうなれば患者側が調剤薬局を選ぶ状況が生まれるので、「ブランド力」が必要になってくる。
例えば、日本調剤が神奈川県と協力して行っている未病促進事業のような地域に根差した動きや、メディカルシステムネットワークのような地域住民に向けたヨガ教室、管理栄養士による栄養指導などを行う調剤薬局も出てきている。独自色を出し、差別化に繋がるブランディングを考えていくことも今後は必要となのだ。

地域包括ケアシステムの構築に向け調剤薬局がどのような役割を担っていくのかについては、手探り状態と言える。

従来の調剤薬局は処方箋を発行する医師の指示に従って調剤を行えばよかったので、介護施設に出向いて入居者の処方箋受付に向けた営業をしたり、地域の多職種と積極的にコミュニケーションを図る必要はなかった。それが地域包括ケアシステム下では病院や診療所、介護施設や在宅サービスとの連携のなかで、提供するサービスの質を高め、範囲を広げていくことで、地域で存在感を出していなかければならない。
これまでの“待ち”の姿勢から“攻め”の姿勢への転換が求められているとも言える。これは業界全体として取り組むべき課題であるが、経営者にとっても薬剤師個人にとっても非常にハードルが高く、躊躇しているところが多いのが実情だ。この転換期に1日でも早く取り組めるかどうかが生き残りを分けるポイントになると考えられる。

今後、「薬を出しているだけ」の調剤薬局は淘汰されていく。サービス業として接客やサービスの質を高めることも大切であり、また、薬の専門機関として調剤した薬の効果を検証したり、患者に対して適切に指導・アドバイスを行うという本来の役割を見直してくことも重要である。その点、大手企業では「調剤薬局は何をすべきか」「患者にとってどのような存在であるべきか」といった根本的な課題についてよく議論し、それをきちんと従業員に伝えているところが多く、サービスの質も非常に安定してきている。
日本調剤では、フランチャイズのような形で展開することで、店舗間のサービスのばらつきをなくし安定させることに成功している。このようにサービスの質を保ち、研修や運営のシステムを構築するにはある程度の規模が必要だ。業界の再編が進む中で、調剤薬局のサービスの質をいかに高めていくかについても合わせて考えていくことが求められる。

青山学院大学経済学部卒業後、大和証券株式会社を経て、日本M&Aセンターに入社。 入社以来、調剤薬局業界の担当として地域問わず、中堅中小企業のM&Aに取り組む。 2020年3月度全社年間最多成約数を記録。

課長
調剤薬局業界支援室
沖田 大紀