物流・運送業

2020年上半期 物流業界のM&A

2020年上半期主な物流業界M&A一覧

2020年上半期、物流業界に関連したM&Aは27件ありました。

 

■2020年上半期物流業界関連のM&A一覧■

出典:レコフM&Aデータより当社作成

 

2020年上半期の物流業界のM&Aは27件であり、2019年上半期の件数が28件であったことを考えると、昨年と同じペースでの業界の再編が進んでいると言えます。物流業界はほかの業種と比べ、コロナ禍の影響でM&Aの件数が激減したというようなことは起きておりません。

2020年上半期を代表する物流業界のM&A

〇SBSホールディングス(東証1部)×東芝ロジスティクス

 

上に挙げた事例のなかでも、特に話題に上がったのはSBSホールディングスと東芝ロジスティクスのM&Aでしょう。

SBSホールディングスは、昨今M&Aを盛んに成長戦略として取り入れ、実行している企業の一つです。2018年、リコーロジスティクスとの大型M&Aはまだ記憶に新しいかと思います。

今回の東芝ロジスティクスとのM&Aもメーカー物流子会社の切り離しM&Aです。SBSホールディングスとしては、今回のM&Aにより東芝ロジスティクスの持つ4PL事業のノウハウ獲得、海外ネットワークの強化を図ります。切り離しを実施した東芝は、選択と集中が狙いです。

「物流子会社の切り離し」、「成長戦略としてのM&A」という物流業界の再編の大きな流れを象徴するM&A事例でした。

 

〇鈴与×アライズイノベーション

また、物流×IT系のM&Aが増えていることもトレンドの一つとして挙がるでしょう。物流業界の企業×ソフト情報・システムのマッチングは6件ありました。(レコフM&Aデータ調べ)なかでも、鈴与は今年、IT企業と2件のM&Aを実施しています。6月に買収したアライズコーポレーションは、ソフトウェアを主力商品としてAIソリューション事業を展開している企業です。鈴与は今回の買収を通して、グループの業務効率化、自動化を図ります。

「物流」に「付加価値」をつけていくための、物流×異業種のM&Aは今後も増加していくと思われます。

 

〇非公表のM&A

 実際には、中堅中小企業同士の非公表のM&AがレコフM&Aデータに公表されている件数よりも数多く起こっています。日本M&Aセンターの物流業界のM&A成約実績でみても上半期で7件の成約があり、譲渡のお話も増えています。コロナ禍において、今アクションを起こそうという企業は多く、譲渡のお話、譲受をしたいというお話共に多く受けています。

 直近でご成約された関西の物流企業のオーナー様(67歳)は、40代社長が先導を引く勢いのある物流企業に譲渡するご決断を致しました。

物流業界M&Aの動きについて

〇リーマンショックと比較するコロナ禍

 今回のこのコロナショック後の動きを、リーマンショックを参考にして考えてみます。リーマンショックの翌年、会社都合による失業者数は前年比倍増の110万に上り、経済は大打撃を受けました。そんななか、混乱期を好機と捉え、経営手法の有効な一手段としてM&Aを実行し続けたストラテジック・バイヤーも多数存在します。いずれの企業も平時には成し遂げられない成長を果たしました。

 リーマンショック直後は、国内需要減退に対応すべく、生き残りをかけた業界再編型のM&Aが相次ぎました。MUFGによる消費者金融大手アコムの買収や、NECエレクトロニクスとルネサステクノロジの合併はリーマンショック直後に起こった代表的な業界再編M&Aです。

物流子会社の切り離しについても、リーマンショックの翌年と翌々年の2009年、2010年が直近10年間で件数の最も多い2年間になっています。

物流企業では日立物流がリーマンショック後に動いた代表です。日立物流はリーマンショック後の2008年から2012年にかけて9件のM&Aを実施しました。M&Aにより、国内既存物流事業の効率化・合理化を推し進めながら、国内の新物流領域を強化しました。同時に、世界的な不況であることにも着目し、クロスボーダーM&Aを推進し、グローバル物流網の拡充を図りました。その結果、2008年3,528億円の売り上げは2018年に2倍の7,088億円の売上高に成長しました。株価は140%増(1,280円→3,075円)を果たし、業容拡大、企業価値向上を実現しました。

“今”動ける企業こそが、10年後に業界を担う企業なのです。

 

〇加速する業界再編

先ほどの例でもありましたが、不況時は業界の再編が加速します。

コロナ禍により世界が変わりました。「“今”、経営が変わらなければ、“次”はない。」と私たちは考えています。コロナ禍である“今”動ける企業が、業界の再編をリードし、業界を担っていきます。

いま「動く」ことは、業界を「動かす」ということなのです。

そんな今、物流企業の中堅中小企業のオーナー経営者がとるべき行動、動き方としては、以下の3つがあります。

 

①企業買収を積極的に展開して業界再編をリードしていく

②業界トップクラスの企業に売却してグループの一員となって発展していく

③地域の数社で集まり、ホールディングスカンパニーなどで合従連衡していく

 

昨今では、「会社を譲渡する」ことはネガティブなイメージではなく、ゴールの一つとして浸透してきています。成長戦略としてのM&Aを行うことは、企業の発展にとどまらず、業界の発展に寄与する行為です。

業界の再編は、譲渡企業側があって初めて成り立つものであり、実は「売り手市場」であることも事実です。大手と組む成長戦略型のM&Aはタイミングがかなり重要であり、そのタイミングとして“今”はチャンスです。

 

〇今、買収戦略をしている企業とは

 今、コロナ禍でM&Aでの買収戦略を戦略的に取り組める企業とは、どのような企業なのでしょうか。

コロナが流行する以前の2019年下半期と2020年上半期の物流上場企業のM&Aを比較してみましょう。

 2019年下半期、物流上場によるM&Aは7件(6社)ありました。ハマキョウレックス、ファイズ、鴻池運輸、トランコム、安田倉庫、日本通運です。2020年上半期は、4件(4社)となっています。ヒガシトゥエンティワン、山九、トランコム、SBSホールディングスです。

 注目していただきたいのは件数ではなく、企業の財務指標です。ROE(自己資本利益率)を比べてみます。ROEは純利益を自己資本で除した指標で、その企業が自己資本をうまく活用して利益を生み出しているかを表します。ROEを企業間で比較することで、その企業の効率性を見ることが出来ます。

見てみると、全体として2020年上半期にM&Aを実施した企業が高い数値を出していることが分かります。

 コロナ前は、ROEが低い企業も投資を積極的に行っていましたが、コロナ禍においてM&Aを行うことが出来る企業は、自身の資産を有効に活用できている企業であると言えます。経済が下降している今、効率性を高めることのできる企業が、戦略としてM&Aを実施できているということです。

 中堅・中小企業を含め、効率性の高い物流企業にとって、今ほどの好機会はありません。危機の中で動くことの重要性を歴史が証明していることは、日立物流の例の通りです。

今、勇気を出して踏み出す一歩は、業界に勇気を与え、全体として良い流れを作り出すでしょう。その選択肢を取ることのできる企業のオーナー様には是非とも業界を担っていただきたいと願っています。

 私たち、物流業界支援室としても、この激動する業界で、コロナ禍の“今”動こうとされる皆様のお力になれますように、精一杯尽力させていただきます。

業界再編部 物流業界支援室

宮川 智安

群馬県出身。実家は七代続く水産業の卸売。早稲田大学卒業。大学時代は競走部に所属(400mで全国IH準決勝)、2020年新卒で日本M&Aセンターに入社し、全国の物流業界を専門にM&A業務に取り組む。

群馬県出身。実家は七代続く水産業の卸売。早稲田大学卒業。大学時代は競走部に所属(400mで全国IH準決勝)、2020年新卒で日本M&Aセンターに入社し、全国の物流業界を専門にM&A業務に取り組む。

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