ベンチャー

【ベンチャー企業M&A事例】大手のビッグデータとAIベンチャーの技術が融合

【譲渡企業様】

企業名

株式会社Rist

業種

受託開発ソフトウェア業

売上(M&A当時)

60百万円

オーナー様のご年齢

27歳

 

【譲受企業様】

企業名

京セラコミュニケーションシステム株式会社

業種

受託開発ソフトウェア業

売上(M&A当時)

100,000百万円

オーナー様のご年齢

 

 

ホームレス起業家から、2年で京セラグループに

化学者になりたかった

 

Ristの代表取締役である遠野宏季氏は現在27歳。小さいころの夢は化学者でした。「化学によって人間の不自由を解消したい」という想いが、遠野氏の生きるモチベーションになっていました。

 

遠野氏は、発明少年として育ちました。視力が弱い人向けに超音波サングラスを開発したり、ゴキブリを触るのが苦手な母親を見て、殺虫スプレーをかけた後にひっくり返っているゴキブリを回収する道具も考えました。

 

そんな遠野氏は、化学者の夢をより現実のものにすべく京都大学に進学します。

 

 

ホームレス起業家

 

京都大学大学院に進み、博士号取得を目指していた遠野氏に転機が訪れました。

 

研究の面白さも感じるとともに、facebookやtwitterのように、論文にはならなくとも、新しい発想で社会の人たちに役立つサービスをスピーディーに出していくことに興味が出てきたのです。

 

起業家になることを決めた遠野氏は、すぐに大学院を辞め、当時住んでいた京都のアパートを解約しました。そこで肝心のプロダクトがないことに気付きます。家もない、プロダクトもない、ホームレスと化した遠野氏の起業家人生がスタートしたのです。

 

 

AIで人間を自由に

 

住む場所がないため、キャリーバッグひとつであちらこちらに寝泊まりしながら、遠野氏は、昼夜を問わず開発に集中しました。独学で学んだプログラミング技術を生かして、開発を請け負いながら起業資金を貯めようと考えました。

 

そんな矢先、偶然にも大学の先輩からAIをやらないかと声をかけられました。これがRist社を立ち上げるきっかけとなりました。

 

Rist社を創業してすぐに、製造業の製品検査で、AIを使えないか?という相談を持ち掛けられました。すぐに遠野氏は、AIを使った画像検査のシステムを開発しました。

 

このサービスをホームページに掲載したところ、問い合わせが殺到し、その後も大手の製造ラインにRist社の製品検査AIサービスが導入されていきました。

 

創業して2年、事業も軌道に乗ってきたタイミングで、自社のサービスをより早くスケールさせるためには、M&Aで大手と組んだ方が早いと考えるようになりました。

 

 

京セラから見たAI

 

M&Aの候補先にあがった京セラコミュニケーションシステムは売上1000億円、京セラグループのシステム子会社です。通信系のサービスを得意としていましたが、AIのサービスの開発にも社を上げて取り組んでいました。

 

しかし、AIの研究から実際のサービスの立ち上げには苦戦をしていました。そんな中、同じ京都で事業を展開するRist社のM&Aの話が、浮上したのです。

 

 

7万人の中にいた、AIの天才

 

京セラグループには7万人の従業員がいます。グループには、多数の優秀なエンジニアがいました。その中でも特にAI分野で一目置かれている技術者がいました。  

 

京セラのAIのトップ技術者とRist社の遠野氏との面談が実施されました。二人のディスカッションは大いに盛り上がり、Rist社の京セラグループ入りが現実化したのです。

 

 

大企業とベンチャーのM&Aに必要なこと

 

京セラの柔軟性

 

Rist社のM&A時の正社員は2名、その他は京大のインターン生数十名を使って開発を行っていました。このような開発体制は、大企業の常識に当てはめると不安に感じる部分が多いのが事実です。

 

しかし、AIによる開発は、週5日、何十時間も開発に費やすわけではなく、瞬発的な集中力が必要になるものでした。優秀なインターン生を使って瞬発的に開発プロジェクトを回すほうが、開発の質の向上につながっていたのです。

 

京セラグループとしても、この開発体制に魅力を感じ、M&A後もそのままの形を維持することを尊重しました。

 

テクノロジーで株価がつく時代に

 

Rist社の当時の売上は数千万円、従来であれば将来のキャッシュフローをいくら見込んだとしても数億円の株価はつきづらい状況にありました。

 

ただ近年、株価の新しい評価の基準が生まれつつあります。

 

これまでのM&Aによる株価の評価は、既存の決算の数字をもとに将来のキャッシュフローを予測し、株価を決めていました。大切なのは直近の決算の数字、そのほうが誰もが同じ尺度でその評価を理解でき、外部への説明能力があるためです。

 

しかしここにきて、売上に寄与する前の段階で、テクノロジーやサービスの潜在能力を評価して、株価を評価するというフェーズに入ってきました。

 

この理由として、AIなどのテックを用いた新たなサービスは、これまでのサービスと比較し、売上が曲線的になだらかに上がるのではなく、直角にいきなり上がるケースが多いことが挙げられます。

 

その時点になっては大企業も二の足を踏む株価になっていることが多く、可能性のある技術であれば、売上が数千万円の企業であっても、M&Aによってグループ内に取り込む企業が増えてきたのです。

 

近年のテクノロジーの進化、サービスの成長スピードの変化は、新しい株価の評価を生み出すきっかけとなっています。

業界再編部 IT業界支援室/ベンチャー業界支援室

竹葉 聖

公認会計士試験合格後、監査法人トーマツを経て、日本M&Aセンターに入社。前職での会計知識と、IT業界についての知見をもとにM&A業界で最もITソフトウェア業界のオーナーと接触しIT業界のM&A業務に注力している。当社、ベンチャー企業サポート室のマネージャーを兼任。

公認会計士試験合格後、監査法人トーマツを経て、日本M&Aセンターに入社。前職での会計知識と、IT業界についての知見をもとにM&A業界で最もITソフトウェア業界のオーナーと接触しIT業界のM&A業務に注力している。当社、ベンチャー企業サポート室のマネージャーを兼任。